て日々

2012年2月


2012年2月29日(水)くもり

とりいろ(@tri_iro)こと木原貴行くんが松山にやってきた。ご本人の最近の研究について話してくれるようにお願いしてあったのだ。4月から大学院に進むゼミ生の910くんを交えて拡大セミナーをやる。午前中は俺が先日書いたレジュメの線でアッカーマン函数が原始帰納的函数でないことの証明を910くんに話して聞かせる。その結果、レジュメの証明にちょっとした不備が見つかったので、近いうちに修正せねばならん。セトリアンで昼食の後、午後は木原くんが計算論的ランダム性について基本の定義から始めて自分の研究成果までを概説してくれた。ボレルのいわゆる強零集合の計算論バージョンというべき effectively strong measure zero set という新概念を定義し、そうした集合の任意の要素がコルモゴロフ複雑度の意味でかなり強い“反ランダム性”をもつことを証明する、など。

夕食はロープウェイ街の「博多一番どり」の焼き鳥。初めて行ったけどなかなかいい店だった。焼酎を飲みながら、本の構想について話を聴いてもらう。木原くんは面白がってくれたが、どういう読者を対象にするのかで書き方が変わってくるでしょうね、と冷静にコメントもしてくれた。

いや実際、«あの本»を書くには、断酒するくらいの覚悟がいるかもしれない。

あの湯呑み
あの湯呑み
その2

そして、木原くんにはお土産として「あの湯呑み、その3」をプレゼントした。「あの湯呑み」は、20年ほど前に4つ買ったうち、1つが割れてしまって、現在3つある。「その1」はいま鏡さんのところにあり、「その2」は引き続き俺が使う。この三つが再び一堂に会するときには、なにか凄いことが起こるに違いない、という無責任な予言をしておこう。


2012年2月28日(火)くもりあめ

きのうの夕方は空が綺麗に晴れていたが、きょうは朝から曇り、午後すこし晴れ間が戻ったと思ったら、夕方から雨。なんだこの天気は。だがこの数日のうちに、ずいぶん春らしくなってきたとは思う。なんだか身体がだるいが、科学基礎論学会誌の論文の校正を済ませ、昨年10月の研究集会の講究録に載せる原稿も完成させた。

〜〜〜

土曜日の日記でケイリー=ハミルトンの定理の証明がわからんと愚痴ったら、東京で数論幾何の研究をしている大学院生のみややさん(@nolimbre)がアドバイスをくれた。それを自分なりに反芻してみる。俺が理解できたなりに書くので、たとえ間違っていても、それはみややさんのせいではない。

不可換な環 \(R\) とその要素 \(a\) が指定されたとする. \(R\) の要素のうち \(a\) と可換なものの全体を \(R'\) と書こう: \[ R' = \big\{\,x\in R\,:\,xa=ax\,\big\}. \] このとき \(R'\) は \(R\) の(一般には不可換な)部分環となる. 不定元 \(X\) についての \(R'\) 上の多項式環 \(R'[X]\) を考える. ただし \(R'[X]\) の環としての演算においては, 不定元 \(X\) は \(R'\) のすべての要素と可換であるとして計算するものとする. このとき, 環準同型 \(\Phi:R'[X]\to R\) で \[ \begin{gather*} \Phi(X)=a,\\ c\in R'\,\rightarrow\,\Phi(c)=c \end{gather*} \] をみたすものが, 一意的に存在する. その証明は, 単に多項式 \[ P(X)=c_nX^n+\cdots+c_1X+c_0 \] に \(R\) の要素 \[ P(a)=c_na^n+\cdots+c_1a+c_0 \] を対応させる写像が環準同型になることを計算で確かめるだけだ. 多項式への文字の代入をこのように少し高い立場に立って環から環への準同型だと思いなおすことで, すこしは頭がスッキリする.

みややさんの定式化では, \(R'[X]\) からの準同型に限らず, 他の(不可換)環 \(S\) からの環準同型 \(f:S\to R\) で \(\mathop{\mathrm{Im}}f\subset R'\) となるものが, 多項式環 \(S[X]\) からの準同型 \(\tilde f:S[X]\to R\) で \(\tilde f(X)=a\) となるものに一意的に拡張される, となっていたように思う. いずれにせよ, ケーリー=ハミルトンの定理の証明の佐武本の流儀での証明の最後の一手すなわち行列係数多項式への行列 \(A\) の代入は, ここで述べた意味で, 行列環 \(M(n,K)\) の, \(A\) と可換な行列全体がなす部分環の上の多項式環から \(M(n,K)\) への環準同型と考えられる.

なにしろこの証明が「わからない」理由は俺の代数的なセンスの欠如に由来する心理的抵抗感(だけ)だったので、このように別の角度からの視点を確保できたせいで、実質的な変更はなんら行なわれていないにもかかわらず、だいぶ見通しがよくなった。

…というわけで、みややさんありがとうございます。研究がんばってください。

ケイリー=ハミルトンの定理は行列が対角化できる場合にはかなり自明に思えるし、一般の場合にも、固有多項式を係数体 \(K\) の代数的閉包 \(\bar K\) において \(n\) 個の一次式の積に \[ \varphi_A(x)=(x-\lambda_1)(x-\lambda_2)\cdots(x-\lambda_n) \] と因数分解したうえ、正則行列 \(P\) による変換で \(A\) を \[ P^{-1}AP=\begin{bmatrix} \lambda_1 & * & \cdots & * & * \\ 0 & \lambda_2 & \cdots & * & * \\ \vdots & \vdots & \ddots & \vdots & \vdots \\ 0 & 0 & \cdots & \lambda_{n-1} & * \\ 0 & 0 & \cdots & 0 & \lambda_n \end{bmatrix} \] と上半三角行列に変換してしまえば、巧妙だが簡単な行列計算に帰着される。土曜日に買った長岡亮介先生の本で採用している筋道だ。 ただし、その場合も、実は上に述べた「多項式への行列の代入」を暗に用いているわけである。


2012年2月27日(月)はれ

仕事を終えて帰宅すると子供たちが留守番をしている。夕食には牛丼を作ってやった。食材を買いに表へ出ると、群青色の夕空に金星と三日月と木星が掛かってとても美しかった。

夕食の牛丼だ

土曜日の日記に書いたWiiのACアダプタの代替品が届いた。本当を言うと壊れたのが本体なのかACアダプタなのか確証はなかったので若干不安であったが、ACアダプタを交換したら電源がちゃんと入ったので、ひと安心だ。とはいえ、うちでは平日にはゲームをしない。

妻が帰ってきたのは夜9時半ごろ。徳島に取った宿はなかなかいいところだったようで、次はぜひ家族で行きたいとしきりに言っている。俺も、高知や高松には何度か行ったことがあるが、徳島は通過するだけで足を止めたことがない。大塚美術館は見応えがあるというし、いつか行ってみたい。


2012年2月26日(日)くもり

いわゆる休日出勤である。しかも夕方から妻は徳島へ泊まり込みの仕事に行ってしまう。まあ、子供たちもそれなりに成長しているからこのごろはあまり不安はない。実際、俺が仕事に出ている間に娘は母親と協力して家の中を綺麗さっぱり片付けてくれていた。なんだか普通の家みたいだ…

子供らと少しゲームをして、夕食をとって風呂に入って、子供らが寝てしまってから、石井茂『ハイゼンベルクの顕微鏡』をようやく読了した。先月の「小澤の不等式の実験的検証成功か」のニュースを受けて、数日前からちまちまと読んでいたのだ。何日かに分けて読んだので理解が細切れになってしまったきらいがあるが、不確定性原理について一般向けに解説した本として非常に明快で面白かった。

歩数計カウント10,048歩。


2012年2月25日(土)くもり

Wiiの電源が入らなくなった。どうもACアダプタがいかれたようなので代替品を発注する。それで「ぷよぷよ‼」ができなくなって、娘がしょんぼりしている。散らかった家のお片づけを頑張ってくれたのにゲームができなくてかわいそうなので、県立図書館へ借りた本を返しに行くついでに娘をジュンク堂に連れて行った。その結果俺のほうが本を買いすぎた。困ったもんだ。

買いすぎた本
きょう買った本と届いた本
ハイデガー『ニーチェ』I&II (平凡社ライブラリー)
佐武一郎『線型代数学』(裳華房)
長岡亮介『線型代数入門講義』(東京図書)
小野寺嘉孝『演習で学ぶ量子力学』(裳華房)
藤沢令夫『プラトンの哲学』(岩波新書)
Roger C.Lyndon & Paul E.Schupp «Combinatorial Group Theory» (Springer-Verlag)

写真ではわかりにくいが背景の布の袋には図書館で借りた本も入っている。こんなに誰が読むんだろう。ううむ。

スケルトンTスケルトンTスケルトンT

ケイリー=ハミルトンの定理の証明がどうもいまだに腑に落ちない。\(n\) 次の正方行列 \(A\) と同じ寸法の単位行列を \(E\) と書くことにして、不定元 \(x\) を含む行列式 \(\mathrm{det}(xE-A)\) を展開すると、\(x\) の \(n\) 次多項式が得られる。この多項式 \(\varphi_A(x)\) を \(A\) の固有多項式という。ケイリー=ハミルトンの定理は、この多項式の不定元に \(A\) 自身を代入して計算した結果がゼロ行列になる: \(\varphi_A(A)=O\) という主張だ。二次行列の場合は理系の受験生なら誰でも知っている公式だし、三次行列の場合もちょっとがんばって計算すれば証明できる。しかし、一般の次元の証明は意外とやっかいだ。次に紹介するのは、上の写真にある佐武一郎の本で述べられている証明の概略だ。

まず行列 \(xE-A\) の余因子行列 \(B(x)\) を考えると、よく知られた公式により \[ (xE-A)B(x)=B(x)(xE-A)=\mathrm{det}(xE-A)E=\varphi_A(x)E \] となる。次に余因子行列 \(B(x)\) の各成分が次数 \(n\) 未満の \(x\) の多項式になることに注目して、\(B(x)\) の\((i,j)\)成分における \(x^k\) の係数を\((i,j)\)成分とする行列 \(B_k\) を作ると \[ B(x)=x^{n-1}B_{n-1}+\cdots+xB_1+B_0 \] となるから \[ \varphi_A(x)E=(xE-A)(x^{n-1}B_{n-1}+\cdots+xB_1+B_0) \] が得られる。いま \(\varphi_A(x)=c_nx^n+\cdots+c_1x+c_0\) となっていたとすると、\(c_kE=C_k\) とおいて \[ x^nC_n+\cdots+xC_1+C_0=(xE-A)(x^{n-1}B_{n-1}+\cdots+xB_1+B_0) \] ということになる。両辺は \(x\) の行列係数の多項式であり、その係数となっている行列は、すべて \(A\) と可換 (つまりたとえば \(AB_k=B_kA\)) となる。

ここまではついて来れたのだけど、最後がいけない。《係数がすべて \(A\) と可換である場合、行列係数多項式の恒等式の不定元 \(x\) に \(A\) を代入してもいぜんとして等式が成立する》ので、 \[ \varphi_A(A)=(A-A)(A^{n-1}B_{n-1}+\cdots+AB_1+B_0)=O \] となる。証明終わり。この最後の一手が、どうも飲みこめない。

最初は \(\varphi_A(x)\) はスカラー係数の多項式として登場し、またケイリー=ハミルトンの式 \(\varphi_A(A)=O\) も、\(A\) の何乗かしたものをしかるべくスカラー倍して足し上げるとゼロ行列になるよ、という内容を表わしている。ところがこの証明では、まず議論が不定元 \(x\) の行列係数の多項式の領域に持ち込まれる。それで「ふんふん、きっと不定元 \(x\) はスカラーなんだろう」と思いながらついていくと、最後になって \(xE-A\) という式の不定元 \(x\) に \(A\) を代入すると \(A-A=O\) となって云々、という意外な急展開。《\(xE-A\) の \(x\) に \(A\) を代入する》というところに、大きな心理的抵抗を感じる。まるで落語の「頭山」みたいだ。計算が苦手な俺は、どうも多項式というものの扱いの自在さについていけないのだ。もっと自分で得心がいく証明を見つけないといけない。


2012年2月24日(金)はれ

大阪で泊まったのは「ホテルグリーンプラザ大阪」というちょっと古いホテル。ここの自慢は結婚式場のチャペルで、2階から7階くらいまでの吹き抜けになっていて、壁面には巨大なステンドグラスが施されている。イタリアの職人さんに作ってもらった本場もので、それだけに絵柄も本格的だ。

ステンドグラス#1 ステンドグラス#3 ステンドグラス#2
中央の聖家族の写真のフルサイズ画像もあります
(約2.8MB, 2448 × 3264 ピクセル, iPhoneにて撮影)

松山への帰途、乗っていた特急しおかぜが、新居浜駅の手前の踏切で事故を起こし、小一時間立ち往生。それで松山に戻ったのは午後3時すぎ。予定よりちょうど1時間遅れ。その足で大学へ行って急ぎの仕事を一つだけ片付けた。そのあと家でひと休み。ピアノのレッスンに余裕を持って行ける時間に帰ってきたつもりだったのだが、つまらない理由で妻と口論になってしまい(そういうときは、たいていいつも俺が悪いのだ)、結局レッスンには行ける精神状態ではなかった。ごめんなさい&恥ずかしい。


2012年2月23日(木)くもり

大阪=神戸出張3日め。昼食を六甲道駅南側のビル(ウェルプ六甲道)の1階にあるとんかつ屋で食う。六甲道駅の駅ビルもこのビルも、コンコースと同じ高さにあるのが2階なのだが、バス乗り場やフォレスタ六甲とかの駅の北側にある施設は、その高さが1階ということになる。六甲道に来るのは神戸大学に行くときだけである俺は、いつも北側にしか出ないものだから、駅の改札のあるのが1階の高さだと思いこんでいた。で、駅のコンコースから直接南隣のビルに行けば、そこは2階であり、1階に行くには階段を降りることになる。ところがいったん駅の北側に出て駅ビルの外を回って南隣のビルに行けば、ゆるやかな坂を下るかたちで自然にたどりつくそこが1階である。経路に依存して違う階に接続される。駅ビルの留数がゼロでない。坂の多い神戸の山手ではよくあることのようだ。

夕食は普通に学食。帰り道に、今度は六甲道駅北側のアミーゴ書店で、渡辺邦夫訳のプラトン『メノン』(光文社古典新訳文庫)とキャンベル/モイヤーズ『神話の力』(ハヤカワ文庫)を買う。歩数計カウント11,108歩。宿に着いたとたん、足腰がくたばっていることに気付く。神戸大学に行くにはどうしても急な坂を登らないといけないからだ。たとえば愛媛大学のように平地にある大学と神戸大学とでは、4年間通いつづけた学生の体力とか根性とか、そういうものに違いが出てきそうな気がする。

アミーゴ書店は、学生時代にさんざん世話になったアバンティブックセンターと同系列の書店チェーンであるらしい。そしてアバンテイブックセンターは今ではそういう名前の株式会社になっていて、京都駅南側にあるアバンティ6階のブックセンターの他に、三田と滋賀県の草津、それと関東には相模原と八王子にも「アバンティブックセンター」があるそうだ。


2012年2月22日(水)くもりあめ

あさ、少し寝坊したので朝食は六甲道に着いてからとるつもりでJR大阪駅へ向かうが、途中の梅田の阪急百貨店あたりが騒がしい。なんでも、地下鉄御堂筋線の梅田駅で火事があったそうだ。地下街を燻り出された人たちで地上も混雑している。まさかそのせいではなく自分がぼんやりしていたからだと思うが、大阪駅から六甲道へ向うはずが、間違って福知山線に乗ってしまった。塚口で気がついて降りて尼崎へ引き返したが、六甲道に着いたのは10時半すぎ。とはいえ朝飯を抜くわけにもいかぬ。駅前のドトールもミスドも妙に混んでいたので、モスバーガー六甲店に入る。ご近所の奥さんがたと思われる女性3人のグループ二つに取り囲まれるように席を占めるが、それこそ枝雀落語で言う《あっちの姦しいとこっちの姦しいが空中で激突しとるがな》という状態で、なんとも落ち着かなかった。神戸市灘区という土地柄があるのかないのか知らないが、若い奥さんたちには関西弁を使わない人が増えているようだ。

午後のセッションでは、エルデシュの古い結果についてのちょっとした結果について話した。研究会のボスのフチノさんは興味をもってくれたけれども、巨大基数の組合せ論の最先端の問題を語りあう研究会全体の趣旨にはそぐわない。前回の発表のときもそうで、俺の発表は会のテーマであった強制法の応用には少しも関係がなかった。それはしかしまあ仕方がない。問題は俺の発表内容が場違いであることではなく、他の人の発表において中心的な問題として議論されている主要トピック (つまり巨大基数の集合論と強制法) を俺がほとんど理解できないことのほうだ。こればっかりは自分で努力して追い付くしかない。

夜は のうこ (@noukoknows) 山元 (@hymathlogic) Γ0 (@prooftheorist) と天六の犇屋 (→食べログのページ) で焼き肉オフ。先月の神戸行きでは、飲み会の店まで手配してもらったのに薬を忘れてしくじったので、今回このオフ会の優先度は俺にとってかなり高いのだ。会ってみると、のうこは真面目で元気な大学生、山元は知的でよくしゃべる《面白いおにいさん》で、Γ0はバリバリの営業マンながら育ちのよさを感じさせる美青年であった。それに怪しい「先生」の俺を加えた四人で、焼き肉を食いつつ論理を学ぶことについて語りあう。「グループ」や「サークル」や「コミュニティ」といった、内外の境界線の明確な集合体ではなく、「クラスタ」というぼんやりした形で人々が集まることを可能にしたのは、ツイッターという《ゆるいメディア》のいいところ、成功のカギなのだろうと思う。犇屋の焼き肉はうまかったし、何より、肉の部位の説明をしてくれた店の大将の言葉に仕事に愛情をもっている様子が感じられたのがよかった。値段も思いのほか安くあがってまことに結構。

JR天満駅前で皆と別れ、環状線のガード下の貧乏くさい道を歩いて宿に戻る。それから、きょうの発表で話した線で数理研講究録の原稿を夜中までかかって (みずから設定した〆切に遅れること22日にしてようやく) 書きあげた。とはいえ、先日のアッカーマン函数のノートもそうだったが、夜中に根を詰めて書いているときは、くだらないミスをしていて気がついてないことがよくあるので、一晩おいてから見直しをすべきだろう。

ガード下の貧乏くさい道というと、貶しているとしか思われないだろうが、大都市のこういう寂れた一角が俺はけっこう好きなのだ。都会がピカピカのオサレな表通りばっかりになってしまったら、俺みたいな怪しい先生のいる場所がなくなってしまう。そういう意味では俺には、すっかり綺麗になった梅田のビル街より天神橋筋の食堂街のほうが居心地がよかった。

歩数計カウント16,262歩。


2012年2月21日(火)くもり

あさ、アンパンマン列車に乗って四国を脱出。きょうあす、神戸のミニ研究集会に参加するためだ。今回どういうわけか神戸に宿がとれず、大阪梅田近辺に宿をとった。あすは何かしゃべらないといけないので今夜はそれが済むまでビールはおあずけ。新幹線や神戸=大阪間のJR線では、『ファインマンさんの流儀』を読んだり『ハイゼンベルクの顕微鏡』を読んだり。歩数計カウント10,175歩。


2012年2月20日(月)はれ

昨日と一昨日の休日出勤の代休の一回め。子供たちも一昨日の音楽発表会の代休なので一緒にゲームをしたりなぞする。

昨日の日記の数学ネタは \(\lambda_2=\lambda_1\) のときは \(\lambda_2\) は固有値に決まってるじゃんかアホラシイ、というところにオチを持っていったつもりだったのだが、日記を読んだ @force22 さんから、頑張って計算しなくても、行列が共役だってことから固有値であることはすぐわかるんじゃありませんか、という趣旨のメッセージをもらった。それで考えてみると、上半三角行列 \(T\) の固有多項式 \(\mathrm{det}(tE-T)\) は行列 \(tE-T\) の対角成分の積にほかならないからその根は全体として \(T\) の対角成分と一致する。そしてそれらが \(T\) の固有値のすべてである。だから与えられた正方行列 \(A\) と共役な上半三角行列 \(T\) を見つけさえすれば、この \(T\) の対角成分として \(A\) の固有値が並ぶことは、共役な行列どうしが同じ固有値をもつことから自動的に出てくる単なるアタリマエの事実である。テキストの記述に誘導されたからということもあるが、昨日あれだけいろいろ考えていてこのことに気づかなかったのはわれながらアホだ。というか @force22さん、ご指摘ありがとうございました。


2012年2月19日(日)はれ

昨日に引き続き卒業研究発表会。俺が座長を務めた最後のセッションは、D教授のゼミの4人が共同でコンパクト位相空間と点列コンパクト位相空間の基本性質を述べてから両概念が同値でないことを示す1時間のリレー講演。いい発表だったがお客さんが少なかったのが残念だ。その後、大学内のレストラン「セトリアン」で懇親会。二次会には行かず、ひとりでラーメン食って帰宅。歩数計カウント10,009歩。

解析学専攻で4月からアズマ大の大学院に進むNくんがルベーグ積分の勉強を始めたというので、25年前に自分が立命館を卒業して名古屋の大学院に進学するときに山田俊雄先生からいただいたハルモスの測度論の本を譲ってきた。いずれルベーグ積分をマスターしたら、いつかその本を誰かにまた譲ってやってくれ。

やるきのないあひるやるきのないあひるやるきのないあひる

さて, 一昨日の日記に書いた竹之内脩+浅野洋『線形代数』の証明のギャップについて考えていた. さしあたって, 次の定理を証明することが目標だとしよう: 複素数係数の任意の \(n\) 次正方行列 \(A\) に対し, \(n\) 次のユニタリ行列 \(P\) が存在して, \[ P^{-1}AP=\begin{bmatrix} \lambda_1 & * & \cdots & * & * \\ 0 & \lambda_2 & \cdots & * & * \\ \vdots & \vdots & \ddots & \vdots & \vdots \\ 0 & 0 & \cdots & \lambda_{n-1} & * \\ 0 & 0 & \cdots & 0 & \lambda_n \end{bmatrix} \] と上半三角行列に変換される. しかもこのとき対角成分 \(\lambda_1,\ldots,\lambda_n\) が \(A\) の固有値となるようにとれる.

証明では, 行列の議論を, その行列があらわす線形変換の言葉に置き換えて考える. 複素数体上 \(n\) 次元の内積空間 \(V\) 上の線形変換 \(f:V\to V\) の固有値の一つを \(\lambda_1\) とし, 対応する固有ベクトル \(\mathbf{u}_1\) を考えよう. \(\mathbf{u}_1\) の長さは1に正規化されているものとしよう. \(\mathbf{u}_1\) の直交補空間 \(V_1=\{\mathbf{u}_1\}^\bot\) を考える. \(V\) のベクトル \(\mathbf{v}\) に, \(f(\mathbf{v})\) の \(V_1\) への正射影すなわち \[ f(\mathbf{v})-\langle \mathbf{u}_1,f(\mathbf{v})\rangle\cdot\mathbf{u}_1 \] を対応させる \(V\) 上の線形変換の値域は, もちろん \(V_1\) に含まれる. そこで, この線形変換の定義域を \(V_1\) に制限したものを, \(f_1:V_1\to V_1\) とする. ここで \(V_1\) は \(n-1\) 次元なので, 次元にかんする数学的帰納法の仮定により, \(f_1\) は \(V_1\) のある正規直交基底 \(\mathbf{u}_2\),…,\(\mathbf{u}_n\) にかんして上半三角行列によって表現され, しかもその三角行列の対角成分として \(f_1\) の固有値が並ぶようにできる. すると \(\mathbf{u}_1\), \(\mathbf{u}_2\),…, \(\mathbf{u}_n\) は \(V\) の正規直交基底になる. この基底にかんして \(f\) の行列表示を考えれば定理の主張は確かめられるというわけだが, テキストでは \(f_1\) の固有値が \(f\) の固有値になることのチェックもしていないし, チェックの必要性の指摘すらしていない.

そこのところをこのように埋めることを考えた. \(f_1\) の固有値 \(\lambda_2\) に対応する固有ベクトル \(\mathbf{u}_2\in V_1\) をとる. 問題は \(\lambda_2\) がもとの \(f\) の固有値になるかどうかであるから, 固有ベクトルの候補として, スカラー \(\mu\) について \(\mathbf{v}=\mu\mathbf{u}_1+\mathbf{u}_2\) を考える. \(\mathbf{u}_1\perp \mathbf{u}_2\) だからこの \(\mathbf{v}\) はゼロではない. \(f_1\) の定義と \(f_1(\mathbf{u}_2)=\lambda_2\mathbf{u}_2\) ということから, \[ \begin{align*} f(\mathbf{v})=&\;\mu f(\mathbf{u}_1)+f(\mathbf{u}_2)\\ =&\;\mu\lambda_1\mathbf{u}_1+\lambda_2\mathbf{u}_2+\langle\mathbf{u}_1,f(\mathbf{u}_2)\rangle\cdot\mathbf{u}_1\\ =&\;(\lambda_1\mu+\langle\mathbf{u}_1,f(\mathbf{u}_2)\rangle)\cdot\mathbf{u}_1 +\lambda_2\mathbf{u}_2\\ =&\;\lambda_2\mathbf{v}+\big((\lambda_1-\lambda_2)\mu+\langle\mathbf{u}_1,f(\mathbf{u}_2)\rangle\big)\cdot\mathbf{u}_1 \end{align*} \] となる. ということは, \[ \mu=-\frac{\langle\mathbf{u}_1,f(\mathbf{u}_2)\rangle}{\lambda_1-\lambda_2} \] ととって, \[ \mathbf{v}=-\frac{\langle\mathbf{u}_1,f(\mathbf{u}_2)\rangle}{\lambda_1-\lambda_2}\cdot\mathbf{u}_1+\mathbf{u}_2 \] とおけば, \(f(\mathbf{v})=\lambda_2\mathbf{v}\) をみたし, めでたく \(\lambda_2\) も \(f\) の固有値だということになる.

これで一応テキストで見過された条件のチェックが済んだことになる. ところが俺は, \[ \mu=-\frac{\langle\mathbf{u}_1,f(\mathbf{u}_2)\rangle}{\lambda_1-\lambda_2} \] というからには \(\lambda_2\neq\lambda_1\) でないといけないわけだけど, じゃあ \(\lambda_2 = \lambda_1\) のときはどうしたらいいんだろうと, かれこれ半日ほど悩んでいたという話. はい, わかる人だけ面白がってください.

しかしそれにしても MacOS のSafariに限って MathJax の表示がどうしてこうキタナイのだろうか… (2012年2月28日火曜日追記: こう書いた数日後に MathJax がバージョンアップしたらしく、表示は正常になった。)


2012年2月18日(土)はれ

今日と明日は、うちのゼミ生たちを含む4年生たちの卒業研究発表会。うちのゼミの発表はきょうの午後だった。3人とも、発表自体は練習したとおりにきちんとできたが、質疑にはぜんぜん答えられなかったので、再々俺が助け舟を出さねばならなかった。これは彼らのせいではなく、俺の指導が甘かったせいである。ふむむ。反省せねばならん。会場にはなぜか何人かの高校生がやってきていた。どこかの学校で課題研究の宿題でもあるのだろうか。O24くんがエルデシュ=角谷の定理の発表をしているあいだ熱心にノートを取っている高校生がいた。これをきっかけに集合論に興味を持ってくれたらうれしいな。


2012年2月17日(金)くもり

きょうも寒い。いっとき雪が舞う。

昨日あんなふうに挑発したので、妻がしっかり計算してくれた: \[ \begin{gather*} 300a+200b=3700\\ a+b = 15 \end{gather*} \]なので, \(b=15-a\) を使って \(300a+200(15-a)=3700\). これを整理して \(100a=700\), したがって \(a=7\) となる. 明察.

鶴亀算の演習
最後に15ひく7の引き算を間違えているのはご愛嬌だ

鶴亀算方式でやれば、「200円のものBを15個買ったら3,000円で700円少ない。この差額はBより100円高いものAを7個買っていることによる、したがってAが7個、Bが8個だ」という説明になるだろう。しかし、文字式が使えれば鶴亀算のような工夫は必要ないし、ましてや「鶴亀算とは何か」の知識も必要ない。知っていて害になるわけでもないが、むろんたいした自慢にもならない。ということで、この話はおしまい。

さて。俺は俺で、いまだに行列のジョルダン標準形の理論をよく理解していなかった。情けない話だが、学生時代にちゃんと勉強していなかったうえ、教える機会にも使う機会にも恵まれていなかったのだ。しかしそんな理由でいつまでも苦手意識に苛まれるはもっと情けないので、きょうの午後はかつての大学一年生時代(29年前!!)のテキストである竹之内脩+浅野洋『線形代数』(朝倉書店)を書棚の奥から持ちだしてきてそこを勉強した。このテキストは内容が厳選されているぶん説明が大変詳しく平明なので、こういう自習にはうってつけだ。ジョルダン標準形の存在と一意性の証明もずいぶんと初等的で、大きな道具をいっさい使っていない。最小多項式やケイリーとハミルトンの定理などはすべて演習問題に回されている。そんなふうに初等的に証明したぶん議論が技巧的になっている嫌いはあるのかもしれないので、他のもっと理論的に整理されたテキストも見ておくことにしよう。

ただ、竹之内+浅野の証明には、ギャップというか、言われないと見落としてしまう (実際最初はうっかり見落とした) が必要なチェックをすっ飛ばしている箇所があった、学部生時代の俺は、はたしてそれに気づきそしてギャップが埋められたかどうか。

正規行列の相似型 (共役類というべきか) が固有値とその重複度で決まることは、対角化可能性のコロラリーとしてすぐにわかる。ハルモス (Paul Halmos) という人の本によれば、無限次元を含むヒルベルト空間での有界な正規作用素でも、スペクトルの重複度函数というものがユニタリ同値類の完全不変量であるらしい。対角化可能性の条件をはずすと、二次行列の範囲ですら、固有値の重複度だけでは共役類を決定できない。有限次元では、ジョルダン標準形のタイプが (ユニタリ同値類ではなく) 共役類を決定する。無限次元に類似の結果はあるのだろうか。あと、線形写像の共役関係は定義域とターゲットが一致しない場合でも意味をもつ。つまり、正方形でない行列でも共役類を定義できる。もちろんこの場合は固有値やスペクトルは意味をなさない。さて、この場合は共役類はどうなっているのだろうか。このあたりの発展した話も面白そうだ。


2012年2月16日(木)くもり

人は誰も全知全能ではなく、無知はお互いさまだ。他人の知識のなさを嗤ってはいけない。

なんと、妻が鶴亀算を知らないということが、結婚後13年にして初めて明らかになった。日頃カイ二乗検定だの回帰直線だのと統計用語を振り回しており、かつて役場勤めの頃はこっちの若い同僚が漢字を知らんだのあっちのやる気のない同僚が関東ローム層を温泉ヘルスセンターか何かと勘違いしてただのと嗤っていた妻のことだから、微積分や行列計算はともかく鶴亀算くらいは知っているはずと、俺は思い込んでいた。大久保彦左衛門や清水次郎長を妻が知らなかったのにも驚いたとはいえ、奴らはもともと講談の世界のキャラクターだ。保健行政のプランのアセスメントのさいに一心太助や森の石松を振り回す必要はない。だが、妻は「子育て支援におけるインターネット利用」について統計ツールを駆使して調査し、ちょうど本日、自分が筆頭著者として書きあげた論文の掲載された学会誌が送り届けられてきたところなのだ。わははは。

いやいや。他人の知識のなさを嗤ってはいけない。誰しも全知全能ではなく無知はお互いさまだ。妻とて、鶴亀算という名前を知らないだけで、必要とあればそのような計算はできるはずだ。試してみよう。

【問題】
一個300円の品物Aと一個200円の品物Bを
合計15個買って、代金の合計が3,700円だったら、
品物AとBの内訳はどうなっている?

要するに「鶴亀算とは何か」という知識が実際上不要だということなのだろう。

論文が学会誌に掲載されて嬉しかったのだろう、妻があまり筆頭筆頭と言うものだから、俺はつい連られて「筆頭はだれもただ一人〜♪」と歌ってしまった。そんな親父ギャクな理由で、改めてはしだのりひこの『風』をYouTubeで聴いてみた。オッサンになって改めて聴いてみると、これはまたずいぶん後ろ向きな感性の歌だなあ。これが流行った当時、俺はちょうど小学校に上がる歳の子供だったから、この歌のココロなどわかるはずもなく「道を歩いていて後ろをふりかえると風が落葉を散らかしていることであるよ」という即物的な印象だけを持っていた。まあ虚しさのイメージだけは受けとめていたわけだ。いや、ひょっとしたら当時俺はこの歌について、誰かに呼ばれてふりかえったが風が吹いているだけだという不思議な現象を歌っている、というイメージで捉えていたのではなかったろうか。

歌に間違ったイメージを抱くということについては 2009年2月5日の「て日々」 でも取りあげた。今朝ちょっと話題になった他の歌の例を言えば「柱の傷は一昨年の五月五日の背くらべ」という歌の「昨日比べりゃ何のこと、やっと羽織の紐の丈」というのを、俺はずっと「一昨年の自分の身長は、現在では羽織の紐の高さ、すなわち臍の高さくらいだよ」というインフレーション宇宙論的急成長だと思っていたのだが、さすがにそれもあり得ない。

久々に手描きしました
「やっと羽織の紐の丈」のありえない解釈の図

だから、くれぐれも、他人の知識のなさを嗤ってはいけない。人は誰も全知全能ではなく、無知はお互いさまだ。


2012年2月15日(水)あめ

午前中は910くんのゼミ。前原本の第11章に入った。この本にアッカーマン函数が原始帰納的でないことの証明が書いてない。廣瀬健先生の『計算論』(朝倉書店, 1975/復刊2004)にあるかと思ったが、未完に終わった『計算論演習』に回されていた。恩師篠田寿一先生の『帰納的関数と述語』(河合文化教育研究所, 1997)にはちゃんと書いてあるが、この本もいまでは入手困難だ。まあこのさい自分で書いて公開しようと思って書きはじめたのが夕方の5時半ごろ。篠田本のマルウツシというわけにはいかんぞと思って自分なりに計算を始めたらなかなか思うようにいかず、書き終えたのは夜中の2時まえ。たっぷり7時間以上も根を詰めたのは久しぶりだ。いつものように なげやりアカデミア で公開して帰宅したのが2時半ごろ。ところが軽い興奮状態が続いてなかなか眠くならず、4時すぎまで起きていた。

参考までに、アッカーマン函数とは \[ \left\{ \begin{aligned} A(0,y)= & \; y+1,\\ A(x+1,0)= & \; A(x,1),\\ A(x+1,y+1)= & \; A(x, A(x+1,y)) \end{aligned} \right. \] という二重再帰によって定義される自然数についての2変数函数だ。自然数 \(x\) を固定するごとに \(y\) の1変数函数としての \(A(x,y)\) は原始帰納的函数になるが、2変数函数としては原始帰納的でないことが、\(x\) にかんする増加のオーダーに注目することで証明できる。きょうのノートにはそのことの証明を書いた。


2012年2月14日(火)くもり

午前中は \(H(K)\) くんのゼミ。お題は述語論理で、エルブラン構造による論理式の充足可能性のチェック。

夜は市民コンサートの機関誌作業。きょうは小池さんとの二人体勢だ。9時半ごろまでかかった。昨年末に事故で入院した黒幕安倍さんはリハビリ中とて、夜は出てこない。そのかわりチョコの置きみやげがあった。では、昨日あんなことを書いた手前、あしなが共同募金にいくばくか寄付させてもらおう。歩数計カウント10,612歩。

やるきのないあひるやるきのないあひるやるきのないあひる

集合論では \(a\) と \(b\) の順序対 \(\langle a,b\rangle\) を \(\{\{a\},\{a,b\}\}\) なる集合として定式化する。このように決める理由は、たんに \(\langle a,b\rangle\) が左に \(a\) 右に \(b\) を並べたものであることがハッキリわかるということの他にない。つまり \(\langle a,b\rangle=\langle a',b'\rangle\) となるのが \(a=a'\) かつ \(b=b'\) のときに限るという条件を満たしさえすれば、なにも \(\{\{a\},\{a,b\}\}\) でなくてもいいのだけれど、この定義の単純さと、いまさら新しい定義を考案するまでもないだろうという消極的な理由とから、これが慣例となっている。

いっぽう、ふたつの集合の直積 \(a\times b\) は \(\{\,\langle x,y\rangle\,:\,x\in a,\;y\in b\,\}\) という順序対の集合である。そして \(a\neq \emptyset\) かつ \(b\neq\emptyset\) という条件のもとで \(a\times b=a'\times b'\) となるのは \(a=a'\) かつ \(b=b'\) となるときに限るという意味において、直積集合からも左因子と右因子をきちんと復元できる。ということは、順序対の集合である直積集合も順序対と同様の性質をもっていることになる。直積集合というのは実は \(\{\{x\},\{x,y\}\}\) の形の順序対の集合でなくても、要素どうしの直積集合を要素とする集合であってもかまわないのではないか。つまり、積とは要素の積の集合のことであるとして順序対と積を一緒くたにできそうに思われる。

そこで、集合論ではお馴染の \(\in\)-再帰による定義で \[ a::b=\big\{\,x::y\;\big|\;x\in a,\,y\in b\,\big\} \] という集合の二項演算を考えてみよう。これは \(a\) と \(b\) の直積にちょっとでも似た性質をもつだろうか。

答は否だ。定義から直ちに、任意の集合 \(a\) について \(a::0=0::a=0\) が出てくる。これだけならまだ直積と同じだが、\(a\neq0\) のとき \(a::1=1::a=1\) となる。それに一般に交換法則 \(a::b=b::a\) が成立するので、この演算は順序対としての役割をまったく果さない。まあ、定義上は順序対や直積よりモストフスキ写像との類似が顕著だからそのこと自体は仕方がない。しかしそれにしても、そうなるとこの謎の演算自身の素性に興味が湧いてくる。再帰を使わない特徴づけがありそうにも思うのだけど、いまのところこの演算の正体はよくわからない。

この演算 \(::\) “ころころ” は交換法則と結合法則をみたし、二つの順序数について \[ \alpha::\beta=\min\{\,\alpha,\beta\,\} \] より一般に任意の集合について \[ \mathrm{rank}(a::b)=\min\big\{\,\mathrm{rank}(a),\,\mathrm{rank}(b)\,\big\} \] となることがわかる。この式から、\(a\) が順序数の集合で \(\mathrm{rank}(a)<\beta\) のとき \(a::\{\beta\}=a\) となること、また \(a\) が順序数の集合の集合で \(\mathrm{rank}(a)\leq\beta\) のとき \(a::\{\{\beta\}\}=a\) となること、などがわかる。この考察により、遺伝的有限集合 \(a\in V_\omega\) に対しては遺伝的有限集合 \(b\) を \(a::b=a\) となるようにとれるので \(V_\omega::V_\omega=V_\omega\) である。だが無限ランクの集合については “ころころ” の振舞いはまだわからないことばかりで、たとえば \(H(\omega_1)::H(\omega_1)=H(\omega_1)\) となるかどうか、\(V_{\omega+\omega}::V_{\omega+\omega}=V_{\omega+\omega}\) となるかどうか、これらもまだわからない。なりそうだけどね。

というわけで、とくに「任意の集合は \(a::b\) の形にあらわすことができるか?」という問題の答えがわかったら、誰か教えてください。


2012年2月13日(月)あめ

午前中は修士論文の審査会。

ツイッターでは、基本的に知的な落ち着きのある人をフォローしているつもりなのだが、バレンタインデー直前ともなると、若いユーザの中には言動がおかしくなる人がちらほら出てくる。それでまあ、

「俺はチョコなぞいらん。俺にくれるチョコを用意するくらいならその予算をユニセフなりあしなが共同募金なりに寄付せい」くらい言えませんかね。

と苦言を呈してみたが、そう言ったら言ったで「チョコもらえなかったときのディフェンスですね」と返されることは当然予期される。そこで

言えないなら「俺にチョコをよこせ。本人に返礼はしないがもらったチョコの見積額×1.5をあしなが共同募金に寄付する」でどうだ?

と追い討ちをかけておいた。いやあ本当の話、この時期にチョコやケーキに費やされるお金がすべて あしなが共同募金 に寄付されるようになったら、世の中変わるかもしれませんぜ。

歩数計カウント9,396歩。


2012年2月12日(日)はれ

サクラメント通りの「すき家」で昼食。というのも、子供向けメニューのおまけが「かいけつゾロリ」のおもちゃだからだ。それからコミセンの図書館へ行った。しつこく果心居士の話を探したら、児童書の「民話・伝説」のコーナーの「日本のふしぎ話」とかいう本にあった。このバージョンでは、果心居士はちゃんと松永弾正久秀の奥さんを登場させて怖がらせてくれる。もう少し調べて自分なりにアレンジして子供に話してやろう。


2012年2月11日(土)くもり

はて、どんな日だったか。子供たちの相手をしているあいだに一日が終わってしまったとしか思いだせない。

かがみさんたちが「複素数のノルム」の話をしていた。それに関連してすこし考えたことを書こう。複素数の全体を実数体上2次元のベクトル空間と考えると、その「ノルム」は \[ \begin{gather} \alpha\neq 0\Rightarrow N(\alpha)>0\\ r\in\mathbb{R}\Rightarrow N(r\alpha)=|r|N(\alpha)\\ N(\alpha+\beta)\leq N(\alpha)+N(\beta) \end{gather} \] をみたせば何でもいいという話になりそうなので、\(N(x+iy)=|x|+|y|\) とか \(N(x+iy)=\max\{|x|,|y|\}\) とかでもいいのだけれども、これらに加えて掛け算についての条件 \[ N(\alpha\beta)=N(\alpha)N(\beta) \] を要請すると、\(N(x+iy)=\sqrt{x^2+y^2}\) という普通の絶対値以外には解がないことになる。掛け算を保つというこの条件はなかなか強力で、複素数体 \(\mathbb{C}\) 上の実数値函数 \(N:\mathbb{C}\rightarrow\mathbb{R}\) が \(N(\alpha\beta)=N(\alpha)N(\beta)\) をみたし、少なくとも一箇所でゼロでも1でもない値をとるとすれば、すぐさま \(N(0)=0\) と \(N(1)=1\) がわかる。また、複素数を \(\alpha=re^{i\theta}\) と極座標表示すると、 \(N(\alpha)=N(r)N(e^{i\theta})\) である。ここで \(N(r)\) の部分は、あるゼロでない実数の定数 \(p\) について \(N(r)=r^p\) という形であることはすぐにわかる。あとは、複素数平面上の単位円周 \(|z|=1\) に制限した \(N\) の振舞いがわかればよい。もしも \(N\) が連続関数であるなら、\(N\) のもとでの単位円周の像は実数の乗法群の連結でコンパクトな部分群であるから \(\{1\}\) のほかにない。こうして、複素数平面で定義された掛け算を保ち連続で、ゼロでも1でもない値を少なくとも一箇所でとる実数値関数 \(N\) は \(N(z)=|z|^p\) の形に限ることがわかる。指数 \(p\) の値を知るには、ゼロでなく単位円周上にもないある複素数 \(\alpha\) での値 \(N(\alpha)\) がわかればよい。まとめると、函数 \(N:\mathbb{C}\rightarrow\mathbb{R}\) が \[ \begin{gather} r\in\mathbb{R}\Rightarrow N(r\alpha)=|r|N(\alpha)\\ N(\alpha\beta)=N(\alpha)N(\beta) \end{gather} \] をみたし、かつ連続であるとすれば、\(N(\alpha)=|\alpha|\) と決まってしまう。この意味で、実数の絶対値を拡張するように複素数の絶対値を定めるとしたら、その方法は実質上一種類しかないわけだ。

ついでに言うと、連続性は結局のところ \(|z|=1\) のとき \(N(z)=1\) ということを示すようにしか使われていないので、共役複素数についての \(N(\alpha^*)=N(\alpha)\) という条件に置きかえてもかまわない。これは、写像についての “代数的” な条件の積み重ねが、函数としての連続性をも保証してしまう、いわゆる Automatic Continuity の一例となっている。

3月19日追記: あとで縫田さんに指摘されて気づいたが, 実数 \(r\geq0\) について \(N(r)=r^p\) というところですでに \(N\) の連続性を使っている. ということはここで Automatic Continuity の論点を持ち出すのは言い過ぎの謗りを免れないかもしれない. ただ, 連続性のかわりにノルムの条件の第二式 \(r\in\mathbb{R}\Rightarrow N(rz)=|r|N(z)\) を要請すれば, Automatic Continuity の話により近くなってはくれる.


2012年2月10日(金)くもり

火曜日のトポロジーのテストの第1問は, 平面図形 \(X=\{\,(x,y)\,:\,0\leqq x\leqq1,0\leqq y\leqq 1\,\}\) から \(Y=\{\,(x,y)\,:\,y\geqq0,~1\leqq x^2+y^2\leqq 4\,\}\) への同相写像 \(h:X\to Y\) を与えなさい, というものだった.

図形\(X\)は単位矩形
\(X:~0\leqq x\leqq1,0\leqq y\leqq 1\)

図形\(Y\)はドーナツを半分に切ったような形
\(Y: y\geqq0,~1\leqq x^2+y^2\leqq 4\)

この問題の正解者は24人中ひとりだけだった。仕方がないので、\(X\) と \(Y\) を正しく図示できた人には15点配点のうち5点をあげることにした。式らしいものを書いたひともあまり多くなかった。ツイッターで解答を募っても、式を即答してくれたのは一人だけで、その式もミスタイプを含んでいた。こちらで想定した解答は \[ h(x,y)=\bigl(\,(y+1)\cos\pi x,\;(y+1)\sin\pi x\,\bigr) \] あるいは分数式で \[ h(x,y)=\left(\,(y+1)\frac{2(2x-1)}{1+(2x-1)^2},\;(y+1)\frac{1-(2x-1)^2}{1+(2x-1)^2}\,\right) \] というものだった。で、もちろん、ここで俺は「うちの学生はこんな問題もできません」と言いたいわけではない。もしも問題が、

この図形 \(Y\) について重積分 \( \displaystyle\iint_Y\sqrt{x^2+y^2}\,dxdy \) を計算しなさい

ということだったら、24人のうち半数の12人くらいは \[ \left\{ \begin{aligned} x = & r\cos\theta\\ y = & r\sin\theta \end{aligned} \right.\qquad (1\leqq r\leqq 2,\;0\leqq \theta\leqq \pi) \] という写像で変数変換をして計算してくれたのではないだろうか。これができるということは、図形 \(X\) を図形 \(Y\) に変換する方法のうち少なくとも数式の運用の部分を理解していることを意味する。ところが、その変数変換が同相写像という概念と結びついていない。これは、なんとももったいないことではないか。事実上すべての学生さんは、2年生までに多変数の微積分を勉強している。そこでは変数変換が重要な役割りを果たす。それなりにデキる学生さんなら、至るところヤコビアンが消えない可微分写像が逆写像をもつことを理解しているはず。ところが俺がその知識を活かす方向に議論を導くことに思い至らなかった。表層の多様な現象の背後にある構造を見抜き、一見すると関係のなさそうに見えるあちらとこちらを結びつけるのが数学というものだ。このトポロジーの授業も、位相的な性質を理解するのに代数学の知識が有用であることを示すことを目的としていた。なのに、その授業で俺は同相写像と変数変換を結びつけることができなかった。もったいない。理学部数学科の教師として恥ずかしい。反省せねばらなん。

夕食は茜屋のラーメン。


2012年2月9日(木)くもり

月曜日に書いたことの続き。チューリング機械並みにシンプルな Brainfuck というコンピュータ言語がある。なにしろ言語要素は8種類しかない。あまりに単純で、その仕様のすべてをここに書いてしまうことができる。

Brainf*ck (…正しい綴りをもう一度書く気にならん…) の計算モデルでは、マシンは30,000ワード以上の容量をもつ整数の配列(メモリ空間)にアクセスする。ポインタは一個だけしかなく、初期状態ではアドレス0を指している。またメモリは初期状態ではすべて0になっている。このあたりはチューリング機械と同様だ。

言語要素はつぎの8つだ
> -- ポインタを一つ後のアドレスへ移す
< -- ポインタを一つ前のアドレスへ移す
+ -- ポインタの指すメモリの値を1増やす(インクリメント)
- -- ポインタの指すメモリの値を1減らす(デクリメント)
. -- ポインタの指すメモリの値を出力する
, -- 入力を1ワード受けとり、ポインタの指すメモリに格納する
[ -- ポインタの指すメモリの値がゼロなら、対応する ] の直後へ飛ぶ
] -- ポインタの指すメモリの値がゼロでないなら、対応する [ の直後まで戻る

一見してオモチャのようなものだが、インストラクション [] で規定される制御構造をもつあたり、チューリング機械よりよほど高級でもある。一応チューリング完全ではあるようだ。お約束の Hello, World

>+++++++++[<++++++++>-]<.>+++++++[<++++>-]<+.+++++++..+++.[-]>++++++++[<++
++>-]<.>+++++++++++[<+++++>-]<.>++++++++[<+++>-]<.+++.------.--------.[-]>
++++++++[<++++>-]<+.[-]++++++++++.

となる。むろん、これでは実用にはならない。プログラマのジョークというか、パズル的な楽しみのための言語なのだろう。言語開発者(Urban Müller)の作ったコンパイラはわずか123バイト、インタプリタは98バイトであったという。この Brainf*ck のIDE(笑)が iPad 上にある。App Storeで “BrainF”を検索すれば見つかる。無料。

この言語の8つの言語要素を別の文字列に置きかえた派生言語もいろいろ作られているらしい。ためしに、上の Hello, Worldを別の文字列に置換してみると、

よっ! ととととととととと そいじゃあ おめえさん、とととととととと よっ!
どいたってェわけだ。おめえさん、てやんでェ… よっ! ととととととと そいじゃあ
おめえさん、ととととよっ! どいたってェわけだ。おめえさん、と てやんでェ…
ととととととと てやんでェ… てやんでェ… ととと てやんでェ… そいじゃあ
どいたってェわけだ。よっ!ととととととととそいじゃあ おめえさん、ととととよっ!
どいたってェわけだ。おめえさん、てやんでェ… よっ! ととととととととととと
そいじゃあ おめえさん、とととととよっ! どいたってェわけだ。おめえさん、てやんでェ…
よっ! ととととととととそいじゃあ おめえさん、ととと よっ! どいたってェわけだ。
おめえさん、てやんでェ… ととと てやんでェ… どいたどいたどいたどいたどいたどいた
てやんでェ… どいたどいたどいたどいたどいたどいたどいたどいた てやんでェ… そいじゃあ
どいたってェわけだ。よっ! ととととととととそいじゃあ おめえさん、とととと よっ!
どいたってェわけだ。おめえさん、と てやんでェ… そいじゃあ どいたってェわけだ。
とととととととととと てやんでェ…

とまあ、江戸っ子訛りのハナモゲラ言語のできあがりとなる。


2012年2月8日(水)くもりゆき

月曜日から、次年度の卒業研究と三回生向けセミナーの選択のための研究室訪問ということが行われている。新四回生はあんまり来ないが、新三回生(現二回生)はたくさん来て話を聞いて帰っていく。今日は、高校のころヴィトにハマって基礎論やりたくてこの大学に来たという二回生が研究室訪問に来た。俺の本も読んでくれているらしい。はっきり言って、奇特な人である。ただ、三回生向けにロジックのセミナーをやるつもりは今のところないので、ひとまず自分で勉強するように言って、何冊か本を紹介した。もちろん、真面目な質問なら、随時受けつける。

三回生向けにロジックのセミナーをやらないというのは、学科の正規の授業科目としてやらないという意味と、自主ゼミにつきあう余裕がない、という両方の意味である。三年の前期というのはまだまだ「普通の数学」に勉強すべきものが山ほどある。そこで、三回生向けに授業科目として用意されている「数学セミナーI」では、二年までに勉強してきた線形代数、微積分、集合と位相、という基礎科目を足掛りに「その先」を見とおせるような題材を厳選し、輪読して発表というセミナーの形式を借りて自習してもらう。残念ながら、数理論理学はこの目的にそぐわない。現状では「その先」がひどく限定されてしまうからだ。三年前期にはいろいろな数学の最初のところを広くカジり、後期に専門を絞りこむようにしてほしい。とはいえ、自分で勉強したいという人に「ヤメとけ」とまでは言わない。それどころか、できるだけ支援する。そういうことのひとつもないようでは、大学とはいえない。思えば、俺が田中尚夫先生の『公理的集合論』を読み始めたのも三回生の夏休みからだったように思う。

毎年三回生ゼミのテキスト候補にあげる(が、毎回却下される)竹内外史『線形代数と量子力学』(裳華房)が、今年に限ってけっこう前評判がいいのが面白い。どうなるかわからないが、何人かは俺のゼミを志望してくれそうだ。

またしてもひどく寒い。昼間、窓の外を雪が舞っていた。夜10時前後に歩いて家に帰ったときには、外気温は零度前後だったようだ。歩数計カウント9,897歩。


2012年2月7日(火)くもり

午前中、修士論文発表会。昨年までは審査会のあとに開催していた関係上、発表者の気合いが抜けまくっていた。これではいけないというので、今年からは審査会の前に発表会を開催する。審査会でのプレゼンの練習という位置づけになる。俺は写真とビデオを担当。このごろのビデオカメラのデータはAVCHDとかいう規格らしいが、iMovieやQuickTimeはこれを直接には扱えない。困ったもんだと思っていたが、もちろん困っていたのは俺だけではないわけで、世の人がちゃんと解決策を用意してくれており、App Storeでフリーの変換ソフトを入手できた。ありがたいことだ。

午後はトポロジーの期末テスト。最初の授業には30人ちょっと来ていたが、最終的には24人が期末テストまで残った。まあ、三回生の後期ならこんなものだろうと思う。

ところで、あの石宇哲也さんがついにテニュア(英米の大学の終身在職権)を取ったらしい。めでたい。


2012年2月6日(月)くもり

計算理論がいまだにチューリング機械から始めなければならない理由がよくわからない。数学的なセッティングが記述しやすいからだろうか。たしかに、一般的なオートマトンの理論とのつながりはわかりやすい。けど、話がオートマトンではなく、手続の記述や帰納的関数のほうに行く場合には、チューリング機械は絶望的にめんどくさい。たとえばの話、テープ上の記号列を二進数とみなして割り算するチューリング機械を具体的に記述なんて、する気がしない。非負整数のデータを扱う無限のメモリ空間にアクセスできて、算術演算がインクリメントとデクリメントだけのシンプルなアセンブリ言語風の計算モデルを考えたほうがよほどいいように思った。アセンブリ言語ならチューリング機械よりは扱いやすく、いっぽう、計算モデル自身の算術化も手続き型言語の場合より簡単だ。まあ、それは裏を返せば、チューリング機械より定式化が面倒で、手続型言語より貧弱だということだけど。きょうはなんだか一日じゅう、そういうことを考えていた。

帰宅すると、ラッセルの『数理哲学入門』(1919年)の原著 Bertrand Russell: “Introduction to Mathematical Philosophy” のペーパーバックが届いていた。


2012年2月5日(日)くもり

そんなわけで昨晩は風呂に入らなかった。午前のうちに近所の温泉にでも行こうかと思っていたら、妻が愛媛マラソンを観戦に出かけてしまい、しかもなかなか戻ってこない。子供を連れていくと、【娘】が一人で女湯に行かねばならないので、仕方なしに家でぼっとしている。午後も妻の外出の予定があったので子供と一緒に留守番をするが、妻が戻ってから【娘】を連れて散歩に行った。


2012年2月4日(土)くもり

立春である。春は立ったが、俺は寝た。昨晩の鬼やらいで自分が退治されてしまったんじゃないかと思うくらい、一日じゅうくたばっていた。といって、理由にこれといって心あたりがない。ほとんど寝ていたので歩数計カウントなし。


2012年2月3日(金)はれ

松山にも昨晩から雪が降った。とはいえ、広い松山市のどこでも一様に降ったというわけではなくて、市街地の人たちが次々に「雪だ雪だ」「加藤嘉明が白髭になった」などと掲示板への書き込みやらツイートやらしている夜半ごろも、中心部から4キロほど西へ離れた自宅周辺には、まったく雪らしい雪は降っていなかった。それでも、朝にはこのあたりも少しばかり積もっていた。普段なら眠い寒いねむいさむいとゴネてばかりいる子供らが、雪を見るとパキっと目をさまして大喜びだった。

子供たちの雪玉
通学中に子供らが雪玉を作った
お日さまが射すと、雪はたちまち消えた

午前中はゼミで発表会のリハーサル。だいぶ形になってきたので、次回は再々止めてツッコミを入れながら改善していく第2段階に入ろうと思う。午後はトポロジーの期末試験問題を作る。午後3時すぎから眠くて仕方なくなり、知的な作業ができる状態ではなくなった。5時をまわったので、県立図書館へ小泉八雲の「果心居士のはなし」を探しに行った。一階の「子ども図書室」にあることは調べがついていたが、そちらは5時に閉室してしまっているので、3階の一般図書室で司書のお兄さんにお願いして別の本を見つけてもらった。ほかに「果心居士の幻術」を収めた司馬遼太郎短編全集第4巻などを借りる。それからピアノのレッスンに行く。案の定、ぜんぜん弾けない。

節分とて、夕食はイワシの料理。それから皆で炒り豆を食べて、早めに就寝。歩数計カウント10,862歩。


2012年2月2日(木)くもり

とても寒い。夕方、いつもの医者に行く。時節柄、花粉症の薬も出してもらう。帰り道に書店に寄り、赤間世紀『自然言語処理 教科書』(工学社)、『概念と歴史がわかる 西洋哲学小事典』(ちくま学芸文庫)、それから八木沢敬『分析哲学入門』(講談社選書メチエ)を買う。

歩数計カウント6,684歩。


2012年2月1日(水)はれ

集合論をちゃんと勉強しなきゃいかんなあと思った。「ゲーデルの赤本」を読み進む。先月13日の日記に書いた疑問点については、やはりこの本の体系ではオフィシャルには変数はクラスを表わす変数一種類しか用意されていないことがわかった。ということは、すべての変数や項の「内容」はとりもなおさずクラスだということになり、述語 \(\mathbf{Cls}(x)\) は意味をもたないことになる。(もっとも集合変数とクラス変数を区別する体系にしても、やっぱり \(\mathbf{Cls}(x)\) は意味をもたないことになるのだけど。) いっぽう、述語 \(\mathbf{M}(X)\) はクラス \(X\) が集合でもある、という意味をもつことになり、大事な役割を担うことになる。じっさいこの本で展開される集合論において \(\mathbf{M}(X)\) が頻出するのに比べて、\(\mathbf{Cls}(X)\) は登場する機会がない。

しかしゲーデルの体系では論理式のレヴィ階層の議論は煩雑にならざるを得ないと思う。集合論における再帰理論的観点というのは俺にとって大事な見方なので、その意味でゲーデルのこの体系には不満である。もともとのベルナイスの集合論はどうだったのだろうか。

歩数計をリセットし忘れたせいで、カウントなし。たしか九千歩弱。