て日々

2013年7月


2013年7月31日(水)はれ

新しいiPadを持ったのを機に、WiMAX無線ルータを持つことにした。

夏休みの宿題(工作)《一刀斎・森毅BOT》を作ること

昨日合唱コンクールを聴きにコミセンへ言ったついでに、中央図書館で本を借りた。そのうちの一冊が森毅の『ものぐさ数学のすすめ』(青土社, 1980年)である。現代数学の解説者であるとともに文明批評の論客だった森毅の、あの「筋金入りのエエカゲンさ」が、余白をなくし硬直しがちないまの時代にこそ、復興されるべきだと俺は思う。さりとて俺は決してその衣鉢を継ぐ立場になく、その器量もない。せめて、著書からの抜き書きをツイッターでつぶやく「一刀斎・森毅bot」なりと作って、紹介に努めよう。そうすれば、俺が関口存男という人のことをツイッターbotを通じて知ったように、森毅を知って評価してくれる人が出てきてくれるかもしれない。


2013年7月30日(火)くもり

きょうは、【息子】が参加する合唱部のコンクール本番。妻や【娘】と共にキャメリアホールに聴きにいく。今回は県大会に先立つ中予地区コンクールで、小学校は4校が出場。うちは4月創部の初出場だが、あとの三つは常連なので、まあレベルが違うのだが、それはそれで仕方がない。【息子】が6年生になるころには、ちょっとは向上しているでしょ。俺たちとしては、あの【息子】がちゃんと皆と声を合わせてステージで歌うのを感激しながら見ていた。ついこのあいだまで(とかいって、辞めてしまってもう6年になるが)俺がキャメリアホールで演奏するのを妻子が聴きに来るものと決まっていたのだが、とうとう立場が逆転した。これは感慨深い。

大学の研究室のすぐ隣りが市立東中学校で、昨年から合唱部が活動している。これが実に実にしっかりした活動で、毎日欠かさず放課後の30分近くを基礎練習のメニューをこなすことに費やす。曲の練習はそれからだ。その地道な練習の甲斐あって、ちゃんと県大会出場を決めていた。偉いもんだ。

夕食はウチアゲと称して近所の焼肉屋に行った。


2013年7月29日(月)くもり

再帰理論を巡る大ボラを一昨日の日記に書いたが、なにもない更地からジャンプ操作の繰り返しですべての実数を見下ろす高みにまで登ろうという小野道風的構想には、実は原理的な困難がある。集合論に反映原理というものがある。これは宇宙全体のよい近似になっている小宇宙的な部分モデルを、たとえば可算集合としてとることができる、というものだ。その小宇宙は、可算集合である以上、すべての実数を含むことはありえない。それどころか、その小宇宙自体が、ひとつの \(\Delta^1_2\) 定義可能な実数によって「コード化」されてしまう。下からのアプローチでは、全宇宙とそうした小宇宙を見分けることはきわめて困難だ。西遊記の、孫悟空とお釈迦さまの手のひらの話を思い出す。

そうした理由で、下からのアプローチに徹するかぎり、すべての実数を手に入れるどころか、 \(\Delta^1_2\) 定義可能な実数の世界を踏査しつくすことすら限りなく不可能に近い。どこかで、グローバルな視点、本当の宇宙全体を参照できる視点を持ち込まないといけないのだ。そして、こうした事情を詳らかにするという作業自体が、それだけでじゅうぶん有意義な数学的課題になる。


2013年7月28日(日)あめ

明日は子供らが家に友達を呼ぶというので、きょうは皆で力を合わせてお片付け。昼食にカニかまと蒸しダコを載せて冷やし中華を作ったら好評だった。夕方から家族で買いものに出かけて遅くなったので、夕食は手早く作れるものにしようと思い、残ったカニかまとタコをきゅうりといっしょにイタリアンドレッシングで和えものにして一品作って、それと妻が作った豚しゃぶ。

お片づけははかどったが、その代わり、ほとんどSacks本が読めなかった。


2013年7月27日(土)くもり

昼のうちに、エアコンの室外機のモーターを交換してもらった。古いモーターはベアリングの部分が硬くなっていたようだ。修理代は17,115円だった。俺が10,100円、妻が7,000円、娘が15円分担した。思わぬ出費にはなったが、室外機が静かになって安心だし、心なしか冷房の能率が高くなった気もするので、出費に見合う効果はあったと思うことにする。

やる気のないあひるやる気のないあひるやる気のないあひる

SacksのHRTのきょう読んだ部分(第II章第4節)では、超算術的階層に現われる \(H\)-集合 すなわち \(a\in\mathcal{O}\) に対応する \(H_a\) が \(\Pi^0_2\) singleton であることの証明をした。実数が超算術的であることと \(\Sigma^1_1\) singleton であることが同値なのは明らかだが、さらに、何らかの \(\Pi^0_2\) singleton にチューリング帰着可能であることとも同値というわけだ。

これだけでは「はいそうですか」ってなもんだけども、これに「実数が \(\Delta^1_2\) であることと \(\Sigma^1_2\) singleton であることと \(\Pi^1_1\) singleton にチューリング帰着可能であることは同値」という事実と、さらに「実数が構成可能的すなわち \(\mathcal{P}(\omega)^L\) のメンバーであることと、集合 \(C_1\) のあるメンバーにチューリング帰着可能であることとは同値」という事実を合わせ考えると、とたんに面白い展望が開けてくることになる。

ここで \(C_1\) と呼んだのは「迅速構成可能的実数 (quickly constructible reals)」全体の集合であり、「完全集合を含まない \(\Pi^1_1\) 集合のうちで最大のもの」でもある: \[ C_1=\big\{\,X\subseteq \omega\,:\,X\in L_{\omega_1^X}\,\big\}. \] この集合のメンバーのhyperdegree は順序型 \(\omega_1^L\) で整列しており、その整列順序の後続者は hyperjump で与えられる。そして \(\Pi^1_1\) singleton の hyperdegree は \(C_1\) の整列順序の真の始切片をなしている。いっぽう、超算術的階層を形成する \(H\)-集合の Turing degree は、順序型 \(\omega_1^{\mathrm{CK}}\) で整列しており、その整列順序の後続者が Turing jump で与えられる。そういう綺麗な対応関係が成立しているのだけど、Turing degree と hyperdegree のアナロジーは、完璧というには程遠く、そこがまた面白いのでもある。

それに、Turing jump を反復して形成される \(H\)-集合の階層を、ジャンプ操作をパワーアップして延長したのが \(\Pi^1_1\) singleton の hyperdegree の階層だということがわかってくる。それをさらに延長して \(C_1\) のメンバーの hyperdegree の階層を作ると、それらが \(L\) の実数を汲み尽す。では、もっともっと強力なジャンプ操作でこの階層をどんどん延長して「すべての」実数を汲み尽すことはできないかという展望が開けようというわけだ。

とはいえ、これ以上のことをいま語っても妄想の垂れ流しにしかなるまいから、さしあたっては、さらにHRTを読み進めることにしよう。


2013年7月26日(金)あめはれ

「集合と位相I」演習の最終回。相方のPさん出張のため、俺が昨日のテスト問題の解説をする。この科目は期末テストも済んでいるし、数日後に大物「解析学I」のテストが控えていることもあって、欠席は多かったが、それでも半数ほどの学生が聴きにきた。ありがたいことだ。

授業を済ませてから街へ出ていろいろの用を済ませ、ドトールコーヒーでSacksのHRTを読みながらiPadでノートをとり、第II章系3.4の巧妙な証明に感じ入っているところで、隣の席に1歳くらいの男の子が仕事帰りと思われるお母さんに連れられてやってきた。いったん勉強の手を止めて、iPadのSmartTubなるものを見せてご機嫌をうかがう。幼い子とて、まだ反応は心許ないが、ともあれ触ると音がするのが面白いみたいであった。小さい子はかわいい。

くま くま くま

さてさて、いま読んでるSacksのHRTに関連して、誰の得にもなるまいけど、書かないと気が済まないので書く。SackのHRTの第II章第3節、補題3.1にある \[ \min(|R_c|,|R_d|)\leq|R_{k(c,d)}| \] という不等式は、常に等式だと思う。ここが不等式で書いてある理由が昨晩どうしても納得いかず、おかげであまり眠れなかった。いや。何度考えても、これは等式だ。何かひどい思い違いや見落しをしている可能性は皆無ではないにせよ、ちゃんと計算して等号を証明できたんだから。とはいえ、これが常に等式であることを指摘したところで、続く定理3.3の \[ \min(|a|,|b|)\leq |t(a,b)| \] のほうは、例外的な場合を除いて等号は成立しないので、その後の議論にはまったく影響はないのだけど。


2013年7月25日(木)はれ

「集合と位相I」の期末テスト。自筆ノートのみ持ち込み可にして準備を促し、問題も主に基本的なところを問う。ただし、講義や演習の進み具合いから見て「これはちょっと解けへんのとちゃうか」と思うような問題を、わざと一題だけ入れておいた。事前にいろいろ自分で勉強して知っていたかして、講義をもの足りなそうに聴いている学生がいたことは把握しているし、あんまり授業に出ていない学生のうちに、万が一、天才くんがまぎれこんでいないとも限らない。秀才発見装置というわけだ。

エアコンの室外機がブンブンとうるさい音を立てるようになったので電機店に電話してメーカーのサービスマンに来てもらった。室外機の中をチェックして、コンプレッサーやプロペラには異常が見られず、きっとモーターだろうという診断。保証期間が過ぎているので実費になるがモーターを交換してもらうことに。


2013年7月24日(水)はれ

朝、小学校へ【息子】の所属する合唱部の練習を見学に行った。参加者は3年生から6年生まで合わせて30人と少し。今年から活動を始めて、まだ3か月だから、ものすごく上手いわけではないが、子供たちが楽しんで歌っている姿を見て俺も楽しかったし、指導の先生の熱意が伝わってきてとてもよかった。音楽っていいね。

それからいつものとおりゼミ3連発、と思ったが、午後のM2ゼミは910くんが熱を出して寝込んでいるのでお休みとなった。そしてその空き時間に、共立出版の営業のスタートレック蟻さんは来るし、3年生のグループが後期の3年生ゼミのためのインタビューに来るしで、意外と有意義だった。

1年前期のリテラシー科目を担任の一人として受けもった他は、いまの3年生の授業を持ったことはない。それで、3年生ゼミのガイダンスが月曜日にあったにもかかわらず、俺のところへインタビューに来る学生さんはほとんどいないというわけ。

夕方、仕事で新居浜へ行っていた妻をJR松山駅に出迎えて、一緒に帰宅。


2013年7月23日(火)はれ

(7月26日記)日記をサボってしまってどうしようもない。前日に引き続き、どんな日だったかいまひとつ記憶が定かでない。GoodNotesの記録によると、HRTの第II章第1節の補題1.6あたりを読んでその難しさに舌を巻いていたようである。それと、Twilogの記録によると、熱心なダジャレ部員である のらんぶるさん (現在鍵つきアカウントだからリンクなし) と、「ふつつかな者ですがよろしくお願いします」の主題によるセッションが展開された。ゲテもの食いの嫁が「普通食うか?者ですがよろしくお願いします」、UFOに乗ってきた嫁が「宇宙空間者ですがよろしくお願いします」、などなど。


2013年7月22日(月)はれ

(7月26日記)日記をサボってしまってどうしようもない。どんな日だったかいまひとつ記憶が定かでない。記録といえばGoodNotesの手書きノートがこの日に限って3ページ半くらい進んでいる。第I章第5節を読み始めて、第II章第1節系1.4の「超算術的集合は \(\Delta^1_1\) である」「整数の超算術的集合全体のクラスは \(\Pi^1_1\) クラスである」を証明するところまで、テキストの分量でいうと6ページ弱で、読み進めばなんでもいいというものでもないが、これはなかなか頑張ったなと自分でも思う。GoodNotesを使い出してからノートを取るのが楽しくなったのはいいことだ。


2013年7月21日(日)はれ

参議院選の投票に行ってからフジグラン松山へ行き、そこで昼食。その後は俺と【娘】が昨日行けなかった図書館へ行き、妻と【息子】がフジグランのおもちゃ売り場でDSの体験コーナーの行列に並ぶ。

新旧のタッチペンのペン先を比較

図書館に行く前にエディオンに寄って、新iPadのLightningケーブルの予備と、2本めのタッチペンを購入。Lightningケーブルはもちろん1本はiPadに同梱されているのだが、普段は大学に置きっぱなしのMacBook Proに挿して使う。家でiPadを充電したくなった時のために、これまで毎日MacBook Proから抜いてケーブルを持ち帰っていたのだが、予備を用意しておくことでその必要がなくなる。新しいタッチペンはXremeMacのもので、ボールペンを兼ねている。タッチペン先はいままで使っていたELECOMのものと比較して少し太い。ボールペンとしての機能にはほとんど期待していない。金属チューブのちょっと高級そうなリフィルだけあって、書き味は悪くはないのだが、リフィルのメーカーがどこにも書いてないのが致命的にまずい。それよりは、軸のほどよい太さと重みのおかげで、いま使っている細くて軽いペンより書きやすいだろうというのが主な期待。

夜は近所の神社の輪越祭。名越にしてはちょっと遅めだが、茅の輪をくぐり、金比羅さまに無病息災を祈願する。それからビールを飲み豚の串焼きを食う。子供らは今日もかき氷を買ってもらって満足げだ。


2013年7月20日(土)はれ

妻は今日もあの巨大ショッピングモールの医務室詰め。【娘】はお友だちのよっちゃんと土曜夜市に行くというのだが、待合せの時間は決まっていないというので、お昼ごろに電話させた。すると、よっちゃんは急に予定が変わって夜市には行けないらしい。それなら塾のあとは図書館に行きたいと【娘】は言う。それで、塾が終わる頃合いに俺が【息子】を連れて図書館に行き現地で落ち合うという話にして、【娘】は昼食後に塾へと出かける。俺は昼食の後片付けをしてから少し昼寝。小一時間うとうとした頃あいに、よっちゃんからの電話で起こされた。またまた急に予定が変わって、やっぱり夜市に行けることになったんですけど、とのこと。【娘】は不在だが俺が独断で待合せの時間と場所を打ち合わせる。それから【息子】と少し遊んだり、アイスクリームを買いに連れていってやったりして、塾の終業時刻が近付いてきたので【息子】を連れて出かける。【娘】は塾から図書館に直行する気でいるわけだから、塾の前で待ち伏せておいて、出てきたところをつかまえないといけない。

【娘】を伴なって待ち合わせ場所へ行く。待ち合わせ場所近くのかき氷屋台で院生0-1くんがバイトをしている。子供二人に氷を買ってやり、そこに待たせておいて、近くのファミマにお茶とおやつを買いに行く。そのあいだに、よっちゃんたちが来ていた。よっちゃんと【娘】は幼稚園のころからの仲良しなのだが、しばらく見ない間に、よっちゃんはずいぶんとかっこいいお姉さんに成長していてびっくり。すばらしい。【娘】の同級生とは思えんなあ。お茶のペットボトルとおやつの「おっとっと」と、少しのお小遣いとを【娘】に持たせ、俺と【息子】は退散。三つ買って二つ残ったおやつのうち一つは【息子】にやり、もう一つはバイト中の0-1くんに差し入れ。


2013年7月19日(金)くもり

演習の授業はいまひとつ学生さんの士気もこちらの士気も上がらないで終わってしまった。あとは期末テストを残すのみ。とはいえ後期にはおまちかね(?)位相篇もあるので受講者のみなさんよろしくお付き合いください。

一旦帰宅してからピアノのレッスンに行く。このごろ楽器に触れる時間が少なすぎていけない。先生に申しわけないし、自分の払っている月謝だってもったいない。練習の時間を毎日のスケジュールに組み込む必要がある。そして、そのためには、そもそもスケジュールというものが存在せねばらなぬ。うわあ。それは大変。

レッスン後、ジュンク堂で本を仕入れてから子供らの小学校へ。本日終業式だったので、夜には毎年恒例「サマーカーニバル」が開催される。地域のみなさんとの交流を兼ねて、早めの盆踊り大会というわけ。【娘】は終業式のあとお友だちと遊んだその足で来ているはず。妻はちょっと気合を入れて浴衣がけで来ているし、【息子】も甚平を着ている。俺もピアノのレッスンさえなけりゃあ浴衣で来るところだが、どっこい和服でピアノは弾けぬ。アロハシャツに坊主頭の怪しいオトーサンである。

【娘】の入学以来、これに顔を出すのは6回めということになる。年々踊りの輪が小さくなっているように思うのは気のせいだろうか。妻は去年よりはマシだと言うのだけれど。

サマーカーニバルのしめくくりは餅撒きだ。これには、地元の代議士・元官房長官が毎年やってくる。子供たちは純粋に餅撒きを喜んでいるが、権力の担い手が高いところから餅を撒き下々が争ってそれを受け取るという構図が面白くないので、俺は少し離れて見ていた。ふと横を見ると、同じ景色を、同じように遠巻きに、しかしとても幸せそうな表情で見ている女がいた。何者かはわからんが、俺の目には十分若いし、まあそこそこの器量である。最初は代議士先生の関係者かと思ったがそうではないし、子供や恋人がいる様子でもない。「えらい楽しそうですね」と声をかけてみたが「見てるだけで楽しい光景じゃないですか」という以上のことは聞き出せなかった。餅撒きのあとの会場のゴミ拾いを自発的にしていたので、悪い人ではなさそうだ。額に三角の布はつけていないようだったが、ちゃんと両脚があるかどうかを確認していなかったのは、俺としたことが迂闊だった。

(ふむ。闇の世界への通路は実は意外な場所に開いているものなのかもしれぬ。くわばらくわばら。)

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ジュンク堂で買った本は、結城浩『数学ガールの秘密ノート/式とグラフ』(ソフトバンククリエイティブ)、高橋正子『計算論—計算可能性とラムダ計算』(近代科学社)、福永光司・興膳宏 訳注『荘子 内篇』(ちくま学芸文庫)、それに「数学セミナー」の7月号と8月号。「数学セミナー」の7月号から梅田亨の新しい連載『森毅の主題による変奏曲』が始まっている。これは楽しみだ。ジュンク堂で長らく売れ残っていたとおぼしき高橋『計算論』は、先月から買おうかどうしようか迷っていた。いや、内容や価格に文句はないのだが、なにせカバーの褪色がひどい。まあ、残念なのがそこだけならば、西村・難波『公理論的集合論』や大田春外『はじめての集合・位相』と同様にカバーをかけて使うことにすればよいのである。そんな理由で読むべき本を見送れるほど、俺の能力や残された時間は多くない。ぷぎゃあ。


2013年7月18日(木)はれ

二年生向け「集合と位相」の講義。前期の最終回。冪集合の濃度に関するカントールの定理を話したあと、余談ながらと断わってから、すべての集合の集合を考えるとカントールの定理と矛盾するわけで、実は集合の概念の根底には謎がひそんでいるんだ、という話をした。さらに、カントール集合というものの紹介をし、それが濃度という観点からは数直線全体と同じでありながら、長さとか確率という観点からはゼロに等しいことを証明して、無限集合の大きさを測る基準がひとつでないことを強調した。

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その余談の部分のノートだけちょっと公開
大きめの画像ファイルにリンクしています

来週の期末テストに備えて、これまでの小テストの解答例を明日の演習の時間に配ることにして、午後はその準備をしていた。12回ぶんの小テストのプリントをMacBook ProのPreviewアプリで一つのPDF文書にまとめ、それをiPadに読み込んで GoodNotes で解答を書き込む。おおむね快適な使用感ではあったが、行列を含む式や図の扱いには少し困った。図だけは Asymptote で作ったほうがよかったな。

そして、12ページのPDF文書を、1面に2ページ分、両面印刷で3枚のA4用紙に自室のレーザープリンタで、60部プリントアウトする。ところが、18時ちょっと前にとりかかったプリントジョブが、20時40分を回っても終らない。同じ原稿を60部刷るだけのことなのに、一枚一枚が出てくるのに妙に時間がかかるのだ。なにがどうしているんだろう。待っていても仕方ないので放って帰ろうかな。まあ、さすがに一晩のうちには終わるだろう。当日の授業直前にプリントを仕掛けなかったのでまだしも助かった。なにごとも直前にするものではない。


2013年7月17日(水)はれ

朝、いつものコーヒーショップでSacksのHRTのはじめの方を読む。薄い本だと侮ってはいけない。内容はやたら高密度だ。MoschovakisのDSTとこの本、どちらも一生付き合うことになるだろうな。

文献を読んでノートをまとめるにはGoodNotesが適しているが、自分の考えを好きなように展開する目的にはどうだろう。紙とペンの自由度には及ばないように思うが、以前一度NoteTaker HDで論文の下書きを一通り済ませたこともあったわけで、これもやってみないとわからない。やる気のなさをツールへの不満で糊塗するわけにはいかん。

それより、数学のノートと日常の雑記と講義ノートをGoodNotesの一つのファイルにいっしょくたに書いていることの方が問題だろうか。考えたことや勉強したことの蓄積の方法としてまずい気がする。とはいえ、これも考えなしにやっているわけでは必ずしもなくて、日記をつけるという行動へのハードルをできるだけ下げておきたいと思っているのだ。こまめに記録を残すためには、一冊のノートを常に携えて、そこへ何でもかんでも書いてしまうのが、結局は俺の性に合っている。

iPadはその点まことに好適なので、できるだけいろいろなことをこいつへ集約してしまいたいところだ。とはいえ、ノートをとるソフトウェアやその中のデータファイルまでひとつに決めてしまっては、かえってiPadの機能が活かせないかもしれない。それでまあ、いまこの日記(の下書き)をWritingsというアプリで書いている。本当は下書きだけでなく公開版までiPadで書いてしまえれば日記の更新の頻度は確実に上がるのだけど、現在の「て日々」の書式を維持する限り、それは難しい。模索は当分続きそうだ。


2013年7月16日(火)はれ

午後、4年ゼミ生のmmtくんが質問に来て、それから生保の会社の人が来て、910くんが質問に来た。910くんの質問は普遍 \(\mathit{\Pi}_n\)-式 についてのことだった。このあたりはちょうど自分でも勉強しなおさなければいけないところでもあり、思い出す機会が得られたのは有り難かった。

9月の数理論理学ゼミ合宿で普遍 \(\mathit{\Pi}_n\)-式そのものを使うわけではないが「あの方のあの定理」の証明では、共通の発想のもと、関連したテクニックを駆使して、類似のものを構成して見せねばならないのは確か。なので、講義ノートには普遍 \(\mathit{\Pi}_n\)-式の存在証明くらいは書くかもしれない。というか、そろそろ書き進めないとなあ。


2013年7月15日(月) 海の日はれ

午前中に家族で力を合わせて家を片付ける。一時間のタイマーをかけて集中してやった。一時間やった分の効果がちゃんと上がった。

昼には刺身を買ってきてぼっかけにして食い、午後は【娘】を連れて出かけた。最初の目的地はコミセンの図書館だ。

【娘】は本の虫のくせに「サバを読む」とか「魚河岸」といった言葉を知らない。それもこれも、お子さま向けのラノベ的なものばかり読んでいるからだ。もっとも、このごろは学校の社会の時間に習う日本の歴史に興味が湧いてきたとかで、昨晩なんか自発的にノートに「祇園精舎の鐘の聲…」という平家物語の書き出しを筆写していた。いずれにせよ、読書傾向に少し心配なところがある。そこで、図書館で本を借りるにあたって、今回は5冊のうち1冊だけ俺の勧める本を借りさせることにした。北杜夫『船乗りクプクプの冒険』『どくとるマンボウ昆虫記』それとトラヴァース『風にのってきたメアリー・ポピンズ』のうちから一つ選べと言ったら、メアリー・ポピンズを選んで借りた。

次の目的地はフジグラン松山。二階の部屋の整備が進んで、このごろは自分の部屋で寝ることも多くなってきた【娘】のために目覚まし時計を買ってやることと、小学3年生なのにいまだに箸が上手に持てない【息子】のために練習用の箸を買ってやること。

Simpsonの論文を読み終えたので次に何を読むか考える。残された問題はHarvey Friedman や Leo Harrington による \(0^\sharp\) と \(\Sigma^1_1\)-determinacy の関連の研究の延長線上にある。なので、ひとまずそのあたりの文献で情報収集しよう。そうしようそうしよう。


2013年7月14日(日)はれ

9Jくんは21dさんTkmさんと一緒にこのごろは自転車乗りにこっていて、この週末はしまなみ海道を自転車で渡るツアーというのを決行したという。せっかく電話までもらっているのだから、7時20分の特急いしづちに乗って今治まで会いに行く。普段から水くさい自分がそういうことをするというのに自分で驚くが、久々に旧友と顔を合わせて話せるのはうれしかった。創部40周年記念演奏会のときに会って以来だから10年ぶりだ。駅前で30分ほど話す。帰りは普通列車に揺られて1時間。これはこれでなかなか楽しい。三津浜駅で降りて伊予鉄の三津駅まで歩くという、あまり必然性のないことをして帰宅。

本当は、適当な時刻に妻が車で迎えに来て家族でドライブしながら帰るという計画だったのだが、なんと妻は公民館の掃除中に弱って地面に落ちたメジロを保護したという。それは大変。オトーサンを迎えに行っている場合ではない。とべ動物園に電話して引き受けてもらえることになったので連れてゆき、ついでにお弁当を食べて園内をひと巡りした。妻子は暑さのせいでへばり気味だったが、俺は平気で、これにも自分で驚いた。生後6か月のクロザルのしじみちゃんがかわいかった。


2013年7月13日(土)はれ

家族4人で浴衣に着替えて土曜夜市へ出向く。帰宅するころ、高校時代の部活の仲間9Jくんから電話。先輩の21dさんTkmさんと一緒に今治に来ているらしい。なんとまあ…


2013年7月12日(金)はれ

Stephen G. Simpson の “Minimal Covers and Hyperdegrees” (Trans.A.M.S., 209 (1975), pp.45-64)という古い論文を読み始める。この論文は俺には実に面白いし、読めば一つの未解決問題が残っていることは明らかなのに、その後30年以上、ろくにフォローされた形跡がない。いったいどうしたことやら。


2013年7月11日(木)はれ

夕方から家族で城北交番近くの鍾馗さんのお祭りに行った。ここで毎年7月にお祭りがあることは以前から知っていたが、来たのは初めてだ。小規模なお祭りながらなかなかの人出。ぷらぷら歩くのは楽しかった。

いくす魚金とは?

夕食は高砂町の「元帥」。ここへ来るのはかなり久しぶりだ。学生さん向けのボリュームの中華料理でおつりが来そうなくらいに満腹。


2013年7月10日(水)はれ

例によって水曜日は朝から夕方までゼミ。そろそろ910くんの修士論文のことを考えてやらねばならん。これまで読んできた文献をまとめれば修論くらいにはなるが、いまからそれを書いたのでは早すぎて真剣さを疑われる。もう少しだけでも内容を発展させられるようにしたい。


2013年7月9日(火)はれ

今日特筆すべき出来事といえば、出勤時に駅に向かう道で前を行く白ブラウス黒タイトスカートの女性が、駅で目が合ってみると予期に反してかなりの美女であったことくらいであります。チャーチが「チャーチの提唱」を提唱した論文が大まかにとはいえ読めたので、次に何を読むか考えております。


2013年7月8日(月)はれ

いやしかし、梅雨明けしたらいきなり暑いなあ。坊主頭が茹で上りそうになりながらチャーチの論文を読む。困ったことにチャーチやクリーネの論文をろくに読んだことがなかったので、今さらながらMathSciNetで検索してダウンロードするなど。iPad の GoodReaderに転送しておけばかさばらずにどこへでも持っていける。しかし問題は残る。というのも、iPad のPDFリーダーで論文を読みながら iPad の手書きメモアプリでノートを取ることはできないからだ。いま読んでいるのはM.デイヴィスが編集したアンソロジー“The Undecidable” 所収の論文で、これはペーパーバックの冊子を持っているからよいが、 Good Notes でノートが取りたいばっかりに論文をプリントアウトするというのも、ちょっと悔しい気はする。さりとてiPad を複数持ったり、代わりに iPhone で表示したりというのは現実的ではない。そんなこと言っているうちに「読まない」という選択肢が採用されてしまっては元も子もなくなるので、文献をプリントアウトするかノートを紙とペンでとるか、その時の状況で判断することにしよう。

紙とペンのノートと iPad のノートというのは統一性を欠くのではあるけど、実際やってみると俺にとって時々メディアを変えるというのは気分をリフレッシュさせてやる気を引き出す策になると気づいた。ひとつのやり方にこだわって何もできなくなるよりは、無節操なようでもいろいろ試してみるほうがいい。ただし、記録は残るようにしたい。

今夜はそんなわけで、“The Undecidable” 所収のこのチャーチの論文をダウンロードしてきて、現在読んでいるあたり以降だけプリントアウトし、本を持って帰るかわりにそのプリントアウトだけを持って帰宅。妻子が寝てしまってから昨日届いた妻の新しい仕事机に広げて読みつつ Good Notes でノートをとった。もちろん、いままでどおりダイニングテーブルでやってもよかったわけだけど、新しい仕事机には電気スタンドもつけたので、部屋の明かりが暗くできる。そうすれば隣室で寝ている妻子の安眠を妨げないし、自分も集中できる。これは思いのほかいいかもしれない。


2013年7月7日(日)はれ

今年も無事に誕生日がきて49歳になった。TwitterやFacebookでたくさんの人に「おめでとう」と声をかけてもらった。ありがたいことだ。mathpicoさんには「7月7日に49歳なんて特別ですねえ」と言ってもらった。

とはいえこの歳だから、お祝いらしいお祝いごとなどはしない。昨日りっくるで買うことにした机が朝のうちに届いた。妻はそれを予期して昨晩のうちにダイニングとリビング大掃除をした。おかげで自分の仕事机をうまく配置してちょっとしたホームオフィスにしたのはいいが、昨晩から体調を崩している【息子】の世話をしながら、自分も夜なべのあおりで寝てしまっている。それでまあ、俺が三食用意したり、【娘】を買い物に連れて行ったりと、家族にサービスした誕生日だった。しかしそれなりに幸せな気持ちは味わえたから、それはそれでいいと思う。

日中、【娘】をともなってフジグラン松山に文房具を買いに行き、【娘】と【息子】の夏休みの読書感想文の課題図書を買い、宮西のブックオフで【娘】の好きな本を買ってやり、デオデオで電気シェーバーの替刃を買った。行き帰りを歩いたのでかなり汗をかいた。いよいよ梅雨明けを感じさせる明るい空が心地よかった。

何の花だか ちいさいきれいな花
帰り道に田んぼのねきに咲いていた花

金曜日の日記に書いたように数直線から無理数全体の集合への明示的に定義された全単射について考えていた。ベール第一級、特に点性不連続な全単射の構成ができたようなのでそれについてLaTeXで書いた。


2013年7月6日(土)はれ

【娘】のお勉強机を買うため、「りっくる」に行ってきた。【娘】のお勉強机の他に妻の仕事机も買うことにした。

隣の公園がいい感じ。スペースは実に広いが、遊具は多くなく控えめに配置されている。その代わりに木が多い。りっくるの木造の建物近くには背の高い樅の木が二本並び立って、往年のアニメ「アルプスの少女ハイジ」を思い出させる。花見シーズンにはたくさんの人を集めそうな大きな桜の木があり、子どもの木登り遊びにもってこいの枝ぶりの楠の木もある。なかなか素敵な公園だ。

【息子】が木登りをするので、俺も一緒になって登っていたのはいいのだけど、少し難易度の高い木に挑戦してあえなく敗退、向う脛を打って痛い思いをした。

昼食に冷やしうどんを作り、午後はのんびり昼寝をして過ごした。夜も遅くなってから、明日の机の搬入に備えて妻が深夜の大掃除を始めたのでちょっと驚いた。


2013年7月5日(金)はれ

いま授業が集合の濃度の話にさしかかっているのだけど、同僚に聞いたところでは、集合論がそれほど得意でない限り、プロの数学者と言えども、開区間と閉区間の間の全単射を明示的に与えろというのは難問の部類に入るらしい。無論彼らとて開区間と閉区間がどちらも連続体濃度をもつことくらいは知っているのだが、シュレーダー・ベルンシュタインの定理を使う証明では、全単射を明示的に与えるという観点は持ちにくいだろう。(もっとも、シュレーダー・ベルンシュタインの定理自体は明示的・構成的なのだけど。)

《解説》0以上1以下の実数が、ある整数 \(n\geq0\) について \(3^{-n}\) の形をしていたらそれを \(3^{-(n+1)}\) に送り、\(1-3^{-n}\) の形をしていたらそれを \(1-3^{-(n+1)}\) へ送り、それ以外の形のものは動かさないことにすれば、閉区間 \([0,1]\) から開区間 \((0,1)\) への全単射が得られる。下図参照。これくらいがいちばん簡単なんじゃなかろうか。

interval-bijection-20130705.jpg

たとえば数直線 \(\mathbb{R}\) と無理数の全体 \(\mathbb{R}\setminus\mathbb{Q}\) はどちらも連続体濃度の集合で、両者の間に全単射が確かに存在する。しかし全単射を「なるたけ明示的に与える」というのはまた別の問題である。これについては、たとえば \[ \begin{gather} X_n = \{\,r+n\sqrt{2}\,:\,r\in\mathbb{Q}\,\}\quad(n=0,1,2,\ldots) \\ X = \bigcup_{n=0}^\infty X_n \end{gather} \] とおき、実数 \(x\) が集合 \(X\) に属するなら \(f(x)=x+\sqrt{2}\) とし属さなければ \(f(x)=x\) とすることで明示的に全単射を与えることができる。

さきほどの区間の全単射といい、この \(\mathbb{R}\) から \(\mathbb{R}\setminus\mathbb{Q}\) への全単射といい、構成のアイデアは結局のところシュレーダー・ベルンシュタインの定理の論法に遡る。そしてこの論法のキモは要するに「ヒルベルトのホテル」の発想、帳尻あわせの無限先送りの発想である。

ただし、このようにして構成された写像は実函数としていたるところ不連続である。連結な \(\mathbb{R}\) から不連結な \(\mathbb{R}\setminus\mathbb{Q}\) への全射を連続写像で実現できないのは当然として、せめてベール第1級函数で全単射を実現できないだろうか。

実は全射 \(f\colon\mathbb{R}\to\mathbb{R}\setminus\mathbb{Q}\) はベール第1級函数で作れる。解析学の演習問題として知られた、有理数についてはその既約分母の逆数を返し、無理数についてはゼロを返す函数 \(\varphi(x)\) はベール第1級である。そこで、 \(f(x)=x+\sqrt{2}\varphi(x)\) とすればこれは \(\mathbb{R}\) から \(\mathbb{R}\setminus\mathbb{Q}\) への全射であり、ベール第1級函数である。これをもとに少し工夫して \(\mathbb{R}\) から \(\mathbb{R}\setminus\mathbb{Q}\) へのベール第1級の全単射を作れたらよいのだけど。


2013年7月4日(木)あめ

午前中は授業。またまた普段より10人近くお客さんが減っていてびっくり。確かに天気はよくないが二週間前ほどではない。インカレ出場のために休んだ人もいたようだが、このクラスにそんなに選手がいたのか。午後は固定資産税やら何やらの手続に市役所へ行く。


2013年7月3日(水)あめ

セミナー中に窓の外を見たらえらい勢いで風が吹いている。どうしたことかと思っているうちに車軸を流したような大雨に。普段より少し早く終わったが天気があまりにあんまりなので0-1くんと910くんに「院生室に帰るもよし、ここに留まるもよし。好きなようにしなさい。」と申しわたす。雨がほとんど横殴りで、本館への渡り廊下を通るだけでずぶ濡れになりそうだったからね。


2013年7月2日(火)くもり

iPadの手書きメモアプリのこと。これまではNote Taker HDを使ってきた。機能にさほど不満はないが、改行時の動作だけが少々不満だった。それでも過去のデータの蓄積というものも多少あったので使い続けていたのだが、このさい過去のデータはPDF化してバックアップし、Good Notesに乗り換えることにした。機能的には似たり寄ったりなのだけど、こちらのほうが使用感が快適だ。

キャプチャ(小)
スクリーンショットはこんな感じ
フルサイズ画像にリンクしてます


2013年7月1日(月)はれ

いろいろ妻に申しわけないので反省中。自分の積んだ業の報いは自分が受けるものだ。周囲を巻き込んではいけない。

「て日々」を読むダンボー