て日々

2019年9月

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明るい日射しは夏を思わせるが、その一方で秋らしい風が吹いている。きょうは一日エアコンなしで過ごせた。

給料日とて、いつもの資金移動。給料は貰ったというより預かったと思ったほうが腹が立たぬ。

そろそろ科研費の申請書類も書かねばならず、共著論文のことも考えねばならず、連載原稿も書かねばならず、新著のことも気がかりであり、あれもあり、これもあり、あれもせにゃならず、これもせにゃならぬ。まあ、生きてる証拠ではある。

連休に挟まれた週なのでピアノのレッスンはお休み。20時半ごろにいつもの Garakta Cafe & Bar に行ったら「21時ごろに開けます」との看板が出ていた。仕方がないから近くのジュンク堂書店で時間を潰したのだが、ついつい Garakta の2〜3杯分くらいを書籍代に費してしまった。21時前に改めて行ってみたら、火曜日とは思えぬお客さんの入りで、23時過ぎまで飲んで喋って、なかなか楽しかった。

すでに「て日々」からのリンクすらなくなっているが、「てなさく世界」本体のメンテナンスをした。《サポートセンター》を更新して自己紹介文を現状に合わせ、検索フォームや古くなった更新履歴を削除し、実験的に置いていたページを消した。tenasaku.comドメインを取得して以来の古いメールアドレス tenasaku _at_ tenasaku _dot_ com を廃止した。この5年ほど使っていないし、スパムまみれだし。

更新した《サポートセンター》のレイアウトが崩れてるかもしれない。スタイルシートの手入れをする気力が足りなかったのだ。ごめん。ちょっと待ってね。

午後、県立図書館へ行った。ほとんど読めなかったが前回借りた本を返して、アンリ・ベルクソンに関するものを中心に新たに5冊借りる。

午後、久々に城山に登ってみた。観光客はちょっと少なめだった。日差しは強いが、日陰に入ると風があって涼しい。登りは県庁裏からだが降りは東雲口へ降りた。ロープウェイ街、一番町と歩いて、堀之内公園に寄ってから帰宅。それなりに汗をかいたのでシャワーを浴びる。夕方、妻が倅の荷物をとりに来たが、これは本人が来るべきだと思った。

夜は第12回関西すうがく徒のつどいの運営会議。Skypeを使う。前回まではチャット機能で文字ベースで会議していたけれど、第12回つどいの会議は通話を使うらしい。俺は電話が好きでないからこんなことを思うのかもしれんが、通話による会議はなんだか照れ臭いような不思議な感覚だ。毎度のことだが、いろいろのことがテキパキと決まっていくのを傍で(いや、今回は少し口を挟んだけれど)見ていて、若い連中の優秀さを感じる。

ところで、このようにテキパキと事が進む背景に、過去11回の「つどい」のノウハウの蓄積があることも、忘れてはいけない。初回の「つどい」を立案して軌道に乗せた初期メンバーには、テキパキした要領のよさとは別の能力が必要だったはずだと、いまでは思う。いろいろな優秀さをもった若い連中と知り合えて、おっさんとしては嬉しい限りだ。

第1回「つどい」が開かれた7年半前と比較して、SNSを媒介とした数学コミュニティの広がりは、今ではとても大きくなり、「つどい」や「数学カフェ」の他に 「裏難波大學」 「ロマ数」 「数学デー」 などなど、勉強会もずいぶん多様になった。俺としては、「老害」にならないように気をつけながら、そうした多様な勉強会の行く末を見守っていきたいと思っている。

いま使っているDynabook、通称《物書きパソコン》は、なぜか内蔵マイクが使えない。今回のSkype会議では外付けUSBウェブカムを接続してしのいだが、次回までにマイクつきのヘッドセットを用意しておかねばならない。

倅くん、きょうは明日の運動会の会場準備のため午前中登校する。午後には塾もある。妻によると、俺のところにいたほうが朝なんかでもちゃんと起床できるみたいだから、今晩もそっちに泊めてやってくれとのこと。そんなわけで俺が倅の三食の面倒をみる。まあ、俺のほうも、こういうことでもないと、食事が簡素になりすぎていけない。おひとりさまだと、三度三度の食事の準備をがんばるのはちょっと割に合わないのだ。しかし、そこへ倅でもいれば、もうちょっとなんとかしようという気になる。

午後、少しだけ用があって大学へ行く。夏の名残の暑さを感じたり、風の涼しさに秋を感じたり、このごろ季節感が一定しないが、9月も半ばとなり、日は確実に短かくなっている。

夜、もらいものの葡萄のおすそわけをもって Garakta Cafe & Bar に行った。週末なのにお客さんが少なく、静かなもんだった。待ってりゃ誰か来るだろうと、22時過ぎまで、ウイスキーを4杯ほど飲んで粘ったが、結局、店は静かなままだった。帰り道、堀之内公園のベンチに腰掛けて、涼しい夜風にあたってリラックスする。どこかで誰かがギターを弾いている。そのまんま、ジョビンの《コルコヴァード》の世界である。

真夜中近くなって、アパートに妻が倅を連れてきた。いろいろの事情で、今夜もこっちで預からにゃならぬ。

普段より早めに起きて朝食を作り、倅を駅まで送っていく。

なんだかんだ言って暑いが、真夏よりはいくぶん涼しい。午後は大学に出向き、事務的な書類を書いたり、懸案になっている共著論文の原稿を検討したり、学生と面談したり。夜にはまた倅が泊まりに来る。これは倅が母親と喧嘩して家出したとかそういうことではなく、妻の仕事のスケジュールなどなど、いろいろの事情があるのだ。

夜、倅が泊まりに来た。宿題をする倅の傍らで、サマースクールの講義録(これは5人の共著で本になり来春には出版される)の原稿を直す。

数学をちゃんとやらねばならんと思いつつも、すっかり焼きが回った感じでやりきれない。午後に会議。夜にピアノのレッスン。発表会の曲の譜読み。ひとまずゆっくりさらう。

松山での日常に復帰。といってもキャンパスは静かなもの。いくつかメールをやりとりし、いくつか事務手続きを済ませ、いくつか原稿を読む。

半年前に書き終えたつもりだったサマースクール講義録用の原稿だが、講演を済ませてみると、書き直したい点がいくつか見つかった。もう一冊の本もいいかげん仕上げねばならん。「つどい」や「数学カフェ」などの活動にもお誘いを頂戴している。そのうえ、静岡で関係者と話をしているうちに、また新しい構想も浮上してきた。以前にも書いた気がするが、もっと毎日充実して楽しい日々であっても、なんら不思議ではない。となると、あとは気力と体力の問題だから、不摂生はやめて身体を大事にせにゃならん。

午後の新幹線で京都を発ち、夕方6時半ごろにようやく松山に戻った。すぐに荷物を片付けて、シャワーを浴びる。このアパートに一人で住むようになって一年が過ぎた。といって、とくに感慨はなく、毎日をちゃんと暮らしていかなくちゃ、と思うばかり。旅行前に冷蔵庫を空にしてあったので、夕食はうどんだけ。食材の買い出しはあすの夕方になる予定。

サマースクールのトリの講演で皆を煙に巻いてしまったようだ。何を言いたかったか、いまひとつ伝わっていなかったのだろう。無理もない。伝えたかったのは、長年にわたって培った、決定公理あるいはソロヴェイのモデルにおける数学についてのビジョンだったのだが、それをちゃんと言わず、数列空間 \(\ell^\infty\) の双対空間の構造の話ばかり長々としていたんだから、伝わるものも伝わらない。

言いたいことを言いたいように言っているだけでは、伝えたいことが伝わらない。自分が何を伝えたいかをきちんと自分で認識して、ちゃんと準備しないと、何も伝わらず、わあわあ喋っているだけになってしまう。反省しながら、「ひかり」に乗って京都へ移動。

お盆に持ってきて日曜日にも練習で使ったサックスを回収するため、ふたたび実家に顔を出す。楽器の回収のほかには特に京都に用事もないのだが、まあ来たついでに河原町の丸善に行って山上滋『量子解析のための作用素環入門』(共立出版2019年)を買ってきた。

サマースクール4日目千秋楽。藤田が2コマ、池上さんが1コマ。池上さんの話は現代集合論の最先端の概観を与えてくれてとてもよかった。フジタの最後の1コマはスライドなし。黒板を使って、選択公理のないソロヴェイのモデルでの数学についていろいろしゃべりまくった。そういう内容の怪しさもさることながら、今年のサマースクールは長丁場のハードスケジュールだったので、聴いている人が大変だったに違いない。特にウチアゲ的なことはなく、夕方の新幹線で神戸に帰るという菊池さんとビールを飲みながら少し仕事の話をし、そのあと田中社長と夕食にしゃぶしゃぶを食った。

サマースクール3日目。池上さんが2コマ、酒井さんが1コマ、藤田が1コマ。池上さんはたいそう丁寧に、閉集合に関するカントール-ベンディクソンの定理の証明を解説してくれた。自分は選択公理三姉妹(整列定理、選択公理、ツォルンの補題)の同値性をそれなりにきちんと示し、あとは無限濃度の積の羃等性が選択公理と同値であるという結果の証明をした。夕方は駅ビルで小人数で夕食。俺は明日の講演をどうするか、さらに考えないといけない。

サマースクール2日目。田中社長に続いて、大阪からぼんてんぴょんがやってきた。都合により依岡さんが3コマ話し、そのあと酒井さんが内部モデルLの理論を話した。依岡さんの強制法の講義はジェネリック・フィルターをとらず強制関係の再帰的定義だけをもとに連続体仮説の独立性まで証明するというアプローチで、ブール値集合論の文脈ではよくある方法だが、半順序による強制の文脈でこのアプローチを採用した講義を読んだり聴いたりしたのは初めてである。いっぽう、酒井さんのLの扱いはわりかしスタンダードだった。

夜には生協の食堂で懇親会が開かれた。途中に高知や大阪の学生たちに「数学がわかるってどういう感じですか」という質問を受けた。どういう感じと言われても困るが、いまこの椅子に座ってあのテーブルとその上のグラスと料理のプレートを見ていて、手足を動かしてグラスを取って酒を飲んだり料理を食ったりするところがイメージできる感じとか、知らない路地裏から知っている道に出て、まだ目的地に到着したわけじゃないけどもう大丈夫と確信できたときの感じが近いかな、などと答えた。たとえば、ある音楽を知っていて、すぐさま演奏できるわけでも楽譜がまざまざと思い浮かべられるわけでもないけれども、曲はわかるし鼻歌で歌えるという状態を想像してみよう。その鼻歌は実際にはひどく調子っぱずれかもしれないし、人に聴かせるようにちゃんと歌ったり演奏したりするには、改めてうんとこさ練習しなおさなければいけないかもしれないけれども、それでもその曲を「よく知っている」状態に変わりはない。上手なたとえではないかもしれないけれど、なんかそんな感じだ。

その後は、宿に戻って洗濯をしつつ明日と明後日の講義に向けたスライド作り。

数学基礎論サマースクール初日。午前中は菊池誠(神戸の)の述語論理のチュートリアル、午後は俺が素朴集合論の立場で順序数と基数の話をしたあと酒井さんが公理的集合論入門をやった。たくさんの聴講者がいて、しかも若い人が多いのには驚く。2007年に同じ会場で集合論のサマースクールをやったときには、参加者は大学院生中心で、当時学部4年生の木原貴行さんが参加していたのが珍しかったくらいだが、今回は学部生がとても多いのだ。哲学系の学生さんや研究者さんも多い。それに、佐藤雅彦先生(←理論計算機科学の大家、Emacs上のかな漢字変換システムSKKの開発者、京都大学名誉教授)や大田春外先生(←位相空間論の研究者、フジタが毎年授業で使っている「集合と位相」のテキストの執筆者、静岡大学名誉教授)も来てくださっている。

東京から(株)Shanon Lab代表の田中さんが聴講に来ている。昨年6月の数学カフェ集合論回に来てくれていた人である。夜、食事に伴なっていって皆に紹介する。夕食のメンバーは菊池、依岡、南、薄葉、池上、板場、田中、俺。静岡駅ビルの大作で海の幸いろいろを食い、今後の研究活動の方向性などなどを語りあう。

朝のうちに京都を発って、お昼前に静岡に来た。よく晴れている。青空を見たのは10日ぶりくらいな気がする。

静岡駅の近くのココ壱で昼食をとってバスで静岡大学に行く。理学部の建物で、大学院生たちが「裏数学基礎論サマースクール」と称して集合論のセミナーをやっている。明日からのサマースクールの前哨戦という位置づけだそうだ。もっとこぢんまりとした集まりを想定して、京都駅でお土産を買って来たのだが、セミナーの予定がウェブで告知されていた関係で、聴講者が30人ほども集まっている。なんだこりゃ。お土産は、数が全然たりないので処置を依岡さんに委ねることにする。

その依岡さんに少し事情があって、急遽プログラム(の順序)が変更になった。いやあ、いろいろあるもんだ。

宿は東横イン。夕食は駅南の居酒屋で、菊池誠(神戸の)、依岡、南、池上、俺、というありがちなメンバーに加え、依岡さんのお友達で、今回会場の手伝いに駆り出された、環論がご専門という東京理科大の板場さん。静岡おでん、生しらす、かつおの刺身など、ご当地ものを味わった。

日程などは未定だが、昨日話題になった「クラスと集合」の話を、いずれ数学カフェ@関西でさせてもらえることになった。ありがたいことである。

実家で昼飯の焼きそばを作る。豚肉を買いにスーパーに行ったら、日曜日のお昼前とて、とても人が多かった。

午後は外出。地下鉄で市役所前まで行って、寺町通を歩く。四条通のジュンク堂書店に行き、木原太郎『幾何学と宇宙』(東京大学出版会)を買った。そのあとは散歩を兼ねて歩き、烏丸六角のヴェローチェで、松山から持ってきた『圏論の道案内』(技術評論社)をざっと読み終えた。そのあと烏丸御池から地下鉄で実家に帰ってひと息入れる。

夜はOBバンドの吹奏楽の練習に参加。じつはそのために、お盆に持ってきたサックスを実家に置いてあったのだ。人が揃わないなりに合奏もして楽しかったが、目が悪くなって楽譜が読めないのにはまいった。