朝から雨だが、授業がある。傘をさして歩いて出かける。まず非常勤の講義では「代表値」の話をした。次に卒業研究ゼミでは整列集合の順序同形写像の一意性などなどを議論した。午後の解析学の講義では連続関数の空間 \(C[a,b]\) が一様ノルムのもとでバナッハ空間であることを証明し、\(L^p\)-ノルムのもとではそうではないので、\(L^p[a,b]\) というもっと大きな関数空間を考える必要があるよという話をした。\(L^p[a,b]\) を杓子定規に関数の集まりと考えるとノルム空間にならない(ゼロでない関数のノルムが0になることがある)ので、どうするか、というあたりの説明がちょっと難しかったかもしれない。
今月こそはおとなしくこぢんまりと過ごしていたいと思っていたが、どうもそうは問屋がおろさぬらしく、明日には来客の予定が入り、来週は出張の予定が入った。おかげでピアノのレッスンをキャンセルせねばならず、医者に行く日をズラさなければならぬ。わはははははは。スケジュール調整なんて俺のキャラじゃないぞ。
午前中は昨日やりきれなかった明日の解析の授業の準備に費やした。午後はいつものカレー作りをした。夕方になってからJR松山駅に行った。この日記に何度か登場している畏友・岩田直樹くんが、なにやらいうオケのビータ(演奏旅行)のために今夜は松山に宿泊するというので、出迎えに行ったのだ。新しくなったJR松山駅で出迎え、ホテル最寄りの電停までいよてつ市内電車で案内して、夕食は一番町の「てまり」に行った。秋刀魚の刺身、じゃこ天、太刀魚巻きなどの瀬戸内の魚料理と愛媛の地酒を岩田くんは大変喜んでくれたので、俺としても連れて行った甲斐があった。昔話で大いに盛り上がった。2軒目は二番町の「エピタフ」に行った。マッキントッシュのアンプとJBLパラゴンというスピーカーを擁する「エピタフ」の完璧なオーディオ環境で、いろいろとリクエストしてレコードをかけてもらって、なかなか幸せな時間をすごした。「エピタフ」のサウンドはプロミュージシャンの岩田くんにも喜んでもらえて、これまた連れて行った甲斐があった。
二人でいろんな話をしたが、岩田くんが言うには、高校時代に俺がテキトーに話した存在と虚無と宇宙をめぐる話がとても印象的で、その後、クラリネット奏者として現代音楽に取り組む際の休符に対する解釈に大いに影響したという。そんなこととは知らなんだ。いやあ、どんな縁で何がどうなるか、わからんもんだねえ。
おかげさまで、二日連続でとても楽しい夜を過ごさせてもらった。人生、いいことなんてなかなかないものだが、今夜のような完璧な夜もたまにはある。人生の潤いだ。昨日といい今日といい、尊敬に値する友人がいるというのは、なんともありがたいことだ。というわけで、明日からまたがんばろう。
さて今日も今日とて午前中は週明けの授業の準備に費やす。こんなペースで大丈夫なのか俺は。
夕方から、ピアノの本番のために歩いて街に出る。8月末にやる予定だった楽器店主催の「大人の音楽会」が台風のため延期されて今日になったのだ。本番がなければろくに練習なんかしないだろうと自覚しているので、こういう機会にはできるだけ出演するように心がけている。今回弾いた曲はロバート・マクスウェルの「ひき潮」だ。これは数々のイージーリスニングの楽団にカヴァーされた名曲なのだが、ピアノソロという演奏形態になると、イージーリスニング路線から多少は逸脱せねばならなくなる。1日火曜日の日記に書いたとおり、今回は居直りの境地で、やりたいようにやらせてもらうぞ、という姿勢で臨んだのだが、なかなかやりたいようにやれないのが本番というものである。今回も緊張してしまって、ピアノの音にビブラートがかかってしまいそうなくらい指が震えた。だが、おかげさまで大きな事故もなく、まあまあの仕上がりで演奏できた。ありがたいことだ。この「大人の音楽会」の常連で毎回素敵なジャズピアノを弾いてくれる玉貫さん(実は松山のジャズシーンの重鎮のひとり)に「腕を上げたねえ」と言ってもらえたのが嬉しかった。だが、玉貫さんはじめ俺以外のみなさんの演奏はもっとすごい。たとえば川村さんがフルートで吹いた「宝島」は、あの難しいリズムをきちんと合わせていたし、パルタジェでなじみの好青年ちょくだい君のチャイコフスキーはダイナミックで圧倒的だった。目の不自由そうな佐々木さんの演奏する「Wの悲劇」は大好きな曲だけに心に染みた。おかげさまで、なにしろ楽しい時間であった。
さて、終演後はちょくだい君を誘ってパルタジェに移動した。おりしもパルタジェはディナーの予約の5人グループと初めての3人グループがご来店で、ワンオペの店主カズノさんはてんてこ舞いだった。そういうとき俺は非常勤職員としてヘルプに入ってグラス洗いやら何やらを手伝う。それでまあずいぶん帰りが遅くなったが、今日一日をなんだかんだ頑張れたのが、自分でも嬉しい。いや、本当を言うと週明けの授業の準備は完了していないのだけど、今晩よく寝て、明日なんとかしましょう。
先月の休日出勤の代休を取った。午前中はまず野暮用を済ませに郵便局と銀行ATMに行き、それからの時間は月曜の非常勤の授業のスライドをいじる作業にあてた。午後にはいつもの集合論Zoomゼミをやった。超限帰納法と超限再帰による順序数上の関数の定義という重要テーマなので丁寧にやってもらった。
夕方からはいつものカレー作り。ご飯を炊いて夕食はカレーライスだ。
午後には解析学の講義の2回目をやる。予定どおり関数空間でのヘルダーの不等式とミンコフスキーの不等式を証明し、それぞれの有限和バージョンを練習問題として出した。次に、ノルム空間の文脈でのコーシー列と完備性の定義をして、連続関数の空間 \(C[a,b]\) が \(L^p\)-ノルムのもとでは完備でないことを示す例を述べた。次回は \(C[a,b]\) が一様ノルムのもとで完備であること、数列空間 \(\ell^p\) と \(\ell^\infty\)、それから関数空間 \(L^p[a,b]\) といったバナッハ空間の例を紹介する予定。\(L^p\) 空間の完備性を証明するかどうか、まだ検討中。
講義の時間以外は、数学教室が来月開催する公開講座の準備や教室のホームページの更新などなどをこまごまとやった。
午後から雨が降って、だいぶ涼しい日になった。これから1週間ほどはあまり天気がよくないようだ。まあ、季節の変わり目ってものはそういうものだわな。
さしあたり昨日言っていたとおりの明日の講義の準備をどうにか済ませた。本当は月曜の授業の準備も済ませたいのだが、なかなか集中が続かない。こんなだから、いつもヒーヒー言ってなきゃならなくなるのだ。
夜遅く、YouTubeでたわむれに「日本列島ズバリリクエスト」を検索したら、1979年2月17日の諸口あきらの放送の録音がみつかって、この日は俺は聴いていなかったとは思うが、CMからニュースから、すべてが懐かしくて嬉しかった。10代なかばの頃の俺はラジオが大好きだった。親にせびって買ってもらったナショナルのクーガー113とかいうBCLラジオ (なんという古い言葉だ!!) で KBS (というのは韓国の国営放送ではなくて京都のかつての近畿放送) やNHK-FMを聴くのが本当に好きだった。そのせいか、いまだにぼんやりと音楽を聴くのが好きすぎて、ちっとも仕事がはかどらない。
とはいえ Tomorrow is another day. (また明日がある)
きょうも天気がよい。午前中は家で昨日の授業を振り返り、講義ノートを更新した。明後日には解析学の講義の2回目でヘルダーの不等式とミンコフスキーの不等式の証明をし、\(L^p\) 空間の定義をしなければならない。毎度のことながら自転車操業である。
午後には三年生ゼミがある。初回なのでテキストを決めねばならんのだが、受講者4人のうち1人がしばらく待っても現れない。あとの3人にテキストを決めさせ、最初のいくつかのセクションをコピーさせ、今回はそれで解散になった。テキストは島田茂『数学教師のための問題集』(共立出版, 1990年/2021年)となった。これは本来なら中学・高校の数学教師、あるいは教師を目指している人のための本である。われわれのコースでは、皆が皆教職を志望しているわけではない。だが、この三年生ゼミの目的は、テキストを読み込みその内容を自分のものにして人前で発表する(聴いている者は自分の理解に照らしてその発表を吟味する)ゼミの基本スキルを身につけようということだから、数学の内容としては敢えて初等的なものを選ぶという選択肢もあるのだ。
夜はピアノのレッスンに行く。自分の練習不足を棚に上げて敢えて言えば、うちの電子ピアノではなかなか表現が追いつかないということもあるので、本物のグランドピアノを弾けるレッスンの時間はたいへん貴重だ。今日が次の土曜日の本番直前のレッスンということになる。まだ拙く危なっかしいところは多々あるが、それはそういうものとして、未熟でも下手でも弾きたいように弾かせてもらう、下手でも聴いてもらう。本番はそういう心持ちで行くことにする。しかし、「最後のフェルマータの音を俯いて弾いたなら、響いている間は俯いたままで、音を切るまで顔を上げないほうがいいですよ」と先生に指摘されたのは完全に盲点だった。