て日々

2023年11月

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朝6時に起きれば、8時半から講義のある朝でも、朝食と身支度を済ませてから、少しピアノの練習をする20分くらいの時間は取れる。毎日これをするかどうかは、長い目で見れば大きな違いを生むはずだ。ぼんやりと時間を過ごすのをやめさえすればいいのである。俺はとにかくこの「何もせずぼんやりする」が好きすぎるのがいけない。あ、つまり、今朝は起きて朝食と身支度を済ませてから少しピアノ(電子ピアノだけど)の練習をし、7時40分くらいに自転車で出かけた、という話。8時半出勤の時の朝食は作り置きとか昨晩の残りで済ませることにしている。

さて、非常勤の講義は「確率の応用」がテーマで、前半に確率をめぐるいろいろな話題を紹介したあと、後半でベイズの定理の考え方をざっと説明し、迷惑メール判定への応用について述べた。後半は難しかったらしい。説明がうまくなかったという感想もあった。ううむ。

午後は教室会議と、それから3年生ゼミ。自己共役作用素のスペクトル分解が主な話題だった。昼食後、自室でぼんやりしていたらうたた寝してしまい、ゼミに10分も遅刻してしまった。ごめんなさい。

午前中、地下BAL常連仲間のひとり、ヨシコさんの主宰する華道のグループの展示を観るために、二の丸史跡庭園へ行った。よい天気で、なかなかいい気分だった。

あいた時間には、共著書の原稿の直しと索引項目の指定をする。月末にはこの原稿を仕上げねばならない。いや、ほとんど仕上がってはいるけどね。

三宮のカプセルホテルで朝飯を食って朝風呂を浴び、電車で移動して、六甲道のドトールコーヒーでカフェインを摂取してから、歩いて会場へ行く。なにしろ神戸大学の建物は六甲山の斜面に建っているから、平地から歩いていくのは、ちょっとした登山である。

神戸大学で科学基礎論学会の秋の研究例会があり、岡本賢吾先生がオーガナイズされたワークショップが開かれる。岡本先生には年末に松山で講義をお願いしていることもあって、今回のワークショップを聴講するついでに、岡本先生にご挨拶をしておこうと思ってやってきたのだ。会場にはかなり早くついた。岡本先生もずいぶん早く来られたので、ご挨拶するという第一の目的は開会を待たずに済んでしまった。ワークショップのテーマは「部分構造論理からWittgensteinを/Wittgensteinから部分構造論理を読み解く」というもので、ウィトゲンシュタインもジラールもカントも読んでいない俺には、とても手に負える代物ではなかった。勉強しないとなあ。

ワークショップは午前中で終わったので、昼過ぎは適当に街をうろつき、適当に昼食を食い、三宮のジュンク堂書店で西郷甲矢人・田口茂『〈現実〉とは何か』(筑摩書房, 2019年)を買った。それから三宮から新神戸まで歩いて、午後の電車で松山に帰ってきた。先週ほどでもないが、今日もよく動いた。

4年生と大学院生に向けた解析学の講義はきょうが最終回。前回までのガウス分布をめぐる計算を踏まえて、ガウス過程回帰による関数の予測値の求め方を述べ、Pythonで書いたデモンストレーションを見せる。あとは年末が期限のレポート課題を出してオシマイだ。後知恵で考えると、最小二乗法による線形回帰やカーネル法におけるリッジ回帰について、ガウス過程回帰に先立って説明すべきだったと思う。ふむ。来年度以降に備えてノートを整備しておいたほうがよさそうだ。

講義が済んだらすぐに電車に乗って神戸へ移動する。明日の午前中、神戸大学で科学基礎論学会の研究例会があるので、顔を出しておこうと思うのだ。このごろは神戸でなかなか宿が取れない。今回も三宮近くのカプセルホテルに泊まることになった。カプセル泊は思うにまかせないことが多いが、いつでも風呂に入れるのはいい。

というわけで、ろくに練習もできぬうちに迎えてしまったピアノの発表会当日である。この日こそ、いったい自分は何がしたくてピアノなんぞ習っているのか、それを思い出さなくちゃいけない。

とはいえピアノのことだけ考えていればいいというわけにもいかない。たとえば、明日は授業を終えたら神戸に移動せねばならず、土曜日には神戸で学会に出る予定なので、来週月曜日の非常勤の講義の準備はきょうのうちにしておかねばならない。どうにかそのあたりを片付けて発表会に向かった。

今回の出し物はSMAPが歌った川村結花の『夜空ノムコウ』だ。練習しなかったことが順当に演奏に現れた。恥ずかしいというより、自分が情けない。音楽の神さまはさぞお怒りのことだろう。いったい自分は何がしたくてピアノなんぞ習っているのか。「真剣にやれよ。仕事じゃねえんだぞ」という名言を思い出して反省しきり。いや、仕事にせよ趣味にせよ、今の俺はすべてにおいて気を抜きすぎだ。人生に残された時間はそれほど多くない。何事も、もう少し積極的になるべきだ。

朝食のあと少しピアノの練習をしてから大学へ行く。水曜日の朝は卒業研究ゼミだ。来てから気づいたら、スマホを忘れて来ている。昨日の日記には偉そうなことを書いたけれども、なんだかんだで少し気持ちが浮っついているようだ。落ち着かないと。ゼミではテキストの§5.6でヒルベルトの第10問題の話を読む。ただし、概略だけ。

卒研ゼミの後は金曜日の解析学の授業のためにガウス過程回帰の計算法をまとめ、Pythonでデモンストレーションのプログラムを書いた。理屈は小難しかったが、プログラムは結構シンプルなものになった。さらに、成績評価のためのレポート課題を決めた。

水曜日の午後には確率解析の自主ゼミをやる。今週は俺が発表の番だ。先週土曜日に用意した内容をひととおり話したら2時間半かかった。

詳しいことはその日その日の日記に書くことにするけど、このごろなんだかやることが立て込んでいる。こういうとき、どうしても不安が先に立って心中ガクガクブルブルしてしまいがちだ。だけど、これまでの経験から言って、やってみると案外なんとかなることが多い。17日に古楽のライブに行って帰りに雨に降られたのも、18日の京都への移動に番狂わせがあったのも、予想なんかしていなかったし、たとえ予想していてもどうしようもなかっただろうし、その場その場で対応したことで、結果的にいろいろ無事に済んだ。あらゆる可能性をできる限り想定しておくことは大切かもしれないけど、もっと大切なのは、何があっても絶対なんとかなる、という肚の据えようと、あとはなんとかするだけの気力・体力だと思う。

とかなんとか愚考しつつ、午前中は洗濯をしながら午後の講義の準備をした。ピアノの練習も少ししたが、本番直前の焦りが出てしまって、かえって混乱した。

午後に解析学の講義。解析学と言いつつも行列の計算ばかりしている感があるが、多次元ガウス分布の条件付き分布について述べたあと、とにかくもガウス過程回帰の考え方を紹介するところまでは進んだ。いよいよ大詰めというわけだが、成績評価をどうするか、今から決めねばならん。

夜はピアノのレッスンに行った。昼間の練習でかえって混乱したのを解きほぐし、明後日の本番に向けて最後の追い込みをかけるための、実践的なアドバイスをいただいた。ありがたいことだ。

6時半ごろホテルをチェックアウトして、午前中の電車で松山に戻った。京都駅の新幹線ホームで並んでいる時に、俺にしては珍しく、シアトルから来たというアメリカ人の夫婦と雑談した。これから広島に行くと言っていた。

いったん帰宅して旅の荷物を片付けて着替えをしてから大学へ行き、水曜日の確率解析ゼミの準備の続きを少しやる。それから、月曜日の午後には3年生のゼミがある。今日の内容はもっぱら射影作用素の話だった。竹内外史先生のテキストは記述が簡潔すぎるところがあるので、学生は準備に苦労しているようだ。ゼミが済んだらエディオンに行く。というのも、下りの特急が松山に着いて、さて降りようと荷物を背負ったタイミングで、Apple Watchのバンドが切れてしまったのだ。2年前の10月末から使っていたから、安物にしてはまあよくもったほうだ。新しく黒の合皮のバンドに買い替えた。

朝、宿の近くの食堂で朝食をとってから、散歩がてら四条通をうろつき、銀行ATMが開くのを待って急ぎの振り込みをする。9時半ごろ楽器(と譜面台)を持ってホテルを出て、電車で移動。母の入所している施設を訪ねる。訪ねたところで何をするわけでもない。四方山な話をしたり、手が不自由でスマホいじりもできなくなっている母の代わりにLINEやメールのメッセージを確認したり、一緒にテレビを見たり。あまり有意義なことをしようと思わず、そのかわり、もっと気軽に再々訪ねてこよう、と思うことにした。

母のもとに11時過ぎまでいて、再び電車に乗る。今日の午後にも吹奏楽の練習がある。しかも、母校で現役吹奏楽部員との合同練習である。西院の吉野家で昼食をとり、嵐電に乗って移動。12時半ごろ、常盤の嵯峨野高等学校に着いた。俺が通っていたのは40年前。30数年ぶりに足を踏み入れる母校は、佇まいも周辺の街並みも、何もかもが変わってしまっている。

で、現役部員との合同練習。パート別に分かれた部屋でまず自己紹介をして、個人練習、パート練習の時間をとる。おかげで昨日と違って十分にウォーミングアップしてから合奏に参加できた。今日の合奏では、久々にうんとこさ楽器に息を入れることができた。と言っても、普段の練習不足はどうしようもないのだが、こちらは「ヘタでも聴いてもらう」と「他の人の出す音は聴くが、他の人の出す音に隠れない」がモットーである。周囲からは「こいつアホか」と思われたかもしれないが、ヘタはヘタなりに、昨日の不完全燃焼を取り返して、なかなか楽しかった。満足である。ともあれ、残るひと月の間に、どうにかしてもうちょっと練習しようと思う。

市バス91系統に乗ってホテルに戻り、部屋に楽器を置いたら、ふたたび出かける。倅に晩飯を奢るためだ。市内某所で倅と落ち合い、堀川下長者町の寿司屋「大源」に行ってみた。《回らない寿司》は俺も久しぶりだし、倅にとっては、ひょっとしたらこれが初めてかもしれない。テキパキと手際よく、というより、もう《目にもとまらぬ超スピードで》といったほうがいい早業で出てくる寿司は、どれも美味しかった。大将も奥さんも陽気でテンションが高く、店全体は全体に明るいムードで、おまけに価格もわりとリーズナブル。大満足だった。まあ、店の陽気さは倅のノリには合わなかったかもしれないが、寿司は堪能したようだ。

まあそういうわけで、今日は朝昼晩とよく動いた。Apple Watchの記録によると、今日は歩数計カウント17,606歩、移動距離13.92キロメートル、ムーブ959Kcal、エクササイズ127分となった。毎日これくらい、となると大変だけど、こんなふうに体を動かせたらいいなと思う。

来週月曜の朝は非常勤先の大学の学祭の関係で講義がお休みである。なので、この週末は高校のOB会の吹奏楽の練習のために京都に行くことにしていた。今日の練習は夕方からなのだが、京都といえば母もいるので、早めに行って母を施設に見舞おうと思って、早起きして朝の7時過ぎにJR松山駅に行った。ところが、昨晩からの荒天のために、午前中は瀬戸大橋線が運転をとりやめているという。これはまあ仕方がない。母の見舞いは明日の朝に変更して、午後の特急に乗る手配をした。宿にチェックインしてから練習会場に移動しても間に合う時刻には、どうにか京都に着く手筈である。

さて、切符は買ったが、特急の発車時刻まで、6時間ばかり空き時間になってしまった。家に引き返すのもつまらないので、駅ビルのリトルマーメイドで朝食をとってから、市内電車で大学へ移動した。このさいだから、来週水曜日の確率解析の自主ゼミに備えて勉強していよう。内容は確率変数についての基本事項のおさらいだ。テキストにある定義と例をひととおり追いかけていくが、「確率変数の和、積、商はまた確率変数になる。確率変数の列の各点収束極限はまた確率変数になる。確率変数をボレル可測関数に代入したものもまた確率変数になる。」という定理には、テキストで証明がついていない。自力でひととおり全部の証明を書いておいて、来週の自主ゼミでどこまで詳しく話すかはその場で参加者と相談して決めることにしよう。そう思って証明をつけていたら、それなりに楽しかったが、それなりに時間もかかって、そろそろ昼飯を食ってJR松山駅に移動しようかな、という時刻になっても、担当予定の§2.1を読み終えられなかった。準備し残した部分には、確率変数 \(X\) によって定まるσ-フィールド \(\sigma(X)\) の定義と、それに関連する事実が載っている。とりわけ、「任意の \(\sigma(X)\)-可測確率変数 \(Y\) に対して、あるボレル可測関数 \(f(x)\) が存在して \(Y=f(X)\) となる」というDoob-Dynkinの補題が、これまた証明抜きで指摘されている。ひとつこれにも証明をつけてやろうと頭の中で作戦を練りつつ、コンビニで買った昼食をとり、市内電車で再びJR松山駅に移動した。

松山では昼過ぎにはすっかり晴れていたが、瀬戸大橋付近はまだ断続的に強風が吹いているので、運転取り止めや行き先変更の可能性があるよというアナウンスに若干の不安を覚えつつも、13時26分の特急しおかぜに乗って出発する。瀬戸大橋を徐行運転で渡った関係で岡山に着くのが少し遅れたが、新幹線への乗り継ぎの時間を少し余裕を持ってとってあったこともあって、特に問題なく京都まで来れた。

京都に着いたらすぐにホテルに行ってチェックインを済ませ、タクシーを拾って練習会場(西京区役所のとなりの、京都西文化会館ウェスティ)まで急ぐ。譜面台を忘れていることにタクシーの車内で気づいた。どうやらホテルに置き忘れてしまったようだが、引き返すわけにもいかない。タクシーでの移動に思いのほか時間がかかり、練習会場に着いたら、そろそろ合奏が始まる時刻だった。譜面台は打楽器パートの佐々木先輩に頼んで借してもらって、ことなきを得たが、楽器を取り出して組み立てていると、すぐに、じゃあ合奏始めます、となった。ウォーミングアップどころか、リード選びもろくにできず、チューニングすらしていない状態での合奏開始で、練習する曲はA.リードの第2組曲だ。8月に来たときは楽器の不調だったが、今回は自分が不調である。散々な結果になった。どんどん音を出していくタイプの練習だったら、吹いているうちに調子が出てくるのだけれど、今日の練習では、指揮者が再々演奏を止めて細かい指示を出したこともあって、楽器に息をいれる時間がなかなかとれない。なんだか最後まで不調なままで、不完全燃焼で終わってしまった。

練習後は、特にどこかに行くでもなく、旧友Kzの車で宿まで送ってもらった。忘れた譜面台は、ホテルの部屋に置き忘れたのではなく、チェックイン時にカウンター付近に忘れていたらしく、フロントで保管されていた。

給料日なので、郵便局に行って子供らに少額ながら仕送りをして、それから大学へ行く。午後の解析学の授業では、ガウス分布にしたがう独立な確率変数の和がまたガウス分布にしたがう、ということ、などなどを証明した。途中で正方行列 \(S\) と \(T\) についての(式中に出てくる逆行列はすべて存在するものとして) \[ S^{-1}-S^{-1}(S^{-1}+T^{-1})^{-1}S^{-1} = (S+T)^{-1} \] などという怪しい公式を示したりして、喋っている自分はなかなか楽しかったが、さて受講者には面白さが伝わっただろうか。授業の最後に2次元のガウス分布の場合の計算を示して強調したことだが、独立でない複数の確率変数があったとき、一部の変数の値を知ることで他の変数についての情報(確率分布)が更新される、というのがガウス過程回帰の要点であるらしい。ふむ。

さて、今夜はいつもの集合論Zoomゼミが発表者の都合でキャンセルになったので、昨晩パルタジェでお会いした古楽器アンサンブルの公演を聴きに行くことにした。会場は宮西の日本基督教団松山教会の礼拝堂。昔々、吹奏楽の練習に集会室を使わせてもらっていたこともある、いわば懐かしい場所である。プログラムは18世紀中頃のベルリンの作曲家たちがテーマだ。バッハ以後古典派以前といった時代の「ギャラント・スタイル」というものらしい。演奏はヴァイオリン赤津眞言さん、フラウト・トラヴェルソ相川郁子さん、チェロ山田慧さん、ハープシコード加藤友来さん。演奏はなにしろ素晴らしかった。演奏者が曲をじゅうぶんに理解し、かつお互いを深く信頼していることが伝わってきた。松山教会の礼拝堂の空間に響きがよくマッチしていた。おかげで、いい時間を過ごさせてもらった。お客さんの入りがもう一つだったのが残念だ。

演奏会は楽しかったが、帰りがいけなかった。電車に乗るなり何なりすればよかったのだが、歩いて帰る間に、最初はパラパラ小雨だったのが、そのうちみぞれ混じりになり、短時間ながら雷と強風を伴って強く降った。小さな折りたたみの傘をさしていたが、ズボンがぐしょ濡れになったので、明日からの京都行きに着ていく服の予定が狂った。

午前中は大学院のゼミだが、この頃はすっかり、「もくもく会」の時間である。院生MBRくんが修士論文の作成作業をする傍らで、俺は黙々と俺の作業をする。明日の講義の題材は昨日までに概ね用意したが、念のため話題を補充することと、さらに、来週からのガウス過程回帰の話の準備を急がねばならない。ややこしい計算をしばらく追いかけて、ようやくガウス過程回帰の「やっていること」が、条件付き確率の計算をしているんだとわかった。「やっていること」はどうにかわかったが、いまのところその「きもち」はまだわからない。講義では「きもち」がわかった上で話をせねばならんので、引き続き勉強だ。いやそれにしても、4年生と院生に向けた特論科目とはいえ、俺らしくもない大胆な授業計画を立てたものである。

昼休みにオフィスにいると、アリガト蟻さんが訪ねてきた。コロナが5類対応になって、このごろようやく全国を出張で回れるようになってきたそうだ。

夜はパルタジェで、ただいま全国ツアー中の古楽器アンサンブルの演奏家たち(相川さん、赤津さん、加藤さん)とお話しして楽しかった。明日の夕方に宮西の松山教会で公演がある。

水曜日の朝は卒業研究ゼミをやる。今日は計算可能実数の話題だった。ゼミの後、昨日書いたようなわけで「集合と位相」の授業の準備、特に演習問題の準備に取りかかる。それと、夕方に確率論の自主ゼミをやる。テキストの§1.4の条件付き確率と§1.5の事象の独立性の話を寺本さんが発表した。次回から第2章に進み、確率変数の話題を扱うことになる。次は俺が発表する番なのでちゃんと準備しておかねば。

毎週月曜日の非常勤の講義では、確認テストというのをMicrosoft Formsを使ってやっている。フォームに入力された回答が自動的にExcelファイルに集計されてダウンロードできるので、便利がいい。昨晩遅くに締め切られた昨日の授業のぶんの回答が338人分あって驚いた。この授業の受講登録者は全部で292人で、普段の回答者数は220人前後だからだ。Microsoft Formsにバグがあったかと思ったが、ダウンロードしたExcelファイルを確認してみたら、古いデータが消されずに残っていただけだった。なんのことはない。準備時の俺の単純ミスである。古いデータを削除して数え直すと、今回の回答者は215人だった。

お昼すぎに、執筆の手の止まってしまっている単著の版元の営業の方が研究室を訪ねてきてくれた。これについては編集さんにずいぶんと迷惑をかけているので、平身低頭でお迎えする。

第4クォーターの「集合と位相」の講義と演習の準備もそろそろせねばならん。今年度からカリキュラムが変わって、この授業でテキストの最初の集合の概念と記法のところから始めることになったので、昨年までの演習問題の使い回しが効かない。これまた、急がねば、演習担当の中島さんに迷惑をかけてしまう。

火曜日の午後は解析学の講義をやる。曲がりなりにも「関数解析と機械学習」などという野心的なテーマを設定したからには、確率・統計に触れずに済ますわけにいかない。そこで今日は1次元の正規分布の復習から始めて、多次元ガウス分布の話をした。この講義もそろそろ大詰めである。次の金曜日に、ガウス分布にしたがう二つの独立な確率変数の和がまたガウス分布にしたがう、という事実の(ややこしいけど面白い)証明をして、それから来週の2回でガウス過程回帰の話をして締めくくりとしたい。だがそのガウス過程回帰の話の準備がなかなか進まない。日程的にだいぶ苦しくなってきた。

火曜日の夜は例によってピアノのレッスン。発表会まであと10日たらずになった。こちらも日程的にだいぶ苦しい。

というわけであれもこれも日程的に苦しいが、まあ、どれもこれも自分が蒔いた種である。

今週も、非常勤の講義から一週間が始まる。今日のテーマは「データにもとづく予測」で、回帰分析の考え方を説明する。いろいろと喋ったが「データに基づいて客観的に将来を予測する方法がある」「正確な予測には偏りのない大量のデータと適切に選ばれた予測モデルが必要だ」「予測に誤差はつきものだ」という要点を、受講者は受け取ってくれただろうか。

例年どおり、学生祭の後の月曜日は休講日である。空いた時間に、普段使っていなかったAndroidスマホの解約に行った。昨年の6月にiPhoneの機種変更をしたときに、ポイント目当てで、勧められるままに抱き合わせで契約したのだが、ぜんぜん使っていないし、無料サービス期間が切れて、そろそろ基本料金が発生しだしたのだ。

それにしても今日はずいぶん寒かった。そろそろ冬の気配がした。

先週の日曜日は暑いくらいの陽気だったが、今日は結構肌寒い。まあ、11月なんだからこれがマトモなのだろう。午前中にピアノの練習をし、昼過ぎから、発表会の関係でコメントシートみたいなのを楽器店に届けるため、運動をかねて、歩いて花園町まで行く。

せっかくMacBook Proを手に入れたんだから、何千曲も買いためた音楽のデータをiPhoneに転送して持ち歩けるように、デバイスの同期ということをした。まあ、ほぼ毎日MacBook Pro自体を持ち歩いているので、外出時にどうこうということはない。寝るときにMacBook Proは1階において、iPhoneを寝室に持っていく習慣なので、枕元でかける音楽を選ぶためというのが大きい。つまらないようだが、まあこういうことは、好きなようにやらせてもらう。

コロナのおかげでこの3年ほどお休みしていたが、うちの数学教室では、例年、学生祭の土曜日に公開講座をやる。今年は中島さんが等周不等式の話をしてくれた。残念ながらお客さんは多くなかったがゼロではなかったし (大学外から5人来てくれた)、話が面白かったのでよかった。

そのほかの時間には火曜日の授業の準備をした。参考テキストをざっと見て、何か妙に難しい話のように思っていた内容も、落ち着いて紙に計算を再現しながら話の筋を追っていけば、ちゃんとわかる。だから、慌てずゆっくり進まなくては。

学生祭前日で、休講日である。授業はないけれども、明日の公開講座の準備や来週の講義の準備など、やることはたくさんある。

明日の公開講座について、学生たちに追加の告知を送り、明日掲示する立て看板と張り紙の用意をした。月曜日の非常勤の講義の準備もひととおり済ませた。火曜日の解析学の講義の準備がなかなか進まない。

午前中の大学院ゼミは黙々と作業をする時間になった。院生MBRくんが修士論文の準備をする傍らで、俺はとある原稿の直しをする。

この原稿というのが、パソコンの機種変更を何度か繰り返しているうちにオリジナルの原稿がどこにあるかわからなくなっていて、最新版と思われるPDFファイルと、それよりずっと古い版のTeXファイルしか手元にない。なのに、今月末までに仕上げてくださいという話になった。もう仕方がないから、PDFファイルとTeXファイルの異同を確認しつつ、TeXファイルを書き直す。面倒だが、自分の不注意のせいだから文句は言えない。バックアップはきちんと取っておこうという話だな。

水曜日の朝なので卒業研究ゼミをやる。今日の内容は再帰的関数のゲーデル数と再帰的集合でない再帰的可算集合の存在証明だった。大事なところなので、次回までにレポート用紙5枚以内にまとめておくように宿題を出した。

午後は確率微分方程式の自主ゼミをやる。今日の担当は尾國さんで、内容はテキストの§1.3の確率測度の性質についての議論だった。

午後に4年生と大学院生に向けて解析学の講義をする。そろそろ折り返し地点だ。カーネル法による回帰問題と分類問題の解法の振り返りをしてから、Pythonで実装したデモンストレーションを見せた。講義のあと、プログラムのコピーがほしいと複数の受講生から申し出があったのは、ちょっと嬉しかった。数学を勉強して計算法を知ったら、コンピュータに計算させるプログラムを書くというのは、理解を確かめるためにいい方法だと思う。なので、俺の書いたプログラムを読んでもらえるのはありがたいが、ぜひ自分の手でもコードを書いてみてほしいところだ。

夜にはピアノのレッスンに行く。発表会が近いので、いろいろと表現についての指導をいただくが、それ以前に、素直に真っ当に普通に弾くということが、まだまだできていない。この分では、また直前にバタバタして後悔する流れになりそうだ。うおぉぉぉぉぉ。

月曜日の朝には非常勤の講義に行く。今日の講義のテーマは「データの相関」だ。いろいろな散布図を見せて、右上がりだ右下がりだと言ったあと、相関係数という数値指標があることを知らせる。そのあと、相関がないからといって無関係とは限らないこと、相関と因果は別物であること、などなどを説明した。

午後は3年生のゼミをやる。主な内容は、正規行列の対角化についての定理の証明だった。

パルタジェ店主カズノさんと店員マイナちゃん、それになじみの客10名というメンバーで、バスをチャーターして小田深山へ遠足を敢行した。紅葉は色づきがいまひとつだったけれど、天気がよくて暑くも寒くもなく、歩いたりピクニックしたり、心地よい時間を過ごせた。ありがたいことだ。とても久しぶりに山歩きの気分を味わうことができたし、勝沼ワインの新酒を皆で味わい、ウクレレに合わせて歌うなどという場面もあった。穏やかで幸せな気分に満ちた遠足だった。

昨日のプログラムの精度が出ない問題は、ガウス・カーネルのパラメータを(0.5から4.0へ)調節することでさしあたり回避できた。これでいいのかどうか、カーネル関数のパラメータを変えることが何を意味するのか、理論に戻ってちゃんと検討する必要がありそうだが、参考書(瀬戸道生・伊吹竜也・畑中健志『機械学習のための関数解析入門 ヒルベルト空間とカーネル法』内田老鶴圃, 2021年)の記述の上では、このパラメータは表立って活躍することがない。そもそもこのパラメータの数学的な意味合いは何なんだろう。

朝、いい天気なので洗濯をし、昨晩の残りもので朝食をとり、それから近所の理容室に行って1年ぶりに10センチくらい髪を切ってもらった。それだけで、だいぶ気持ちがスッキリした。そのあと、家に戻って、ピアノの練習をし、それから回帰問題のカーネル法による解法のプログラムを書き始めた。数学的には間違っていないはずなのだが、思うような精度が出ない。何がどうなっているのやら。

夕方にはいつもの集合論Zoomゼミをやった。まだ第3章の演習問題で足止めを食っている。

木曜日の午前中には大学院のゼミをやる。といっても、M2の11月ともなると、もう通常のゼミは終わっている。院生MBRくんが自分のノートパソコンに向かって修士論文の骨組みを作っている横で、自分は自分のMacBook Proに向かい、来週火曜日の解析学の講義に備えて、機械学習の分類問題のカーネル法による解法のデモンストレーションをPythonでプログラミング、というか、デバッグした。数学上のアルゴリズムの間違いを正したあとも、Numpyの行列(二重配列)のスライスを変数に代入するときの挙動を勘違いしていたり、Matplotlibのメソッドに渡すデータの形式を勘違いしていたりで、ちゃんと動くまでにけっこう時間がかかった。ともあれ、分類問題のデモはできたので、次には回帰問題の解法のデモを作らにゃならん。

水曜日の朝には卒業研究ゼミをやる。吉永正彦の本の第1章をどうにか読み終えた。次は第5章に進む。第1章よりこちらのほうが前期にやった内容との関連が深い。

午後には今週から自主ゼミをやる。尾國さん、中島さん、寺本さん、俺の4人で、成田清正の確率微分方程式の本を読む。初回は中島さんが§1.1と§1.2の内容を発表する。可測空間と確率測度の定義と例をていねいにやってくれた。