て日々

2023年5月

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きょうは解析学の中間テストを午後にするため午前中は授業をしない。それで市役所と郵便局へ用事を済ませに出かけた。《三番町ガーデンプレイスカフェ》改め《喫茶まんまみーあ》に久々に立ち寄ったら、この前に行ったとき(記録に残っている限りでは1年半ほど前)は250円だったコーヒーが300円になっていた。

解析学の中間テストはさほど広くもない部屋に60人ほど入っていて、蒸し暑くてかなわなかった。病欠の人が4人もいたので再試験をせねばならん。そのあとは大学院の数理情報基礎の授業。さらにそのあと帰宅して集合論のZoomゼミ。さらにさらにその後は、来週の集中講義の講義ノートにいわゆる「蛇の補題」の証明を書き足し、他にもいくつかの修正を加えて、これで代数パートの完成ということにした。

午前中、嘉田勝さんのテルミンと榊ひかりさんのピアノのユニット《ステラウインド》が京都のトロッコ嵯峨駅19世紀ホールで演奏するライブをYouTubeで視聴。テルミンとベーゼンドルファーという意外な組合せがなかなかよく合っている。嘉田さんのオリジナル曲「暁」が素敵だった。

午後は講義ノート(代数パート)の校正。誤記や表現のまずいところを見つけるには、書いてすぐよりは、数日置いたほうがいいのだ。んで、集合論パートをどうするか、ひきつづき考える。

夜にピアノの本番。教室の発表会ではなく、趣味で音楽を楽しむ人たちのために楽器店が主催する「大人の音楽会」というやつで、おのずから演奏のレベルも高い。とても俺ごときの出る幕ではないのだが、毎回素敵なジャズピアノを弾く玉貫さんの演奏を聴きたいばっかりに、今回もエントリーした。自分の出しものは、ビートルズの “Here, There and Everywhere” だ。以前から利用しているフィリップ・ケヴレンのアレンジを弾いたが、昨年の発表会同様、練習不足で思うように表現できない悔いばかりが残った。今回は出演者が多かった。プロコフィエフの戦争ソナタとかラヴェルの嬰ヘ短調のソナタとかが生で聴けたのは嬉しい。さっきも言ったとおり、全体に演奏のレベルが高くて、俺ごときがこんなところに出してもらっていいんだろうか、という感じであった。

午後には大学院のゼミ。確率積分の伊藤の公式を微分形式の形に書くという話。定義だけだと何でもないようだが、いろいろ応用ができて面白い。たとえば伊藤過程 \(\{X_t\}_{t\geq0}\) と \(\{Y_t\}_{t\geq0}\) の積の微分の公式 \[ d(X_tY_t)=X_tdY_t+Y_tdX_t+dX_t\cdot dY_t \] を証明するのにも伊藤の公式が使われる。

マーティンの公理 \(\mathbf{MA}_{\aleph_1}\) のもとでサイズ \(\aleph_1\) のチェイスの条件をみたすアーベル群がすべてホワイトヘッド群になる証明をTeX打ちした。講義ノートのうち、ホワイトヘッドの問題を扱う代数的なパートは、細かい直しは別にして一応はこれで作れたことになる。(いや、本当は蛇の補題の証明をTeX打ちせにゃならんのだけど。) それと、集合論的なパートをどうするかをこれから考えねばならんが、まあいったん頭を休ませよう。

朝4時前に目が覚めてしまったので、昨日考えた内容、つまり \(\mathbf{V}=\mathbf{L}\) のときにサイズ \(\aleph_1\) のホワイトヘッド群がすべて自由アーベル群になる証明をTeXで講義ノートに入力した。一段落したら5時半ごろになっていたので朝食をとってからひと休みした。きょうは午前と午後にリモート会議がある。それだけなら大学へ出かけるまでもないのだが、朝のうちに自転車で大学へ行く。よく考えれば、来週月曜日にやる解析学の中間テストを印刷に回したり、図書室で文献を探したり、大学でやることもいろいろあるのだ。そのいろいろの用事の合間に、今度はマーティンの公理 \(\mathbf{MA}_{\aleph_1}\) のもとでサイズ \(\aleph_1\) の自由でないホワイトヘッド群が存在する証明を読んでいろいろ考える。

歩いて大学へ行く。午後はまず卒業研究ゼミ。前回までとは路線の異なるプログラミング言語風の計算モデルを検討した。それからいくつか書類仕事をして、夕方には \(\mathbf{V}=\mathbf{L}\) のときサイズ \(\aleph_1\) のホワイトヘッド群がすべて自由アーベル群になることの証明を復習した。そもそもダイアモンド原理のバリエーションの復習から始める必要があったが、それはまあ昔とった杵柄であるから大丈夫。肝心の証明のほうは、難しいとは思わなかったが、人さまに見せる講義ノートを書くにはまだ少し消化不良といったところ。

夜はピアノのレッスン。週末の本番の直前のレッスンなので、心構えについてのアドバイスをいろいろ頂戴した。まあ、普段が普段だから、本番でたいして上手に弾けるとは自分でも思っていないが、小さくまとまったケチな演奏だけはしたくない。そういう気持ちで週末まで自主練習に取り組む所存。

月曜日のお約束で、解析学の講義と演習と、大学院の数理情報基礎の授業がある。その合間をぬってグリフィスの例の構成をTeX入力。これが済めば、次はいよいよ独立性証明の詳細に突入ということになる。夕方からは集合論のZoomセミナーなのだが、きょうの内容はゲーデルの不完全性定理をめぐる「お話」に終始したので、ちと隔靴掻痒であった。

きょうも集中講義の準備。シュタインの定理の証明をTeX入力し、関連する考察をつけ加える。続いてチェイスの条件について書き、グリフィスの例を考察する。なんとも巧妙な構成である。

昨晩は飲んで帰ったから夜なべなんかする気はなかったのだが、日付けが替わって夜の2時ごろになんとなく目が覚めてぼんやり考えていると、昨日の昼間に思いついた証明のアイデアがうまくいきそうだわかって、5時くらいまでいろいろの計算をした。そのあと3時間ほど寝たから今朝のスタートは遅かったが、ともかくそのノートの内容をTeX化するのに午前中を費やした。清書してみると、たしかにうまくいっているが、どうでもいいような細かいチェックをたくさんせねばならず、ずいぶん長くなってしまった。まあ、それはそれで仕方ないか。

午後は散歩に出て、カフェで「可算なホワイトヘッド群は自由アーベル群である」というシュタインの定理の証明のノートを取った。一色楽器に立ち寄ったら、奇遇にも、俺が使っているのと同じビュッフェ・クランポンのテナーサックスBC8402を、若い女性2人が1本ずつお買い上げなさるタイミングだった。

午前中は家で集中講義のノート作りを少しだけ進めた。しかしこれはだいぶマキを入れないと間に合わないぞ。午後の大学院ゼミでは確率積分に関する伊藤の公式の証明が完了した。またまたやっかいな計算をいくつもやった。

その後、久々にTGSAセミナーが開かれた。今回の講演者はこの3月に定年退職された土屋さんで、数値解析における有限要素法と幾何学との関係を探求するという話だった。TGSAセミナーのあとは例によってアミティエでの会食。

ほろ酔い加減で帰宅すると、数学セミナーの拙稿掲載号が届いていた。自分の原稿はともかく他の人の記事が充実していて楽しい。

朝、少し早めに出発して職場の定期検診に行った。血液検査等々の結果は後日わかるとして、体重と腹囲が順調に成長している気がする。これはマズい。

集中講義のノート作り、きょうはもっぱら昨日考えた部分をパソコンでTeX化する作業をしたのだが、プッシュアウトの性質に関して昨日一箇所ひどい思い違いをしていたのに気付いた。プッシュアウトの上辺が全射なら下辺も全射であるというのは一般の圏で成立する話だが、俺はこれを、上辺が単射なら下辺も単射、という形で使っていたのだ。俺としたことが、全射と単射を取り違えていたというか、プッシュアウトとプルバックを取り違えていたというか。それで一時、頭を抱えたのだけれど、冷静に考えてみると、アーベル群の圏では実際にプッシュアウトの上辺が単射なら下辺も単射になることが証明できて、結果オーライとなった。次に可算なホワイトヘッド群が自由アーベル群になる証明を理解するには \((B,\mathbb{Z})\)-群という概念を理解せねばならない。これがちょっとややこしいので、いくつか簡単な実例を計算してみた。

その他、書類仕事などを片付けていたら、昼メシを食うのをすっかり忘れていたことに夕方になって気づいた。定期検診のあと、朝の9時前に遅めの朝食をとってから午後5時まで何も食っていない。どうも腹が減ると思った。

昨日の続き。詰まっていたところは、アーベル群のプッシュアウトに特有の性質を考慮することでうまくいった。逆向きの証明については、参考文献に間違いというか不正確な記述があって、ワークアラウンドに手間どった。いろいろ考えているうちに、たとえば自由アーベル群の有限生成純粋部分群が直和因子になることの証明とかを思いついたが、結局これは使いどころがなかった。ともあれ、すべての短完全系列 \(0\rightarrow\mathbb{Z}\to B\to A\to 0\) がスプリットすることと \(\mathrm{Ext}(A,\mathbb{Z})=0\) であることの同値性はどうにか理解できた。次には可算なホワイトヘッド群が自由アーベル群になるという定理の証明に挑戦する。

ところで、先日から短完全系列 \(0\rightarrow\mathbb{Z}\to B\to A\to 0\) を \(A\) の \(\mathbb{Z}\)-拡大と呼んでいたが、これは \(\mathbb{Z}\) の \(A\) による拡大というのが正しいらしい。

卒業研究ゼミでは、テキストの記述の粒度と演習問題の要求レベルとのギャップの大きさに困らされた。夜はピアノのレッスンで、本番が近いこともあって表現のことをいろいろ指摘された。集中講義の準備については、Extの定義がちゃんと定義になっていることの検証などなどを書いたが、\(A\)のすべての\(\mathbb{Z}\)-拡大 \(0\rightarrow\mathbb{Z}\to B\to A\to 0\) がスプリットすることと \(\mathrm{Ext}(A,\mathbb{Z})=0\) であることの同値性の証明でちょっと詰まってしまった。プッシュアウトを取ってどーたらこーたら、という話の流れだったので、せっかくならプッシュアウトの性質だけで話が済まないかと思ったのがまずかったのかもしれない。

前期の月曜日は授業3コマ。解析学の講義は、級数の一般論をなんとかひとコマで済ませようという無謀な試みで、実際やってみると、ちょっと時間配分がまずかった。そして、夕方には集合論のZoomセミナー。ゆっくりだが、着実に進行しているので、これはこれでよい。集中講義の講義ノート作りも少し進めた。こちらもサボらずに続けよう。とにかく、今月後半はなんだかやることが多いのだ。

昨日に引き続き集中講義のためにアーベル群論の勉強。懸案だった補題がひとつ片付いたので講義ノート作りを始めることにした。たしか数年前に「アーベル群自習帖」というのを作っていて、PDFをプリントアウトしたものだけは残っているが、TeXファイルもPDFファイルも見つからない。これがあれば多少楽ができると思ったんだが、まあ仕方がないな。きょうはひとまず「自由アーベル群の部分群はまた自由アーベル群である」「自由アーベル群はホワイトヘッド群である」「ホワイトヘッド群の部分群はホワイトヘッド群である」などなどの証明と、それに必要ないろいろの定義を書いた。

集中講義の準備のため、アーベル群論の文献を読む。なかなか進捗がなく苦しいが、まあ自業自得である。

金曜の午後にはいつものように大学院のゼミをやる。確率積分にかんする伊藤の公式の証明にとりかかる。ややこしい計算をたくさんこなさねばならないが、基本のアイデアは明快に思われる。

午前中、参考文献を読みながら、6月の集中講義の準備をする。これは頑張らんと間に合わんぞ。午後には学部のなんちゃら委員会のリモート会議。この委員会でもひと仕事うけ負っていて、今月の後半はなおのこと忙しくなりそうだ。

高校の吹奏楽部OB会から、60周年記念演奏会の連絡が回ってきた。12月の日曜日の開催なので、非常勤の講義を含む翌月曜日の午前の仕事を休まねば、ちょっと参加できそうにない。記念演奏会は10年に一度の機会なのだが、さてどうしたものか。

天気がよく暖かい。外を歩いたら少し汗をかいた。来月の集中講義の出張のための宿をスマホで予約。これまではいちいち旅行代理店に行っていたが、今回は簡単に済ませる。

朝一番に教室のリモート会議。午後の卒業研究ゼミはプッシュダウン・オートマトンとチューリング・マシンの定義と例。それからチューリング・マシンの停止問題が計算不能であることの証明。テキストに記載された証明がちょっと変だったので、修正した証明を伝えた。3人のゼミ生のうち1人が病欠なので、演習問題は次回に延期。ゼミが早く終わったので、書類仕事を少し片付けた。

夜はピアノのレッスン。どうしても練習不足が音に出る。恥ずかしい。本番も近いんだからもっと真剣にやらねば。ピアノに限らず何につけ、俺はこのごろダラケすぎで、毎日を虚しく送っている。それはどこまでも自分のせいなのに、「虚しい、つまらん」などと文句を言ってるんだから仕方がない。

月曜の朝は解析学の講義。連続関数の列の一様収束極限がまた連続関数になることの証明。午後にそれに関連した演習。連休明けだからかどうか、俺も学生たちも調子が出ない。そのあとはいつもどおり、大学院の数理情報基礎の授業と、集合論のZoomセミナーがある。Zoomセミナーでは有理数の有限列全体の辞書式順序づけについて考えた。反射律、反対称律、推移律まで検証したところで時間切れ。

朝からずっと雨である。『明解 量子重力理論入門』を昨晩第2章まで読んだので、引き続き第3章と第4章を読む。この本は、ブルーバックスとかの啓蒙書によくある例え話だけの説明ではなく、数式がけっこうたくさん出てくる。かといって、数式の細部まで読み込んで深く理解しようという専門書でもなく、その両者の中間あたりの段階でガイドブックたろうとしている。決して易しくはないが、俺にはたいへん面白い。

雨である。一日じゅう家でダラダラしている。ひさびさの休肝日。

カルロ・ロヴェッリ『世界は「関係」でできている』(冨永星 訳、NHK出版)をようやく読了。2日火曜日に同じ著者の『時間は存在しない』(冨永星 訳、NHK出版)を読み終えて、すぐにこちらにとりかかった。さほど分厚い本でもないのに、読み終えるのに4日もかかっている。集中が続かず、すぐに本をバッグに入れて遊びに行ったりしてしまうせいで、ずいぶん時間がかかった。

読んでみれば、面白く、いろいろ考えさせられる本だった。われわれはものを考えるとき、出来事の入れ物としての時空や、関係のプレイヤーとしての主体を、ついつい前提してしまうが、現代物理学の観点からすれば、この見方は逆転される。時空は出来事のネットワークとして結果的に立ち上がってくるものであり、われわれが実体と呼んでいるものも諸関係の結節点(ノード)として関係のなかでのみ立ち現われる。ロヴェッリも本のなかでナーガールジュナ(龍樹)を引用しているように、なんだか仏教的・東洋的な話になってきているのだ。

さて次には吉田伸夫『明解 量子重力理論入門』(講談社)を手にとる。現代物理学の示唆する時空の構造について、もう少し知りたいからね。

とくに用もないが電車で三津へ行った。波止場でぼんやり海を見たり、水産卸売市場前で電線に止まる鳶を間近に見たり、渡船に乗ったり。のんびりした時間を過ごせてよかった。

午後、歩いて出かける。カズノさんの店に行った。珍しく祝日に営業しているとあって、店はいつもより賑やかで、とてもかわいい犬や猫の絵の展示をしていた。それに、偶然にもナンポーさんに会えた。なんでも、今夜は市民会館でアルフィーの公演があるらしく、ナンポーさんは親戚のお姉さんに頼まれて追っかけの代理のようなことをしに行くのだそうだ。ナンポーさんお気に入りの居酒屋の情報や、テラさんやカズミツの噂も聞けてよかったが、持っていった本はあんまり読めなかった。

きょうの昼飯は一緒にしたいと娘がいうので、俺がピーマンの肉詰めを作った。昼飯を食った娘はバスで京都へ戻っていった。俺は夕方から地下BALでO内夫婦と一緒に飲む。例年の憲法集会を終えた県議・市議たち数名がウチアゲにやってきたので挨拶をする。だいぶ昔の話になるが、松山ウィンドオーケストラに所属していた頃に、この集会にアトラクションで出演させてもらったことがある。議員さんたちは地下BALで少し時間を過ごしたあと黒船に蕎麦を食べに出かけた。俺たちは地下BALに残る。しかし、その後、とある町の町議から、二番町のキーポンに行くけど来ませんかとFacebookのメッセンジャー経由で誘われた。行ってみると、市議が2人増えて、県議1人+市議3人+町議1人+マネージャー的な立ち位置の人1人に、俺と日野さんが加わる8人編成となった。憲法記念日にちなんでいろいろな話をしたが、市議たちが漱石の『坊っちゃん』をろくに読んでいないと知ったのは、ちょっと残念だった。まあこういうこと言うとブーメランになりかねないけど、松山の文化を云々する立場にある人なら、これだけは読んでほしい。

朝食にホットドッグを作って娘と二人で食う。午後には娘は友達と遊びに出かける。俺は大学へ卒業研究セミナーをやりに行く。セミナーは第2章を済ませて第3章の有限オートマトンの議論に入った。集合や論理を扱った抽象的な第2章よりも、オートマトンの状態遷移などなどを議論する第3章のほうが、ゼミ生たちには面白いらしい。まあ、無理もないことだ。

連休とてピアノのレッスンはお休み。

連休はカレンダーどおりで、今日と明日は普通に授業がある。きょうの午前中は解析学の講義。関数列の各点収束と一様収束について事例を挙げながら説明。午後にはその演習。それから大学院の数理情報基礎の授業。夜には集合論のZoomセミナー。

珍しく娘が帰省してきた。が、こちらに住む友達と久々に遊ぶのが優先で、ろくに実家にはいない。まあ、元気なのは結構なことだ。