て日々

2022年3月

目次へ

あれよあれよという間に年度末である。ある事情により体調、というよりメンタルが優れない。じっとしていると余計に調子が悪い。倅の通学定期の更新手続きのために松山市駅まで行く。『量子物理学のための線形代数』は§6-5の行列の三角化のところを読んだ。あと、千葉雅也『現代思想入門』(講談社現代新書2022年)を読みはじめる。

白石先生のバンドの来年のステージではファリャ《三角帽子》の「終幕の踊り」をやるという。パート譜をもらったがYouTubeなどで音源を聴いても譜割がさっぱりわからなかったので、オーケストラ版の原曲の音源をiTunes Storeでダウンロード購入したうえ、全音のフルスコアも取り寄せた。「終幕の踊り」を、スコアをめくりながら、くり返し聴く。いろいろな素材が放り込まれたカオス的で楽しい曲だが、しかし俺に演奏できるのかこれ。

一昨日に引き続き休日出勤の代休日。

行列の対角化の応用の話。きのうは数列だったが、きょうは定数係数の線形微分方程式の解法。それと『デモクリトスと量子計算』の第10章「量子計算」と第11章「ペンローズ」を読んだ。

昼食に親子丼を作って倅と二人で食べてから、新学期の科目登録について指導してほしいという学生との面談のために大学へ行った。

『量子物理学のための線形代数』は大きくは進まなかったが、行列の固有値と固有ベクトルを求める方法を定数係数の線形漸化式で定まる数列の一般項を求める問題に応用するというトピックについて演習問題を解いた。解けたのでテキスト巻末の解答を見たら、結果が違っている。よく確認したら最初の式の立て間違いをやっていた。ただし今回は面白いことに、テキストの解答はもちろん大筋で正しいのだけど、最終の計算結果だけなぜか間違っていて、俺のほうは式の立て間違いのせいで途中の計算は違っているのに、最終の計算結果だけは偶然にも正しかった。こんなこともあるのだな。

ともあれ、計算はくれぐれも慎重にやろう。昨日は答えあわせに SymPy を使うといいだろうと書いたが、式の立て間違いをしていたのでは、いかに強力な記号計算プログラムでも、さすがに役に立たない。

夜はいつものようにピアノのレッスン。うかうかしている間に本番まであと1か月である。

未明に目がさめて、その後よく眠れなかった。休日出勤の代休日。きょうも『量子物理学のための線形代数』を読む。きょうの題材は行列の対角化。さすがに理屈はあらかた頭に入っているが、計算問題をやるとケアレスミスを連発してどうもいけない。計算を間違うし、ときには問題をノートに写し間違える。手計算でミスを頻発するのには練習不足ということもあるだろうから、今後とも演習をたくさんこなすべきだ。手計算で演習問題をやって、答えあわせに SymPy を使うというのはいい考えだと思う。

雑記用に一昨年から使っていた80枚のB5ノートをようやく使い切った。昨年はほとんど使っておらず、半分以上は今年に入ってからの勉強の記録である。量子コンピュータの本を読んでメモをとり始めてからは早かった。今後も、最低限これくらいのペースを維持していきたいものだと思いつつ、ストックしてあった新しいノートをおろす。

午後に科学コミュニケーションのオンライン勉強会があった。テキストの第8章を題材に、科学技術における倫理と説明責任というテーマについて話しあった。

その後、地下BALに行ったら、準常連の通称トミーさんがやってきて、俺が持っていた竹内薫『ゼロから学ぶ量子力学(普及版)』(講談社ブルーバックス2022年)を絶賛しながら、シュレーディンガー方程式こそが化学の基礎であるという自説を延々と展開しだした。トミーさんは実は有機化学の学位持ちなのだ。俺にとってはけっこう面白い話で、聞いていて苦痛ということはなかったが、一緒に飲んでいた常連仲間のO内夫妻にとっては、よくわからん世界の話を長々と聴かされて、ちょいと迷惑だったかもしれず、俺としてはカウンター席の左右両側に気を遣って、少々くたびれた。

トミーさんの長話のおかげで帰りがすっかり遅くなった。帰宅して晩飯を慌てて調理したら、煮物を煮詰めすぎて大失敗した。親子で、これは食えたもんじゃないと意見が一致したので、それは廃棄して、代わりにうどんを茹でて食った。

午後、いよてつ高島屋で開催中の「志村けんの大爆笑展」を倅と二人で見てきた。ザ・ドリフターズは好きだが、志村けんというコメディアン単体では、俺はそれほど好きでない。しかしまあ、この「大爆笑展」には志村の衣装やコントの脚本、あるいは趣味で弾いていた三味線などいろいろ展示され、ビデオクリップも数々表示されていて、それなりに入場料(800円)程度の見応えはあった。ショップのグッズがどれも高価でビックリした。

中原幹夫『量子物理学のための線形代数』の第5章を済ませ、第6章に入った。固有値と固有ベクトルのことならひととおり知っていると思っていたが、あらためて少しつついてみると、自分の理解が怪しいところが見つかった。

複素数 \(\lambda\) が正方行列 \(A\) の固有値であれば、\(\lambda\) の共役複素数 \(\lambda^*\) は \(A\) のエルミート共役 \(A^\dagger\) の固有値になる。ここで俺は、\(A\) の固有値 \(\lambda\) に属する固有ベクトル \(\boldsymbol{x}\) がそのままエルミート共役 \(A^\dagger\) の固有値 \(\lambda^*\) に属する固有ベクトルにもなると思い込んでいた。それを証明しようとして全然うまくいかず、しばらく考えていたら2次行列で簡単な反例が見つかった。\(A\) の固有値と \(A^\dagger\) の固有値との対応は明快だが、\(A\) の固有ベクトルと \(A^\dagger\) の固有ベクトルの間に、一般には直接的でわかりやすい対応関係はない。

行列 \(A\) の固有ベクトルがエルミート共役 \(A^\dagger\) の固有ベクトルにもなるというのは、\(A\) が正規行列のとき、つまり等式 \(AA^\dagger=A^\dagger A\) が成立しているときは正しい。俺はいつの間にか、それが一般に成立していると思いこんでいたわけだ。

そこで念のため、正規行列の場合に確かに \(A\) の固有ベクトルが \(A^\dagger\) の固有ベクトルにもなることの証明を書き始めたら、これに思いのほか手こずって、途中から何をやっているのかわからなくなった。あれれ、これも間違っているんだっけ? いやいや、さすがにこれは正しいはずだ。

すっかり自信がなくなったので、ここはさっそく昨日買った長谷川浩司『線形代数[改訂版]』のお世話になることにして、関連するページを開いてみると、いとも簡単に証明されている(253ページ、定理33(i))。俺だって学生時代以来何度も目にしているはずの、いたってスタンダードな証明である。これが思い出せない俺もなさけないが、結局、さっきまで俺がどうして混乱していたのかというと、ブラ・ケット記法に不慣れで、とくにそこでの行列の扱いがアヤフヤで、ケット \(|v\rangle\) の左から行列 \(A\) をかけたケット \(A|v\rangle\) に対応するブラが \(\langle v|A^\dagger\) であるということをハッキリ認識できていなかった、というわけだ。だが、行列の記法で、\(A\boldsymbol{x}\) の随伴行列が \(\overline{{}^t\!\boldsymbol{x}}\,\overline{{}^t\!A}\) なのだと言えば、これは当たり前のことなのである。

夕食は唐揚げにした。

新年度の卒研ゼミ生と打ちあわせをした。卒研ゼミは毎週火曜日の午後に4階のセミナー室でやる。その結果、大学院のゼミが木曜日になった。雑誌の依頼原稿の校正をしてゲラを編集部に返した。この記事について詳しいことは雑誌が発売される頃にまた書く。『量子物理学のための線形代数』は基底の変更にともなう行列の変換の公式について少しノートを書いただけ。

この稼業のご多分に漏れず、線形代数の教科書は何冊も手元にあるのだけど、あらためて、ジュンク堂に行って長谷川浩司『線形代数[改訂版]』(日本評論社2015年)を買った。著者の長谷川浩司さんには学生時代に下宿を世話してもらった恩があるのだ。この本を買ったというだけなら、まあ日記に書くほどのこともないが、釣り銭を受けとったあと、レジカウンターのコイントレイをバッグにしまいかけてしまった。少し疲れていたらしい。

大学の卒業式の日。俺は式典には出席しなかったが、卒業生から記念品をいただいたり、一緒に写真を撮ったりした。雑誌記事のゲラ刷を見て校正をした。午後には会議が2件あった。

線形写像の行列表示の計算問題をやった。結果をSymPyで検算してみたら、やっぱり計算間違いをしている。結果が合うまで計算しなおし。まるで大学1年生だが、まあ仕方ない。

夕食は牛すじと厚揚げの煮物。

小雨が降ったり止んだり。ほぼ一日サボった。

中原幹夫『量子物理学のための線形代数』の第3章で、ベイカー-キャンベル-ハウスドルフの公式というものを学んだ。行列の指数関数に関する公式で、けっこう複雑な計算だった。いくつか疑問が残った。複素数の指数関数はゼロでない複素数すべてを値としてとりうるが、行列の指数関数の値域はどうなっているのだろう。すべての正則行列を値としてとるだろうか。ベイカー-キャンベル-ハウスドルフの公式で得られる無限級数の収束半径は気にしなくてよいのだろうか。いいかえれば、係数行列のサイズはどういうオーダーで減衰するだろうか。

夕食にはカレーを作った。夕食後、倅は塾に行き、俺はピアノのレッスンに行った。次回の出番の曲のほかに、前回まではソナチネアルバムを見てもらっていたが、今回からバッハの小曲集をやる。

吹奏楽のサウンドに包まれた昨日までの幸福感も覚めやらぬ中、さっそくきょうからまた日常に復帰せねばならん。朝のうち、セガレが起きてくる前に『量子物理学のための線形代数』の第3章をほんの少しだけ読み進め、洗濯をする。

お昼前にセガレと二人で電車で出かける。久米の新丸三書店まで、セガレの学校の英語の教材を買いに行ってきた。クルマで行くぶんには迷いがない国道11号線沿いなのだが、なにしろこちとらクルマなんか金輪際運転するもんかと思っている終身ペーパードライバーであるから、いよてつ久米駅から歩いて行った。徒歩で20分くらい。春分の日の外出にちょうどいい散歩コースである。初めて来てみたが、わりかし広々とした売り場に、とりわけ医学関係の本が多く並んでいる。この店は、かつて銀天街にあったころに俺も足繁く通った丸三書店の後継で、愛媛大学医学部に出入りの書店だから、なにしろ医学書が充実しているのだ。それ以外の分野の専門書の品揃えはまあ普通なのだが、その数少ない専門書のうちに、またしても拙著があって、一昨日に続いて驚きかつ喜んだ。ともあれ、無事に教材を入手して、近くの吉野家で昼食をとり、堀越川沿いに久米駅まで歩いて戻り、駅前のブックオフに寄って帰宅。

きょうは吹奏楽の演奏会に出てきた。昨年同様に中学校3校のジョイントコンサートを開催する予定だったのだが、コロナ対策のために中学校3校の参加が直前になってとりやめになってしまった。残ったのは白石先生の率いる吹奏楽団SFW (Shiraishi Festival Winds) だけである。これはなんとか成功させたい。

今年のプログラムはまず『オペラ座の怪人』メドレーで始まり、続いて、スーパーマリオブラザーズ、ファイナルファンタジー、モンスターハンターとゲーム音楽を3曲やり、さらに「栄光の架橋」「仁」「ジャパニーズ・グラフィティ19 ドリフターズ・メドレー」「ニューシネマパラダイス」とやって、合計8曲。アンコールは用意していなかったが、会場からのリクエストで最後に「オペラ座の怪人」をもう一度演奏した。俺は昨年はアルトサックスだったが今年はテナーサックスを担当。ドリフメドレーのソロでタンギング地獄に堕とされた。

今年も出演者は小学生から60代まで。たまにこういう所に出てきて大勢で活動するのもいいものだ。ユーフォニウム担当でアマチュア無線家の三嶋さんと知り合いになれたのは収穫である。いっぽう、トランペットの川尻さんが仕事の都合で出演できなくなったのは、なんとも残念だ。

午前中には久々に「いつもの温泉」に行った。昼食にはラーメンを作った。昼食後、散歩がてら、昨日リニューアルオープンした中央通の明屋書店に行ってみた。以前より棚が増えて、品揃えは豊富になったように思う。といっても専門書の棚はお世辞にも充実しているとは言えなくて、数学の本なども数えるほどしかないのだが、その数少ない数学書のうちに拙著『「集合と位相」をなぜ学ぶのか』があって、これは嬉しい驚きだった。

さてさて、土曜日だが夕方から学部の会議があるので大学へ行った。それからコミセンへ移動して吹奏楽の練習に参加。夜9時すぎに帰宅して『量子物理学のための線形代数』の行列の指数関数に関するところを少しだけ読んだ。

昼の間ずっと雨が降った。午後にはリモート会議。夕方からは吹奏楽の練習に行った。

先週土曜日の出勤の代休をとった。『量子物理学のための線形代数』の第3章の前半を読んだ。キャメリアホールへ楽器を持っていって練習してきた。キャメリアホールに入るのはもちろん1年ぶりだし、休憩時間に市立中央図書館にも行ったのも、ずいぶん久しぶりだ。

昨晩はあまりよく眠れなかったが、それでも容赦なく朝がやってくる。きょうも朝のうち入試関連業務。午後はいくつか教室の業務を片付け、『量子物理学のための線形代数』の第2章を読む。夕方には週末の吹奏楽の演奏会のために、コミセンへの打楽器の搬入を手伝う。

コミセンへの行き帰りの電車では『デモクリトスと量子計算』の第4章を読んだ。この本、量子計算の本と見せかけて、第2章では集合論の公理、第3章では不完全性定理、そして第4章ではチューリング次数のポストの問題に対するフリードバーグとムチニクによる回答にまで言及しており、ずいぶん話題が広範だ。

きょうも暖かい。そして花粉が多いようで、ちょっとつらい。きょうはピアノのレッスンはなし。

きょうは一日とても暖かかった。入試関連業務のため大学へ行った。

昨日、これからもうちょっと本格的な量子情報のテキストを読むべきだと書いたが、手にとって開いてみた林正人『量子情報への表現論的アプローチ』『量子論のための表現論』(ともに共立出版, 2014年)がなかなかの難物で、第1章から “???” になったので、少しだけレベルを下げて、中原幹夫『量子物理学のための線形代数』(培風館, 2016年)をていねいに読むことにする。これと並行して、スコット・アーロンソン『デモクリトスと量子計算』(森北出版, 2020年)を読む。ゆっくりと、ただし立ち止まることなく進もう。

午後、先月の続きでJPIC主催の川瀬和也さんのオンライン講座「ヘーゲル哲学の魅力に迫る」を聴講したのだけど、疲れていたせいか、不覚にも時間中ほとんど居眠りをしてしまった。内容がさっぱり頭に残っていない。これは聞き逃し配信を利用せねばなるまい。

朝のうちと夕食後の時間を使って、Chris Bernhardt『みんなの量子コンピュータ』(湊雄一郎・中田真秀 監修・翻訳, 翔泳社, 2020年)を読み終えた。きちんと数式を追いながら読むと、なかなか楽しかった。ドイッチュ-ジョサのアルゴリズムやサイモンのアルゴリズムの仕組みや意義はよくわかったし、ショアの素因数分解のアルゴリズムやグローバーの探索のアルゴリスムについても、少なくとも概要は知ることができて、今後の勉強の手がかりがつかめたように思う。この本はしかし、そういう技術面ばかりではなく、思想的あるいは科学史的な示唆も含む。著者バーンハルトによると、計算とは量子計算のことであり、古典計算は量子計算の特別な場合なのだそうだ。テューリングが計算を人の心の働きから論じ始めたのに対し、量子計算はその人間中心主義を転換する点において、コペルニクスやダーウィンの業績に類比できる、ともいう。

さて、次はそろそろもうちょっと本格的な量子情報のテキストを読むべきだ。どうすっかな。

土曜日だが午前中に入試がらみの業務がある。休日は寝坊しがちな倅のために朝飯を作りおきしてから出勤。お昼前に業務が済んで解散となり、スーパーに寄って昼食の材料を買ってから帰宅。午後は街へ出かけて仕事用にあたらしいバッグを買った。

これまでと比較して、今週は読書が捗った。朝の早いうちに勉強すると調子がいい。授業やら依頼原稿やらの用が先月で一段落して気持ちに余裕ができたのが大きな要因には違いないだろうけど、できればこのペースがこの先も維持できればいいな。

午前中は4か月ぶりに美容院に行き、昼食には湊町4丁目の「麺と向かって鰹」でラーメンを食ってから大学へ行った。

きょうは『みんなの量子コンピュータ』の第8章で、サイモンのアルゴリズムというのを学んだ。量子ビットの性質を巧みに使うだけでなく、2進数を2元体上のベクトルとみなして内積や連立1次方程式を考える場面もあって、とても面白い。線形代数の応用というのは至るところにあるものだなあ。

大学の授業のない時期になると朝の勉強が捗ってよい。きょうは量子コンピュータのドイッチュ-ジョサのアルゴリズム等々を学んだ。なんとも巧妙で面白い。が、あまり実用的ではない。

夕方には医者に行った。俺が医者に行く日は夕食を外食にするというのが倅との間のとりきめになっている。で、今回も倅の要望により、はま寿司に行った。寿司が運ばれてくるベルトコンベアの末端の、窓側の席についたので、センサーのしくみがいろいろわかったりして面白かった。

朝、倅をどうにか学校へ送り出し、洗濯をしてから、本を読む。昼すぎに散歩に出て、宮西のエディオンを冷やかし、フジグラン松山3階フードコートで昼食。妻のすすめに従い、1階で肉を買って夕食にカルビ丼を作った。

『みんなの量子コンピュータ』の第5章までは量子ビットの量子力学的なふるまいの説明。第6章は古典計算のゲート回路の説明。これで全体の6割くらい読んだことになる。第7章からいよいよ量子ゲートなど量子コンピュータならではの話題に入ると期待される。

日中はおおむね家にいて本を読む。ちょくちょく誤記・誤訳がある(版元ウェブサイトに正誤表あり)とはいえ、全体として『みんなの量子コンピュータ』は読みやすい。とくに、第4章の量子もつれの説明など、わかりやすくてありがたい。

夜はピアノのレッスン。ソナチネアルバムから別の曲集にしませんかと先生に勧められたので、こんどまた楽譜を買いに行かねばならん。

午前中、大学院の2次募集の合格発表があった。新年度には修士課程の学生をひとり指導することになったので、研究室に呼び出してゼミのテキストを決めたり宿題を出したりした。午後は卒業資格認定のための会議があった。

昨日までで井ノ口順一『はじめて学ぶリー群』(現代数学社)にはひととおり目を通したことにして、次は Chris Bernhardt『みんなの量子コンピュータ』(湊雄一郎・中田真秀 監修・翻訳, 翔泳社, 2020年)を読む。

夜には、20日の吹奏楽の演奏会に備えて久々にサックスに息を入れる。川尻さんが歩行町のジャズバー・ゴスペルに話を入れておいてくれて、他のお客さんが来店するまで好きに吹いてよいとのこと。ありがたい話である。1時間半ほど吹いて楽器を片付け、ウィスキーを注文する。本当なら川尻さんもトランペットを持って来るはずだったのだが、あいにく店の用事で遅くなり、午後9時に楽器を持たずに登場。まあ仕方がない。しばしジャズ(アート・ファーマーだった)を聴き、ウィスキーを傾け、マスターと3人でいろいろの会話をする。いつものまつちかBALの喧騒とは対照的な、静かで穏やかな時間である。

午後11時前に帰宅し、明日の弁当の仕込み。

なんか日記を書く気にならんなあ。そういう日もある。精神的にどうとか体力的にどうとかいうことはないのでご心配なく。

ひきつづき井ノ口順一『はじめて学ぶリー群』(現代数学社)を読んでいる。後半になって、行列の指数関数とかリー環とかが出てきて、だんだん面白くなってきた。実数の全体 \(\mathbb{R}\) では指数関数 exp と対数関数 log が対になって乗法群 \((\mathbb{R}^+,\;\cdot\;)\) と加法群 \((\mathbb{R},+)\) の間の橋渡しをしている。これと同じことを、行列のなす群で行列の指数関数を使ってやろうとしても、どっこい行列の乗法は可換でない。対応する加法の世界にも加法だけではないひとヒネリが必要だ。それで乗法群の単位元の近傍でのふるまいをよくよく調べると、加法の体系の側に交換子括弧 \([X,Y]\) をもったリー環という代数構造が出現する。そういう話なんだと、いつもながら大雑把に理解した。

こういう大雑把な理解というか、勝手な納得というか、そういうものは、数学の展開そのものにはあまり関係がなくて、むしろ邪魔になることすらある。だけど、どうも俺にはそれが必要なのだ。無味乾燥に定義、補題、証明、定理、証明、…と続く叙述も、まあ追えないことはないのだが、なかなか面白いと思えない。かつて拙著の序文に書いたとおり、俺にはどうしても、数学にストーリー性を求めすぎる悪癖がある。それが物事の結論を急ぎすぎるという意味だとすれば、なんとも危険なことだ。

それにしてもだいぶ春らしくなってきた。散歩に出ると、宮前川の河床にも菜の花が咲いて、カモやサギがひなたぼっこをしている。

午前中に新年度の卒業研究ゼミ生の配属が確定した。うちのゼミは3人。ゼミは原則として対面でやるが、連絡にはMicrosoft Teamsを使う。さっそく最初のやりとり。今月下旬に研究室に集合してゼミの日程を決める。テキストは鹿島亮『数理論理学』(朝倉書店2009年)にする。少なくとも第6章の不完全性定理のところまでは進みたいところ。

自宅で積読本を整理していたら、本箱から P.A.M. Dirac, “The Principles of Quantum Mechanics” が出てきた。松山に着任する前後にけっこう必死で読んでいた本で、メモ用紙がたくさん挟んである。気付いたことをメモに残しながら半分ほど読んだところで、ついつい放置して、それからもう30年になる。歳月人を待たず。恐ろしいものだ。本というものは、読まにゃならん。いや申しわけない。申しわけない。

夕方、先日入稿した雑誌の原稿について編集さんから連絡。軽微だが修正が必要だ。ちゃんと読み直してから送ったつもりでも、執筆者目線の訂正には限界がある。ともあれ、すぐに対応を決めて、返事を送った。

学生とのアポイントメントと学部の会議のため、大学へ行く。帰りに三越に寄った。というのもジュンク堂書店が三越の5階に移転し、きょうがリニューアルオープンの当日だからだ。これまでは6階建てのビルで展開していた売り場が1フロアになって、とくに文庫・新書などは見やすく選びやすい陳列になったと思う。数学と物理の棚を見る限り、専門書の品揃えも悪くなっていない。ここで本を選んで、三越1階のフードコートなり、近所のプロントとかフライングスコッツマンあたりに席を占めて吟味するというのは楽しそうだ。ふむふむ。ジュンク堂さん、今後ともよろしく。

昨晩、寝る前に井ノ口順一『はじめて学ぶリー群』の87ページ註5.11を読んでいた。そこに出てくる2つの線形写像のうち、♭ の定義は明確だ。ベクトル \(\mathbf{v}\in\mathbb{V}\) に対して対応 \(\mathbf{u}\mapsto\mathcal{F}(\mathbf{v},\mathbf{u})\) は線形汎関数を定めるからこれを \(\flat\mathbf{v}\in\mathbb{V}^*\) とすればよい。もう一方の写像 \(\sharp\colon\mathbb{V}^*\to\mathbb{V}\) については、線形汎関数 \(\alpha\in\mathbf{V}^*\) に対してベクトル \(\sharp\alpha\in\mathbb{V}\) が \(\mathcal{F}(\sharp\alpha,\mathbf{u})=\alpha(\mathbf{u})\) で定まる、とだけ書かれている。一意性はともかく、構成の仕方がよくわからんなあと思って、昨晩は考えながら寝た。

今朝になって考え直す。やろうとしていることは、ヒルベルト空間でのリースの定理のようなことを、必ずしも正定値でない非退化対称双線型形式(井ノ口の用語ではこれをスカラー積と呼ぶ)である \(\mathcal{F}(\cdot,\cdot)\)で考えること。まずリースの定理の証明を思い出すと、線形汎関数のカーネルへの正射影分解を使っている。これは一般のスカラー積では必ずしもうまくいかない。2次元のミンコフスキ空間で簡単に反例がみつかる。しかしこの場合も写像 ♯ の構成自体はうまくいっている。有限次元であれば基底をとって行列の議論にもちこむことでうまく ♯ を構成できる。いっぽう無限次元の場合は、ベクトル空間 \(\mathbb{V}\) とその双対 \(\mathbb{V}^*\) ではそもそも次元(基底の濃度)が異なるので、写像 ♭ が全射にならない。だからその逆写像としての ♯ だって定義できないはずだ。そう思って考えてみると、たとえば多項式のベクトル空間 \(\mathbb{R}[X]\) に、たしかに反例がある。

無限次元の場合、連続性とか完備性とか、なにかそういう性質を仮定して考えればうまくいくのかもしれない。ヒルベルト空間でうまくいったのも、線形汎関数の連続性と空間の完備性を暗に使っているからだ。一般のスカラー積の場合、これはどうすれば… いかんいかん。これではまた抽象論・一般論の脇道に入って帰って来られなくなる。ひとまず本題に戻ろう。

おーけー。間違いない。これは有限次元だからこそうまくいく構成だ。と、そこまで確認してもういちどテキストをよく見ると、註のはじめに、有限次元ベクトル空間で考えるぞと、ちゃんと書いてある。というわけで、いわば無駄な回り道をしたわけだが、おかげで写像 ♭ と ♯ のことはよく理解できた。

今朝は《ビデオを撮影・編集して、それなりに面白い作品を作り友人たちに見せるが、なかなか評価してもらえない》という夢を見た。天気が回復したようなので、倅を学校へ送り出してから洗濯をする。午後には県立図書館に行った。

午前中は年度末恒例のあの仕事。読み合わせをして完了。

午後はあまり進捗はなかったが、研究室のUbuntuパソコンにSymPyをインストールして昨日までにやった行列計算の検算などなどを試みた。これで、渡邊靖志『入門講義 量子コンピュータ』(講談社, 2021年)をひととおり読み終えたことにする。次は井ノ口順一『はじめて学ぶリー群』(現代数学社, 2017年)でユニタリ群について勉強しようと思う。

夜はピアノのレッスン。この2週間サボり倒したから、ろくに手が動かない。