妻に 「こくせん〜黒板戦争」 というYouTubeのビデオクリップを見せてから、MacBook Proでの自宅のWi-Fiへの接続がウソのように安定している。いったい何がどうなったのだろう。
午後、子供をコミセンの図書館に連れていき、次に新玉公園に連れていき、さらに土曜夜市最終回の銀天街に連れていった。けっこう歩いたのだが、歩数計をつけていなかった。不覚だ。
先日から考えていた \(\mathbf\Sigma^1_1\) 群について得られた結果はこうだ: 可換ポーランド位相群 \(\bar G\) の \(\mathbf\Sigma^1_1\) 部分群 \(G\) が \(2G=G\) をみたすとすれば, \(\bar G\) の部分群 \(G_1\) と \(G_2\) を次のようにとれる. \(G_1\) はボレル \((\mathbf\Delta^1_1)\) 部分群であり, \(G_2\) はボレル集合によって生成される. そして \(G=G_1\cap G_2\) である. 欲しい結果からはほど遠いし, 今回の結果の延長線上で最終目標に到達できるとも思えない. ともあれ, せめて \(2G=G\) という条件を緩められないか, 引き続き考える.
ツイッターでも書いたこと。数学のテストの問題の決まり文句「求めよ」が嫌いだ。テストにおいて何かを「求めて」いるのは出題者であり、解答者はその求めに応じて解答を「与え」なければならない。「求めなさい」なんて要求があるものか。おそらくは文語の「求む」が口語に置きかえられる過程で何かが捩れてしまったのだろう。それで、俺はこのごろはなるべく「計算しなさい」とか「与えなさい」とか「定めなさい」とか言う。しかし、言葉は生きものであり、移ろいゆくものであるから、俺ひとりが何かを提言したところで流れを変えられるとは思っていない。ただ「頑固なオッサンがおるな」と思われるだけだ。
そのようなことをツイッターでひとしきり呟いていたら「微分方程式で言うところの求積法というのも誤用から始まったんでしょうか?」という鋭い問いかけをもらった。思わぬ角度からの問いで「あとで漢和辞典みて調べておきます」と答えるのが精一杯だったが、NHN-DGKのSMRさんが俺より先に国語大辞典なるもので調べてくれて、江戸時代の和算に「求積」という言葉の用例があるということを知らせてくれた。用例を見てみないと、これが「積を求むること」という意味だったのかどうか即断はできないにせよ、「計算する」という意味で「求める」が古くから使われていた可能性は考慮に入れておかなくてはならない。
ピアノのレッスンはお休み。妻が勤務していた実証実験事業の最終日なので、労をねぎらう意味もあって、夕食はパルティ衣山の「徳川」でお好み焼。妻にしては珍しくチューハイ一杯で酔っぱらってしまっていた。
歯医者で歯石を取ってもらった。思いのほか効果があって、なんか歯だけ若返った感じだ。
海水浴に行きたいような好天。引き続き \(\mathbf\Sigma^1_1\) 群のことを考える。
位相数学の期末テスト。試験監督中はヒマなものだから、久しい以前から考えている問題を思い出して考察していた。
その問題とは, 1次元円環群 \(\mathbb{R}/\mathbb{Z}\) の \(\mathbf\Sigma^1_1\) 部分群はボレル集合で生成できるか? というものだ. Zafrany の古い論文 (Samy Zafrany, “On analytic filters and prefilters,” J.Symb.Logic 55 (1990), 315-322) によると, \(\omega\) 上の \(\mathbf\Sigma^1_1\) フィルターは \(\mathbf\Pi^0_2\) フィルター基によって生成される. これに類似の結果が得られるかどうかを考えたわけだ. 2002年にシャクマトフ教授との共著で出版した論文 (Hiroshi Fujita and Dmitri B. Shakhmatov, “A characterization of compactly generated metric groups,” Proceedings of American Mathematical Society, 131 (2002), 953-961) も, もとはといえばこの問題について考えている過程で得られた部分的な結果から派生したものだった.
これまでに, 1次元円環群 \(\mathbb{R}/\mathbb{Z}\) の \(\mathbf\Sigma^1_1\) 部分群 \(G\) が \(2G=G\) という条件をみたすならば, 直積群 \((\mathbb{R}/\mathbb{Z})\times\mathbb{R}\) のボレル生成部分群に閉部分群として埋めこまれる, という結果を得ていた. これだけではたいしたことではない. それで, 直積因子 \(\mathbb{R}\) に相当する群を \(\mathbb{R}/\mathbb{Z}\) の部分群としてとれないか考えてみた. すると, テスト時間中に, こんなことがわかった. ポーランド位相群 \(G\) が, 代数的にみて, ふたつの \(\mathbf\Sigma^1_1\) 部分群 \(A\) と \(B\) の直積であるなら, じつは \(A\) も \(B\) も閉部分群である.
テストが終って46部の答案紙 (11枚つづり) を作業机に置いて, さてこれを一週間以内に採点するんだよな, と考えてから, まあ数学が捗ること捗ること. テスト用紙の現実逃避促進作用はすばらしい.
子供たちがお休みなので、久々に自宅から徒歩で出勤。午後の3年生ゼミは最終日。どうも今回のテキストは難しすぎたようだ。朝の4年生ゼミは来週もう一回やることにした。
蒸し暑い曇り空で、ときどき雨が降った。
朝、妻に車で職場へ送ってもらいながら「さあ今日も女子学生にモテて来るとしよう」などと戯言を言っていたら、午後になって、本当に受け持ちの1年生女子が二人、微積分の質問をひと山もってやってきて、オフィスの黒板を数式だらけにして1時間後に帰っていった。まあ、それだけのことで、決してモテたというほどモテたわけではないが、それにしても言ってみるものである。明日はひとつ「さあ今日も億万長者になって来るとしよう」などと戯言を言いながら出勤してみようと思う。
夕方、家で、娘が鍵をなくしたのなくしてないのちょっとした騒ぎがあった。それで夕食が遅くなったので、豚しゃぶと鶏ハムで簡単な夕食になった。このごろ、俺が食事の用意をするケースが増えているな。
歩数計カウント10,206歩。
教会学校のキャンプ(夏季学校)のため子供らは教会に一泊する。一日めは奥道後のプールで遊んでジャングル風呂に入ってバーベキュー食って、教会へ戻って聖書の「徴税人のザーカイさんの話」を勉強する。二日めは、教会の近所の公園まで散歩に行って野外礼拝をして、教会に戻ってザーカイさんのことについて発表する、という企画であるらしい。小学生以上対象なので、【息子】は今年が初めての参加。【娘】は4回め。二人ともとても楽しみにしていたイベントだ。
子供たちがキャンプに行ってしまったので、【娘】さん誕生以来10年ぶりにひと晩じゅう夫婦だけの時間となった。といっても、大したことはしない。妻がリラクセーションサロンにマッサージをしてもらいに行っているあいだに俺はジュンク堂書店に行った。そのあと、いよてつ高島屋をすこしうろうろし、三津浜のコーナンへ行って花の苗を買って帰宅。夜は花園町のCafé Cabaretで夕食をとり、妻の希望によりふたたびジュンク堂書店に行って電車で帰宅。家で少し飲み直して寝た。歩数計カウント10,709歩。
きょう買った本は光文社古典新訳文庫の『ツァラトゥストラ』(丘沢静也訳)上下巻と新井仁之『新・フーリエ解析と関数解析学』(培風館, 2010年)。
いままで特に問題なく使えていたMacBook Proだが、Lionにしたとたん、自宅の無線LANから落ちまくるようになり、どうにも使いものにならなくなった。Snow LeopardからLionになってネットワークまわりの設定が何か変ったのには違いないが、自宅の環境のどこがマズいんだろう。「いまの無線LAN環境とかけて、俺と解く」「心はキレやすい」なんて、謎掛けにもならん。
夕方になって急ぎの用ができ、パソコンを持って大学に行かねばならなくなった。大学の自室の無線LANはとても安定している。ともかく、自宅のネットワークがああ不安定になったのでは、もう一度重いパソコンバッグを持って帰る気にもならない。それで、帰りは荷物を最小限度にして、身軽に歩いて帰った。徒歩40分ほど。涼しくなりだした夕暮れ時の散歩としては悪くない。
昼食には一昨日子供に好評だった すだちおろしうどん を再現。簡単で美味いので、妻の実家でも作ってやろうと思う。夕食には夏野菜カレーを作った。どうもこのごろは、土曜日の食事の用意は俺がやるのがデフォルトになりつつある。
なんだかんだでよく歩いた。歩数計カウント15,974歩。
MacBook ProのOSがLionになって、トラックパッドでのスクロール操作の方向が逆になったのはまだいいが、OKIのC5900nプリンタのドライバがダメになったようだ。仕方がないので、「一般的なPostScriptプリンタ」の設定に変更して使う。あと、自宅の無線LAN環境での接続がやたらめっぽう不安定になっている。下手すると一分と接続がもたない。iPadを買った直後にもあったことだが、これ、なんとかしないと使いものにならん。
ピアノのレッスン。いつものことだが力の入れすぎを注意される。試しに三割くらいの力で弾いてみる。ぜんぜん弾いている実感がわかないが、先生はそのほうがよほど綺麗に鳴っているという。実際の必要を越えて力を入れすぎ、逆効果&はた迷惑&すぐ疲れ切ってしまう、というのは、サックスを吹いているときもそうだったし、家事をするときもそうだし、どうやら俺の生きる姿勢として身に染み付いているようだ。なんともやりきれんな。歩数計カウント7,558歩。
Mac OS X が Lion (バージョン10.7) になった。歩数計カウント11,280歩。きょうから子供らが夏休みだ。だが、妻も今月一杯は仕事があるので、朝に昼食の弁当を四人ぶん作って、子供たちには家でおとなしく遊んでいてもらうことにする。きょうはたまたま、俺の授業がない日なので、午前中は子供につきあって、宿題をみてやり、近所の神社に散歩にいき、昼食にすだちおろしうどんなるものを作った。なかなかうまかったので、こんど妻の実家で義父母にも作ってやろうと思う。昼食後仕事に行き、それなりに仕事をする。土用の丑の日だもので、夕食は鰻。蒲焼を4尾も張りこんだので、4人で食っても一匹余ってしまい、明日に回すことに。
歩数計カウント11,280歩。
講義の最終日。一様連続写像の概念を定義して、コンパクト距離空間上の連続写像が一様連続であることを証明し、コンパクト距離空間の開被覆のルベーグ数の存在証明をした。本当はルベーグ数の存在からコンパクト距離空間上での写像の一様連続性を導くほうが無駄がなくていいのだが、ここはテキストにあわせた。そして、ルベーグ数がなぜルベーグ数と呼ばれるのかということに関連して、ルベーグの次元論のアイディアだけ説明して講義を終えた。
ルベーグの次元論のアイディアはこうだ。床にタイルが敷き詰めてあるとしよう:
このときは、タイルの隅を合わせている箇所では4枚のタイルが出会うことになる:
少しずつずらしながら敷き詰める方法もある:
このときは、いくつかの場所で3枚のタイルが出会うことになる:
小さなタイルで広い面積を敷き詰めようとすれば、3枚以上のタイルの出会うところが必ずできる。
各点でタイルが2枚以下でしか出会わないような敷きかたでは、ヘビのように一方向に伸びていくことしかできない。
また、3次元の空間を小さなレンガやブロックで埋め尽そうとすれば、平面的に敷き詰めたブロックを縦に積みあげるわけだから、4個以上のブロックが出会う箇所がどうしても発生する。まさにこうした事情が、平面が2次元で空間が3次元であることのまぎれもない証拠だというのが、ルベーグの着想だった。このアイディアを精製して数学的な次元論を展開する過程で、開被覆のルベーグ数のような道具が必要になったわけさ、ということで、前期の講義をしめくくった。話したのはそこまでだが、実際、この考察を通じて、“任意に与えられた正の数 \(\varepsilon\) について, コンパクト距離空間 \(X\) を半径 \(\varepsilon\) 未満の小さな開集合の有限族 \(\{\,U_i\,:\,i=0,\ldots,n\,\}\) で被覆し, しかも各点が高々 \(d+1\) 個の \(U_i\) にしか含まれないようにできるならば, その距離空間の次元は \(d\) 以下だとしよう,” という次元の定義(ルベーグの被覆次元)に到達する。次元論に限らず、ルベーグ数は位相幾何でいろいろに応用されるのだけど、そういう話は、あらためて後期の位相数学IIでやるのだった。
歩数計カウント10,854歩。
台風6号が来ている. 朝, 暴風警報が出ているのでセミナーをお休みにするが, 自分はとにかくも出勤. 大学についてから確認すると, 朝7時の時点で暴風警報が出ていたら午前中を休講にし, 11時になってまだ暴風警報が解除されていなければ午後も休講にする申し合せがあるそうだ. それで, 午後も休講になったが, 14時40分からの三年生のセミナーの受講者がうっかり来ていたらいけないので, 念のためその時間まで待ってから帰ることにした. ところが, あとで気付いたことだが, 11時30分の時点で学長名で帰宅指示が出たことを知らせるメールが届いていたらしい. ううむ. まあ, セミナーを休みにしたおかげで, 静かな環境でキューネン本の演習問題を3題片づけることができたので, それはそれでいいのだけど.
松山は風ばかり強く, 雨はたいしたことなかった. 15時半ごろ帰宅.
職場の自室の書棚を整理しながらボレル本の捜索を続けたが, ここにもなかった. とすれば, 残るは自宅の一階だ. リビングには子供と妻の持ち物をしまうためのカラーボックスが並んでいる. ここは本来俺の本を置く場所ではない. だからちゃんと探していなかった. 帰宅後, ここに絶対あると信じて【息子】の棚を探索すると, 他のいろいろな書類と一緒にまぎれ込んでいるのがみつかった. よかったよかった. だいぶ間があいたが, そろそろこれを読み終えてルベーグの学位論文に移らなくては.
二階の自室を片づける。半年前にがんばって読んでいたボレルの本 Leçons sur la théorie des fonctions が、このごろ見あたらなくなっている。家か大学にあるはずだが、大学で適当に探して見つからなければ家にあると思い、家で適当に探して見つからなければ大学にあると思う。そういうなげやりな探しかたをしているから、なかなか見つからない。本腰を入れて自室を片付けつつ捜索するが、どうやらここにはないようだ。
むむむ。やはり五日後になるとどんな日だったか思い出せない。日記をサボってはいかんな。せめて食ったものの記録くらい残すべきだった。
朝、散歩がてら、娘をお絵描き教室に連れていく。その足でマクドナルドに寄り、キューネン本の演習問題について考える。ZFの有限個の公理をうまく選ぶと、それら有限個のモデルであるような推移的な真のクラスは必ずZF全体のモデルになる。このことを示せというのが、第V章の演習問題[7]だ。続く演習問題[8]では、集合がZF集合論の推移的モデルになることを意味する式が書き下せることの検証を求められる。第IV章の反映定理からの帰結として、ZF集合論は決して有限個の公理で公理化することはできないのだが、クラスがZFのすべての公理をみたすことのテストは有限個の式のリストでできるというわけだ。
午後は子供二人とコミセンの図書館に行った。コミセンでは、きまぐれ土曜市というのをやっていて、かき氷屋が出ていたのだが、図書館に行っている間に店仕舞いしてしまっていた。子供たちに「あとで買ってやるもんね」と約束していたので、代わりにレディ薬局にいってアイスクリームを買ってやった。歩数計カウント7,535歩。
演習の授業。実数 \(p\) へと一般化された二項係数 \[ \begin{pmatrix}p\\k\end{pmatrix}=\frac{p\,(p-1)\cdots(p-k+1)}{k!} \]を考えると, \(|x|<1\) の範囲で \((1+x)^p\) がマクローリン展開できて, 等式 \[ \big(1+x\big)^p=\sum_{k=0}^\infty\begin{pmatrix}p\\k\end{pmatrix}x^k \]が成立する. そこで小テストでは, \(p=-1/2\) の場合に \[ \begin{pmatrix}-1/2\\k\end{pmatrix}=(-1)^k\frac{(2k)!}{(2^k\cdot k!)^2} \]となるという計算問題をやってもらった. これはつまり連続する奇数の積が \[ 1\times3\times\cdots\times(2k-1) =\frac{1\times2\times3\times4\times\cdots\times(2k-1)\times(2k)}{2\times4\times\cdots\times(2k)} =\frac{(2k)!}{2^k\cdot k!} \]となることに気付けばなんでもない. (そうでなくても, \(k\) にかんする数学的帰納法で証明することもできる.) 連続する奇数の積, 連続する偶数の積はこのように綺麗な式であらわせるが, 3で割ると1余る数の積 \[ 1\times4\times7\times\cdots\times(3k-2) \]や, 3で割ると2余る数の積 \[ 2\times5\times8\times\cdots\times(3k-1) \]をあらわす 簡潔な閉じた式は あるのだろうか.
週末にはMacBook Proを持ち帰ることにしているので、通勤バッグ二つぶんの荷物になる。ピアノ教室に行くために市内電車に乗るが、混んでいるときには、この荷物はちょっと厄介だし、他の乗客にも申しわけない。
で、レッスンの話。いくらTempo Rubatoといっても、一度はメトロノームに合わせた練習をしておかなくてはならない。そうしないと、自由に演奏することができない。自由はおのれの不自由を知り尽すことから始まる、というわけだ。ピアノのレッスンのあとは、小学校へ移動して、イベントに出向いている浴衣姿の妻子と合流して帰宅。歩数計カウント12,196歩。
けさは《数十年ぶりに母の郷里である滋賀県の彦根に行き本家の人々に会う》という夢をみた。その夢で俺が見た町並みは、見てもいない現在の彦根の町並みを反映している理由はないし、幼いころに見てもう朧げにしか思い出せない城下町の古い町並みとも違うだろう。が、この種の夢を見るたびに、まぎれもなく同じ町並みであるように感じられる。これはいったいどうしたことか。
午前のうちに散髪と歯医者に行ったおかげで、お昼前には歩数が7,000歩を越えていた。午後にはそのうえ銀行へ再発行されたキャッシュカードを受け取りに行き、歩いて職場に戻ったりもした。帰りは妻の車で一緒に帰ったのだが、帰宅後に歩いてスーパーに買いものにいったこともあって、最終的には歩数計カウント14,680歩。これくらいになると少しばかり達成感がある。
暑いもんだから、シャツが汗臭くなっていかん。きょうはとくに、そのあたり普段から大雑把な俺でも「このまま教壇に立ってええんかいな」と心配になるくらいだ。それでツイッターでそうつぶやいたら「女子学生が多いクラスならぜひデオドラントを」とアドバイスしてくれる人がいた。とはいえそのような用意もなく、結局そのまま講義に行った。たしかに美人女子学生さん多数ご来場のクラスではあったのだが、教室にはすでに冷房がガンガンかかっていて、汗のニオイが問題になる状況ではなかった。このごろは、牛丼屋なんかに女の子たちがわりかし平気で出入りするようになった反面、女子学生たちに嫌われるような店には、なぜか男子学生たちも近寄らない。俺のクラスがそうなっては大変だ。集合論の未来は、こうしてからくも守られたのだった。
夕方、四年生のN山くんが持ってきた幾何の問題。
問題: \(\triangle\mathrm{ABC}\) の二辺 \(\mathrm{AB}\) と \(\mathrm{AC}\) の長さ, それと \(\mathrm{BC}\) の中点 \(\mathrm{M}\) と \(\mathrm{A}\) を結ぶ線分の長さがわかっているとして, \(\triangle\mathrm{ABC}\) を作図する方法を求む.
三人の四年生と一緒に小一時間考えて複雑な作図法をなんとか考案し、やれやれ解答を清書しようと図を描き直したとたん、あっけないほど簡単な解法に気がついた。
解答: 線分 \(\mathrm{AB}\), \(\mathrm{AC}\), \(\mathrm{AM}\) の長さがそれぞれ \(x\), \(y\) \(\ell\) と指定されたとしよう. 三辺の長さが \(x\), \(y\), \(2\ell\) である三角形を作図する. このとき, 長さ \(x\) の辺の両端点のうち長さ \(2\ell\) の辺に接続している端点を \(\mathrm{A}\), 長さ \(y\) の辺に接続している端点を \(\mathrm{B}\) とし, また長さ \(2\ell\) の辺のもう一つの端点を \(\mathrm{A}'\) と名づける. \(\mathrm{AA}'\) の中点 \(\mathrm{M}\) に向けて \(\mathrm{B}\) から直線を引き, その延長上に \(\mathrm{BM}=\mathrm{MC}\) となるように点 \(\mathrm{C}\) をとれば, この \(\triangle\mathrm{ABC}\) が所求のものである.
三辺の長さが指定された三角形とか線分の中点の作図、それから平行四辺形の性質についてのちょっとした知識は必要だ。それでも、この問題は幾何図形の知識を問うというよりは、視点の自由な転換とヒラメキを試す感じである。N山くんは、教育学部の学生に聞かれたというのだが、大学生向けの問題ではないし、さりとて、作図をともなうのだから、有名私立中学校の入試問題というわけでもなさそうだ。これは問題の出処が気になる。ともあれ、N山くんも俺も面目をほどこし、理学部数学科の未来は、こうしてからくも守られたのだった。
歩数計カウント11,511歩。
はて。どんな日だったっけか。(7月14日記入)
志村さんと縫田さんからキューネン本の演習問題の解答がたくさん届いた。自分はというと、昨日どうにか第IV章の[13]の解答がつけられたが、残る三題がどうも手詰り感ありありになってしまっている。そろそろ第V章へ進むことを考えなくては。
月曜日は夕方17時50分に終わる授業があり、そのあとやれやれと気を取り直して仕事にかかるとどうしても遅くなってしまう。きょうはとうとう帰宅したのが23時近くなったのだが、驚いたことに妻子が帰宅していない。あとで妻に聞いたところでは、仕事の打ち合わせ会が某所であり、宵の口19時からの会合なので子供を連れていったら、22時30分くらいまで会議が伸びてしまったというのだ。当然、妻の車が帰宅したときには子供らは車内で爆睡中。そうと知っていれば、急げば俺が18時過ぎには帰宅でき、子供たちと留守番ができたのだが。
昨日行った「メルヘンアート展」をぜひ妻にも見せたかったので、教会学校のあと行ってみた。スタッフのみなさんは昨日来た俺と【娘】を覚えてくれていた。お昼前のまだお客さんのまばらな時間だったこともあって、とても愛想よくしてくれて、【娘】に のまネコ のぬいぐるみ(昨日他のお客さんにもらったゲームセンターの景品だったそうだが)をくれた。昨日に引き続いて、【娘】は大喜び。いっぽう【息子】は、俺たちが昨日パンダの3階のエスカレータ付近で着ぐるみを見かけたと聞いて、それが気になってしかたがない。だが、昨日見れたものが今日見れるとは限らないのだった。
一日じゅう上天気でとても暑かった。親が外へ出たがらないせいか、公園で遊ぶ子供の姿もまばらだった。
このごろ俺も妻も自分の仕事ばっかりで家のことがおろそかになりがちだ。平日には【娘】と【息子】に夕方まで留守番をさせ、夕食の時間もどうしても不規則になる。それで朝起きるのが遅くなって生活のリズムというものが維持できない。特に、おねえちゃんの【娘】に【息子】の世話を押し付けている格好になっていることが気になっていた。そこへ持ってきて俺がここ数日ちょっと情緒不安定で、聞き分けのよい【娘】にはますます申しわけない。
それで今日の午後は俺が【娘】だけを連れ出し、まずコミセンの図書館へ行き(先週借りた本5冊を【娘】はすぐに読み終えて、借り替えたがっていたのだ)、北斗のかき氷を奢ってやり、それから炎天下を歩いてフジグラン松山へ行った。たまたま5階のギャラリーで「メルヘンアート展メルヘン・イラスト展」とかいうのをやっていた。イラストレーターの はせがわゆうじさん が来ておられ、サイン会が開かれていた。1,050円のレプリカだけど、作品を買うと、サインと、こちらの要望に応じたちょっとしたイラストを描き加えてもらえる。海の動物たちが楽器を演奏しているイラストを買って、【娘】の要望でうさぎの絵を描いてもらい、「【むすめ】ちゃんへ」という一言も入れてもらった。おかげで安いレプリカが世界に一つだけのオリジナルに変身だ。コミセンを出る直前まで、次は高島屋に行こうかジュンク堂に行こうかと話していたくらいで、フジグランに行こうというのはほんの思いつきだったのだけど、来てよかったよ。1階へ戻りちょっとした食材を買いながら「いつも【娘】には我慢させてるから今日はサービスのつもりで連れてきたんよ」と言ったら、「じゃあつぎ【息子】も連れてきてやってね、【息子】もいろいろ我慢してるみたいよ」と【娘】は言う。やさしい奴だ。
きょうの食事は三食とも俺が担当した。朝にピザトースト、昼にやきそば、夜は牛スジの煮物、それに小松菜と油揚の煮びたし。やきそばを作るときに半生の中華スープの素を使って塩だれ的な味つけにしたらなかなかうまかった。
きょうの演習の授業でも計算間違いを何度かやらかしてしまった。最後にはどうにか間違った箇所を見つけて正しい答えを導いたけどな。
きょう届いたJournal of Symbolic Logicの第76巻第2号にMalickiという人の論文が載っている。これはしばらく前に俺が考えていた「可算無限集合の全置換群 \(S_\infty\) のCLI部分群全体のクラスはEffrosのボレル構造の部分集合として \(\mathbf\Pi^1_1\)-完全であろう」という問題を解いたものだった。論文が投稿されたのは2009年の6月とある。俺がこの問題のことをMalickiの師匠であるSlawomir Soleckiに話したのは2008年の9月だ。そのときにSoleckiさんは「なんか自分の元学生のMalickiっていうのが似たような問題をやっているから Fundamenta Mathematicae の最新号あたりを見てごらん」と教えてくれた。言われたとおりの論文を見たら確かに関連した問題を扱ってはいたが、完全なる解決は今回のこの論文でようやく与えられたというわけだ。俺が2008年以後継続して考え続けていたとしても、2009年の時点で解答が得られていたかどうかわからない(そのときはタマちゃんとの共著論文のことで頭が一杯だったし)が、それでも「やられた」という感じはする。俺はつい、自分の考えているトピックなんか誰も興味をもつまい、などと一人合点してしまうが、広い世界には同じようなことを考えている人もいるわけだ。
あ、CLI群というのは距離づけ可能位相群のうちで左不変距離が完備な距離になっているようなもののことです。文献情報は: Maciej Malicki, “On Polish groups admitting a compatible complete left-invariant metric,” Jour. Symb. Logic vol.76, no.2 (June 2011), pp.437-447.
《京都の寺町らしき電器店街へなにか新製品のようなものを買いにわくわくしながら出かけるが, 途中の道が子供とお年寄りでごった返していて, 自転車ではぜんぜん進めない》というよくわからない夢をみて目覚めたら, きょうは47歳の誕生日だ.
子供のころは自分の誕生日が七夕というスペシャルデーであることがなんとなくイヤだった. 「誕生日は?」と聞かれて「4月25日」といえば「なるほど」で話が済むところだが, 「7月7日」というと必ず「へええ, 七夕の生まれなんや」と言われる. 言うほうはいいが, こちらはそのたびに何かちゃんと返事しないといけない(と子供心に思っていた)ので, それがイヤで, 同じ7月でも3日とか5日とか11日とか, なんかこうもうちょっとジェネリックな日に生まれたいものである, とかなんとか思っていた. オッサンになって特に誕生日をどうこう言う人もいなくなってからは少し居直って, そもそも七夕というのは俺の誕生を記念して昭和39年に制定されたイベントなんだよ, とか大嘘を言えるようにもなった. そして, 誕生日ってのはやっぱり自分の命をことほぐ機会として大切なのかもしれん, とも思えるようになった. 一年に一度, 生命力の塊であった赤ちゃんの頃に返って浩然の気を養うのもいいではないか. というわけで, どなたか, 何かいいものをプレゼントしてください.
朝から蒸し暑く, 夕方からまた雨になった. 講義はきょうを含めあと3回で7ページをこなさないといけないが, 雑にすっとばせる内容でもなく, きょうの授業では結局1ページしか進めなかった. どうしたもんか. きょうは妻が仕事で西条へ出向いていて, 帰りが遅くなるというので, 俺が子供らの面倒を見ないといけない. 夕食には牛丼を作ってやった. 子供たちは自分で宿題も片づけ, 明日の学校の用意も自分たちでやった. 子供たちがだんだんしっかりしてきて頼もしい.
さてさて、なかなか解けないIV章の演習問題[27]について考えているうちに, 通常のローカルな従属選択公理(DC)とグローバルなDCとの違いが鍵になっていることに気がついた. 通常のDCは \[ \forall a\forall r\subset a\times a\Big[\, \forall x\in a\exists y\in a\big(\langle x,y\rangle\in r\big) \,\rightarrow\,\exists f:\omega\to a\forall n\in\omega \big(\langle f(n),f(n+1)\rangle\in r\big) \,\Big] \] つまり《極大要素のない関係は無限上昇鎖をもつ》という命題だ. ただし, ここで「関係」は「なんらかの集合上の二項関係」という意味である. これをクラスとしての二項関係に替えたのがグローバルなDCで, 式 \(\varphi(x,y)\) についての \[ \forall x\exists y\varphi(x,y)\,\rightarrow\, \forall x\exists a\exists f\big[\,f\colon\omega\to a\land f(0)=x\land \forall n\in\omega\,\varphi(f(n),f(n+1))\,\big] \] という命題の総称だ. ZFのもとでは両者に違いはない. しかし, 冪集合の公理がない \(\mathrm{ZFC}^*-\mathrm{P}\) といった理論で反映定理を証明しようとすると, どうもグローバルなDCが必要なように思われる. いや, 思われるだけではない. もしも反映定理が成立しているなら, \(\varphi(x,y)\) と \(\forall x\exists y\varphi(x,y)\) の両方を反映する集合 \(A\) をとってきて, \[ \forall x\exists y\varphi(x,y)\,\leftrightarrow\, \forall x\in A\exists y\in A\varphi(x,y) \] となるのだから, 反映定理こそ, ローカルなDCからグローバルなDCを導き出すための決め手になっている. 反映定理があればグローバルなDCが成立する, ということは, グローバルなDCの成立してない世界で反映定理を一般的に確立することは金輪際不可能なのだ. IV章の演習問題[27]というのは, \(\mathrm{ZFC}^*-\mathrm{P}\) で反映定理のあるバージョン(定理7.8)を確立しなさいという問題. グローバルなDCを利用できれば, 収集公理の適用を繰り返すことで冪集合の公理に訴えることなく反映定理(のうち定理7.4に対応するもの)を証明できそうなのだけど, さてそのグローバルなDCは \(\mathrm{ZFC}^*-\mathrm{P}\) で(反映定理に先立って)証明できるんだろうか. あるいは, 定理7.4の類似物を経由することをすっぱり諦めて全然別の方針で進むべきなのだろうか.
荒れ模様の一夜があけて、きょう一日、天気はよかったが、こちらは心身ともに不調だった。理由はハッキリしているのだけどあまりに恥かしい事情なので、ここには書かない。歩数計カウント8,067歩。
一週間以上ストップしていた「て日々」をまとめて更新した。今後は、MathJaxのスクリプトやデータを自分のサーバに置くのをやめて、「なげやりアカデミア」でも「てなさく世界」でも、MathJax本家が用意するWebサービスを利用するようにする。いちいちローカルなサーバを立てなくても編集できるのでずいぶん楽だ。
キューネン本第IV章の演習問題には、よく理解しているつもりの\(\mathrm{ZFC}\)の公理についての意外な結果がいろいろ含まれていて、理解があやふやなところや変な思い込みをしているところが焙り出されてくるようだ。なかなか勉強になる。きょう解答を作った[28]と[29]は、基礎の公理と \(\in\)-帰納法の図式 (キューネン本第III章演習問題[18]で導入された\(\mathrm{AF}^*\)図式) とのよく知られた同値性に、他の公理がどのように関連しているか、という点の反省を促すものだった。結論だけ言えば両者の同値性には「任意の集合が推移閉包をもつ」という命題が深く関わっている。\(\mathrm{ZFC}\) から無限公理を削除すると推移閉包の存在が証明できなくなるが、そのことを示すバーワイズのモデル(問題[29])では、基礎の公理が成立していながら帰納図式は成立しない。いっぽう、基礎の公理のかわりに帰納図式があれば無限公理がなくても推移閉包の存在が証明できる。これは第III章の問題[19]からわかる。
夕方、授業が済んでから大学の自室でもたもたしていたら、夜になってからひどいどしゃぶりの雨になった。夜空を何度も稲妻が走る。こりゃかなわん。それでなかなか帰るふんぎりがつかなかったが、夜9時ごろになっても止む気配がないので仕方なく歩いて帰ることにした。どうせ濡れねずみになるに決まっているので荷物はもたず。革靴をやめてクロックスにはきかえて帰る。途中、巡回するパトカーを何度も見た。この雨では交通に障害が出てもおかしくないからね。おまわりさんも大変だ。
歩数計カウント9043歩。
午前中は妻が【娘】を子規記念博物館へ連れていくという。なんでも「はがき歌講座」なるものが開かれるそうなのだ。【息子】はまだ一年生なので参加できないが、やはり妻が連れて出るというので、俺は大学の仕事部屋で待つことにした。昨晩かがみさんから寄稿された 第VI章の演習問題[17]の解答 を公開し、自分でも第IV章の演習問題[25]の解答を書く。
「はがき歌」というのは、大切な誰かに短歌でメッセージを送ろうというものらしい。【娘】はさっそく従姉弟のリコちゃんアッくんになにか書いたらしい。【娘】なりに、普段なかなか会えない大切な誰か、ということで、真っ先に京都の従姉弟のことを思い出したらしい。ふむふむ。そして【息子】は、あまりよくわからないなりに「誰かに詩のようなリズムのある手紙を書く」というルールを感じとったらしく、パパに宛て手紙を書いてくれたのだけど、その内容が、言うに事欠いて
…パパがいつだったか歌って聴かせた「荒城の月」を覚えていたらしい。これどういう意味かわかる?と聞いたら「天井に、影が映ってて、それが、いつもおんなじなの」「えいこさんがいつも映ってるの」とのことだった。えいこさんって誰かしらないが、なんだかホラーな、貞子さんみたいな存在かもしれない。
いや、【息子】が昨年幼稚園でお世話になった担任の先生は映子先生だったような気もする。
昼飯は束本のガストで久々に四人での外食。それから久米之癒で風呂に入る。そして北久米のスーパー日東で食材を買って帰った。夕食はびんちょうまぐろとはまちの刺身プラス肉味噌のレタス包み。一日楽しかったのだが、いろいろの成り行きで子供らが宿題にとりかかるのが遅くなったのはよくなかった。そりゃ宿題をやるのは本人だが、生活時間の管理については親のわれわれが気をつけなくてやらなくてはならん。
朝から妻が仕事で西条へ行っている。午前のうちに子供をつれてコミセンの図書館へ行く。ひさしぶりに自分の読む本を借りた。はなまるうどんで昼食後、コミセンへ戻り、子供らをこども館で遊ばせる。【息子】はまだまだすべり台やらかくれんぼハウスやらが楽しいようだが、【娘】は図書館で借りた本を読むことに専念している。とはいえ、帰りに寄った幸町公園では【娘】も【息子】と一緒に走り回って遊んでいたので、公園遊びをまるきり卒業するまでにはまだまだ間があるのかもしれない。
基礎の公理を除く \(\mathrm{ZFC}^{-}\) 集合論からの選択公理の独立性を示す「モストフスキとフレンケルのモデル」を扱った第IV章の演習問題[24]の解答を書いた。
朝のうち、10月に京都で開く研究集会のゲストのための宿の手配をする。それと、研究集会の公式情報を発信するウェブサイトも公開した。午後は解析学演習の授業。きょうは冪級数の問題。関数 \(\log(1+x)\) の3階導関数の計算でまごついてしまった。はずかしい。それから、先月21日の日記で「てこずっている」と書いた第IV章の演習問題[20]をどうにか片づけた。難しかったが、それだけに解けると気分がいい。夕方からはピアノのレッスン。